ジャングリアにも絡む「クールジャパン機構」廃止か 累積赤字383億円、巨額の税金投じて出資した先が散々

J-CASTニュース

   官民ファンド「クールジャパン機構」(海外需要開拓支援機構)が、2024年度末時点で383億円近い累積赤字を出し、廃止を視野に入れた統廃合の検討対象になる見通しだと共同通信が26年6月12日、報じた。同機構は、1年前にオープンした「ジャングリア沖縄」の運営会社を傘下に持つ企業にも、80億円を出資している。

   赤沢亮正経済産業相は6月16日の記者会見で、損益目標に達しなかった場合は「検討会を設置し、対応を検討したい」と述べた。巨額投資の「その後」を追った。

最大投資先「スパイバー」純損失295億円を計上

   同機構は、安倍政権下の2013年に発足。日本の食、アニメ、先端技術などを海外需要の獲得につなげることを目的に、民間だけでは集まりにくい「リスクマネー」を供給する役割を担ってきた。しかし、2026年3月現在の出資金1513億円のうち、政府出資は1406億円。民間資金の呼び水になるはずが、実態としては公金依存の色合いが濃い。

   投資状況も厳しく、2025年3月期の累積赤字額が383億円に上ったと報じられている。なかでも、複数のメディアが「廃止検討の決定打になった」とみているのが、最大の投資先で人工タンパク質素材を手がけるバイオ繊維ベンチャー「スパイバー」への出資だ。クールジャパン機構は同社に約140億円を投じたが、製品の量産化や収益化が難航。2024年12月期には、純損失295億円を計上した。

   スパイバーは債務超過で私的整理に入ったことが2026年3月に判明し、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長の長女・川名麻耶氏が代表を務める新会社に譲渡された。旧会社には巨額の金融債務が残るとされ、5月の参院決算委員会では立憲民主党の杉尾秀哉参院議員が、

「出資した140億円はどうなったのか。全額毀損したのか」

と追及。政府側は「どのようになるのか注視していきたい」などと明言を避けた。

教育コンテンツ、劇場、映像ファンド...苦戦相次ぐ

   吉本興業やNTTと共同で進めた教育コンテンツ事業「ラフ&ピースマザー」(2019年設立)には、最大100億円の支援を決定(実出資額は31億円)。アジアを中心に、教育コンテンツを国内外へ配信する構想だったが、有料会員の低迷などで事業の肝だった海外展開は頓挫。クールジャパン機構は2023年8月に保有する全株式を譲渡した。国内向けとしてサービスは続いているものの、当初の構想から大幅に縮小した。

   大阪市の劇場型文化集客施設「COOL JAPAN PARK OSAKA」も苦戦した案件だ。吉本興業や在阪テレビ局などが参加し、2019年に開業したが、翌年からのコロナ禍により集客で大打撃を受けた。クールジャパン機構は最大12億円を出資したが、2024年に全株式を譲渡。施設は現在も続いているが、支援の成果が出たとは言い難い状況だ。

   海外展開を目指す映像コンテンツ制作を支援するファンド「ジャパンコンテンツファクトリー」には、最大51.5億円の出資を決定していた。著名なアニメ制作会社などを支援したとされるが、具体的な支援作品は公表されなかった。クールジャパン機構は「すべての作品の投資回収を終えた」としたが、ファンドと運営会社は2025年3月末までに解散した。

ジャングリア沖縄は巻き返せるか

   数少ない「勝ち筋」と期待されたのが、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのV字回復に貢献した森岡毅氏率いるマーケティング会社「刀」への80億円の出資だった。

   しかし、同社は2025年6月期に累積赤字が約62億円に達し、2026年2月には企画・運営を手がけた東京・お台場のテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」が開業から2年足らずで閉鎖となった。

   2025年7月には同社が手がけた大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」が開業したが、半年後には「ガラガラ状態」と騒がれる事態に。2026年1月末までの累計来場者数は約65万人だったが、そのうち10万人はスパ利用者で、当初の期待から比べると「少ない」との声が目立つ。

   現在は7月~9月の入場を対象に「アトラクション利用が一つだけなら1日券の半額以下」という格安チケットを販売しているが、集客苦戦の表れにも見える。先行きは厳しい状況だ。

「400億円近くが溶けました」では済まされない

   クールジャパン機構の問題点としては、巨額の公金を投じながら専門的な投資のノウハウがなく、有望なコンテンツの目利きもできず、収益性よりも「政策」としての出資に偏重していったことが内部からも指摘されている。

   また、情報公開が限定的で、何が成功し、何が失敗し、誰が責任を負うのかが見えにくく、株式譲渡で「EXIT済み」とされる案件も、損切りだったのではないかという疑念が残る。さらに、特定企業との関係の近さにも批判があった。

   公金を投じたクールジャパン機構を廃止するのであれば、単に「400億円近くが溶けました」では済まされない。なぜ成果につながらなかったのか、選定や監視の仕組みに問題はなかったのか、責任の所在はどこにあるのかを徹底的に検証するべきだろう。

記事提供元:タビリス