人口減地域の地銀統合、新しい法律整備が急務=大庫・金融庁参与

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4月17日、大庫直樹・金融庁参与(写真)はロイターのインタビューに応じ、地域の人口や企業数の減少が進む中での地銀の経営統合について、経済成長を前提とした現行の競争法の下での公正取引委員会による判断に疑問を呈した。13日撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 17日 ロイター] - 大庫直樹・金融庁参与(ルートエフ代表取締役)はロイターのインタビューに応じ、地域の人口や企業数の減少が進む中での地銀の経営統合について、経済成長を前提とした現行の競争法の下での公正取引委員会による判断に疑問を呈した。具体的には競争が成り立たない地域では、顧客と企業がフェアな関係を構築できる新たな法的枠組みを政府全体で考えていくべきと主張した。

金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」は11日、公取委の審査が難航している長崎県を地盤とする十八銀行<8396.T>とふくおかフィナンシャルグループ(FFG)<8354.T>傘下の親和銀行との統合計画について、経営余力があるうちに承認し、地域に貢献することが望ましいと提言した。

大庫氏は今回のインタビューで、統合の無期限延期に追い込まれている長崎県の事案を、人口減少が進む多くの地域に共通する問題と指摘。

公取委と金融機関を監督する金融庁など関係者の知見を活用して、早期に解決する必要があると語った。

大庫氏は2013年から金融庁参与となり、データ分析を駆使して金融行政にアドバイスを行ってきた。地域金融の競争政策のあり方を議論する今回の検討会議にも参画し、地域金融機関の競争の現状や見通しについて、様々な分析結果を提出している。

インタビューは13日に行った。主な内容は以下の通り。

──検討会議の提言では、地域金融の競争政策のあり方について、政府全体で議論・検討する必要があると踏み込んだ。

「競争政策は競争法に基づいて行われているが、法律は永久不滅ではない。社会・経済環境の変化に応じて見直すべき。現在の競争法は成長経済を前提にしているが、先進国でこれだけ人口が急激に減っていく国はない。人口が増加しているアメリカなどの国と日本では、とるべき競争政策が自ずと違うはずだ」

「提言において、政府全体で考えましょうとの決定がなされた意義は大きい。地域で健全な金融サービスが存続し、貸し出し供給ができ、地域経済の発展を阻害しない環境を作ることが行政には求められる」

──長崎県内の地銀統合に、公取委が難色を示していることが背景にある。

「長崎のケースは個別事案ではなく、全体事案だと思う。十八銀行と親和銀行の合併は、現行の競争法では捉えきれない初めての事例であり、それを従前の競争法で議論して間違った判断をされては困る。独立機関が間違えないとは言えない。打ち返すには立法行為しかない」

「人口が減少していく社会・経済の問題は、これまでの競争法では捉えられないということを明確にし、競争が成り立たない地域で、顧客と企業がフェアな関係を構築できる仕組みをつくることが日本の国益だと思う」

──法整備には時間がかかる。

「長崎の件は現在進行形であり、現行法の下で金融庁など関係者の知見を生かしながら、早期の承認を目指すべきだ」

──公取委の審査や体制に問題があると考えているのか。

「こうした提言が出てくるということは、公取委が事実に基づいて正しく議論したかどうかに疑問を持っている人たちが、少なからずいるということだ。公取委は、ある意味で行政も司法も兼ねており、外部に対してほとんど説明義務を負っていない」

「今回の十八・親和銀の件についても、なぜシェアが決め手になりうるのか、なぜ県単位の議論なのか、ということを外部に説明していない」

「海外の事例をみると、産業別の監督官庁が存在する場合は、公取委と産業別の当局が協議するかたちで企業統合の判断を下す仕組みになっている。それぞれの産業に特殊性があるからこそ、監督官庁が産業別に存在しており、その知見を活用せずに公取委だけで決めていいのか」

──統合が進まない場合、地域の経済や金融機能への影響をどうみるか。

「検討会議の提言でも、地域銀行の半分以上が本業赤字と指摘している。マイナス金利の影響もあってどんどん収益が減っていけば、資金供給が受けられずに発展機会を失う地域が出てくるがい然性が非常に高い」

「長崎の状況をみて、経営統合に二の足を踏んでいる他の地域の地銀もあるのではないか。早く新しい法体系を作らないと困る地域が出てくる。人口の減少度合いが激しい地域は時間が残されていない」

──銀行のための統合にならないか。

「(経営統合によって)事業費が下がった分を顧客のために投資するとか、サービスの改善に使うことは当然の義務。統合による余力をどのように使うかを当局がきちんとモニターしていくことが、地域金融の質を高めていく公的使命につながる」

──提言では十八・親和銀の統合発表以降、長崎県外からの銀行による貸し出しが増加していると分析している。

「長崎県でも全体が競争不能と言っているわけではない。マイクロなエリアに分けると競争市場とそうではないところがある。長崎市はそれなりの企業や貸し出しのボリュームがあるため利益が出るが、残念ながら離島はそうではない。マイクロな意味での競争可能度合いがどこまで続くかによって、県外からの流入は決まるのではないか」

(伊藤純夫 和田崇彦 藤田淳子 編集:田巻一彦)

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