20~30代が「転職してよかったIT企業」トップ10は? 中途採用で「今」求められる「即戦力」の正体
2025/9/27 14:00 J-CASTニュース

転職市場が活発化するなか、特に熱を帯びているのがIT業界です。
2025年7月の転職求人倍率によると、全体平均が2.42倍であるのに対し、IT・通信業は6.27倍と突出した水準にあります(doda「転職求人倍率レポート(2025年7月)」より)。
DX推進の波や慢性的なエンジニア不足を背景に、多くの企業が即戦力となる若手・中堅層の採用に力を入れており、優秀な20~30代の人材獲得競争が激化しています。
働く個人にとってはキャリアの選択肢が大幅に増えた一方で、技術の進歩が速いIT業界では「この先も成長できる環境かどうか」を見極めるのが難しく、会社選びに悩む方も多いのではないでしょうか。
今回は、OpenWorkの会社評価レポートをもとに、「IT業界に転職した20-30代のビジネスパーソンからの評価」に焦点を当て、総合評価スコア(5点満点)の高い企業を調査。
評価が高い企業の特徴やIT業界特有の転職事情について、私、オープンワーク マッチング事業部の和田大生(わだ・ひろお)が社員クチコミとあわせて解説します。なお、OpenWork上の業界区分「IT・通信・インターネット」に該当する企業を対象としています。
20-30代の転職者が評価したIT業界トップ10

IT業界の20~30代の中途入社者による2021年以降の投稿をもとにしたのが今回のランキングです。外資系企業やテック系ベンチャーが名を連ねたトップ10の企業は、「20代成長環境」スコアだけでなく、「風通しの良さ」「社員の相互尊重」など働く環境のソフト面に対する評価も高い傾向が見られました。
IT業界では技術の進歩が速いため、継続的な学習と成長が欠かせません。そのため、20?30代の転職者は成長できる環境であることはもちろん、安心して働き続けられる「働きやすさ」も重視していることが考えられます。
オフィスへの「出社回帰」を進める企業が増えるなか、ランクイン企業のクチコミからは、リモートワーク中心の柔軟な働き方を維持しながらコミュニケーション上の支障がなく成果を出せる風土であることがうかがえました。次のような声が寄せられています。
・非常に風通しの良い文化を感じています。ビジネスサイドもエンジニアサイドも互いに相談し合いながら業務をこなし、連携をして仕事を遂行しています。社員の9割がリモート勤務な会社ではありますが、オンラインでのコミュニケーションも、時々集合して行うオフラインでのコミュニケーションも含めて心理的安全性が非常に高い会社だと感じています。(コーポレート、ベーシック)
・個人の裁量が多く、またマイクロマネジメントは一切ないので、日本企業のような管理職が一人一人しっかり管理するといったことがなく、自由に働くことができるのはやりやすかった。社員間のコミュニケーションにおいても、合理的でスピード感があるため、展開も早く仕事は進めやすい。(カスタマーサービス、グーグル)
・ワークライフバランスは非常にいい。リモートワーク中心で残業もほとんどない。案件が多く忙しい時期はあるが、自分の裁量を持って働くことができる。(技術職、ヴイエムウェア)
・フルフレックス(コアタイムなし)、フルリモートが可能なだけで十分にワークライフバランスは保ちやすいと感じる。一部の部門では出社する必要があることもあるが、当然かと思う。繁忙期は忙しく残業が多くなることもあるが、総じて融通はききやすく、社員の事情にも配慮してくれる会社だと思う。(営業、ナイル)
IT業界の中途採用で重視されるポイントの変化
採用側の企業はどのような視点でIT人材の中途採用を進めているのでしょうか。IT業界の採用トレンドについて解説します。
近年、IT業界の中途採用において重視されるポイントは、大きく2つの軸で整理されるようになりました。
まず1つ目は、働きやすさを求めるなかでも、しっかりとバリューを発揮できるハードスキルやケイパビリティがあるかという点です。リモートワークやフレックス制度が当たり前になった今、働く環境の柔軟性は前提条件となりました。しかし同時に、その環境下でも確実に成果を出せる技術力や専門性が、これまで以上にシビアに評価されています。
2つ目は、既存社員とのシナジーを生み出せるコミュニケーション能力やチームワーク、カルチャーフィットがあるかという点です。IT業界では個人のスキルだけでなく、チーム全体のアウトプットを最大化できる人材が求められています。
特に、オンライン中心の働き方が定着する中で、周囲のメンバーと円滑なコミュニケーションとる能力は必須となっています。実際、私が企業の採用担当者様と話していても、「技術力は申し分ないが、既存メンバーとの化学反応が期待できるか?」「この人が入ることで、チーム全体のパフォーマンスが向上するか?」といった観点での議論が増えています。
企業側は、ハードスキルとソフトスキル双方を見極める中で、自社にぴったりの人材との接点を図る採用戦略にシフトしているのが現状です。単に優秀な個人を採用するのではなく、組織全体の力を底上げできる人材を見つけることが、IT業界の人材獲得競争における勝敗を左右しているといえるでしょう。
こうした動きは、求職者にとっても明確なヒントになります。ハードスキルの面では、具体的な成果やプロジェクト事例を数値や事実で示すことで「環境が変わっても成果を出せる人材」であることを証明できます。
一方、ソフトスキルの面では、「チームでの役割」「周囲との協働でどう成果を高めたか」を伝えることがポイントです。単に「コミュニケーションが得意」と言うだけでなく、リモート環境での工夫や、異なるバックグラウンドのメンバーと連携した具体例を交えて話すと説得力が増します。
応募先の企業文化や価値観を理解し、「自分がどう貢献できるか」を自分の言葉で語れるよう準備することも重要です。
【プロフィール】
和田大生(わだ・ひろお) オープンワーク株式会社 マッチング事業部 ダイレクトセールスユニット/大学卒業後、2021年にオープンワーク入社。リクルーティングコンサルタントとして、一貫して大手総合コンサルファームや日系大手メーカー、テック系ベンチャー企業などの中途採用を支援する。現在はメンバーマネジメントや自社採用などにも奮闘中。