観光を起爆剤に誇れるわが街に 渡部晶(財務省勤務) 世代を超えて楽しめる「おもちゃ美術館」
2023/2/3 17:19 ジョルダンニュース編集部
コロナ禍により、少子化の問題がさらに健在化してきた。2022年の出生数は、初めて80万人を割り込む見通しだ。2015年は約万人が生まれたが、わずか7年で2割も減っている。一番の懸念は、社会の活力が失われていくことだと思う。
2023年4月1日にこども家庭庁が発足するが、同じ日に施行されるこども基本法では、子どもに対する支援は国だけでなく、地方の自治体や民間企業、NPOなど、さまざまな主体によりおこなわれていることを踏まえて、こうした関係者が密接に連携を取り合っていくことを想定している(注1)。
親子のお出かけ先として人気を集めているのが、東京おもちゃ美術館をはじめとする全国に展開する「おもちゃ美術館」である。多田千尋・東京おもちゃ美術館館長は、「『助成金の切れ目が縁の切れ目』―多くのNPO法人が、事業の安定性や継続性の大きな壁にぶつかっている」とする。そして、「地域と連携を図りながら、NPO法人が文化事業を展開していくためには、どのようなフレームワークを成すべきか」を問い、「東京おもちゃ美術館を『おもちゃ学芸員』という文化ボランティアとともに運営する新しい形として構築」してきた(注2)。核家族化で日本が喪失してしまった世代間・世代内のコミュニケーションの回復を目指すのだ。
昨年末に、日本経済新聞朝刊総合面の連載記事「NPO25年『善意』の限界」で、「事業の継続性」を高めた好事例として唯一紹介されているのが、香川県で子育て支援などに携わる認定NPO法人「わははネット」(高松市、理事長・中橋恵美子)である(注3)。
この「わははネット」を運営主体として、2022年4月25日、高松市の高松丸亀町商店街の中心地、大工町エリアに建設された地上8階建ての「丸亀町くるりん駐車場」の1階(面積1100㎡)に「讃岐おもちゃ美術館」(中橋恵美子館長)がグランドオープンした。高松丸亀商店街も全国で数少ない中心市街地活性化の成功事例として関係者で知らない人はいない商店街である。
この美術館は、上述の東京おもちゃ美術館(認定NPO法人芸術と遊び創造協会)とノウハウ提携した姉妹美術館である。最近、子育て支援・地方創生・林業振興等さまざまな意味合いを込めて全国の自治体などが「おもちゃ美術館」構想に乗り出していて、9番目の姉妹館開館となった(注4)。近県や県内旅行が注目されるコロナ禍において、香川県内の新たな観光スポットとして期待が集まる。
讃岐おもちゃ美術館(注5)は、自治体の支援を受けず、わははネットのつながりを活かしての迅速な設立であった。0歳から100歳まで誰でも楽しめる美術館を標榜する。美術館の手前側には『讃岐のヒト・モノ・コトをデザインするIKUNAS(株)tao.』による香川の魅力を伝えるショップ、県産食材にこだわったランチやスイーツが楽しめるカフェがあり、讃岐提灯をくぐった奥に木の香りが漂う木質空間が広がる。子どもを連れてきた祖父母が逆に夢中になって遊び、学生同士のグループがワイワイ楽しむ姿も見られるという。デートスポットとしてもお勧めできる。
一度行けばおしまいという「美術館」や「博物館」も多い中、「おもちゃ学芸員」によるコミュニケーションを重視した「おもちゃ美術館」は観光で重要なリピーターを生み出すことが可能だ。21世紀らしい観光スポットとして、今後の展開には目が離せない。
(本稿は個人的見解である)
(注1)こども基本法第13条(関係者相互の有機的な連携の確保等)参照。
(注2)「増補改訂版 東京おもちゃ美術館の挑戦~おもちゃと『おもちゃコンサルタント』が子育てを変える」(認定NPO法人芸術と遊び創造協会編著 言視舎 2017年8月)112頁。
(注3)日経新聞2022年12月30日朝刊2面「NPO解散法人2万超、事業継承ノウハウ欠くNPO25年「善意」の限界(4)」
(注4)東京おもちゃ美術館HP(全国のおもちゃ美術館):https://art-play.or.jp/area/
(注5)讃岐おもちゃ美術館HP:https://npo-wahaha.net/stm/
ExperienceTakamats:2022年12月27日掲載記事(0歳から大人まで!高松の讃岐おもちゃ美術館で伝統工芸・カフェ・ショップを満喫)
https://www.art-takamatsu.com/jp/travel/sightseeing/entry-871.html
渡部晶(わたべ・あきら):1963年福島県平市(現いわき市)生まれ。京都大学法学部卒。1987年(昭和62年)大蔵省入省。福岡市総務企画局長を30代で務めたほか、財務省大臣官房地方課長、(株)地域経済活性化支援機構執行役員、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)、沖縄振興開発金融公庫副理事長などを経て、現在、財務省大臣官房政策立案総括審議官。いわき応援大使。デジタルアーカイブ学会員。産業栽培メディア「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラム「読書の時間」を執筆中。
2023年4月1日にこども家庭庁が発足するが、同じ日に施行されるこども基本法では、子どもに対する支援は国だけでなく、地方の自治体や民間企業、NPOなど、さまざまな主体によりおこなわれていることを踏まえて、こうした関係者が密接に連携を取り合っていくことを想定している(注1)。
文化ボランティア、おもちゃ学芸員に期待
親子のお出かけ先として人気を集めているのが、東京おもちゃ美術館をはじめとする全国に展開する「おもちゃ美術館」である。多田千尋・東京おもちゃ美術館館長は、「『助成金の切れ目が縁の切れ目』―多くのNPO法人が、事業の安定性や継続性の大きな壁にぶつかっている」とする。そして、「地域と連携を図りながら、NPO法人が文化事業を展開していくためには、どのようなフレームワークを成すべきか」を問い、「東京おもちゃ美術館を『おもちゃ学芸員』という文化ボランティアとともに運営する新しい形として構築」してきた(注2)。核家族化で日本が喪失してしまった世代間・世代内のコミュニケーションの回復を目指すのだ。
昨年末に、日本経済新聞朝刊総合面の連載記事「NPO25年『善意』の限界」で、「事業の継続性」を高めた好事例として唯一紹介されているのが、香川県で子育て支援などに携わる認定NPO法人「わははネット」(高松市、理事長・中橋恵美子)である(注3)。
この「わははネット」を運営主体として、2022年4月25日、高松市の高松丸亀町商店街の中心地、大工町エリアに建設された地上8階建ての「丸亀町くるりん駐車場」の1階(面積1100㎡)に「讃岐おもちゃ美術館」(中橋恵美子館長)がグランドオープンした。高松丸亀商店街も全国で数少ない中心市街地活性化の成功事例として関係者で知らない人はいない商店街である。
この美術館は、上述の東京おもちゃ美術館(認定NPO法人芸術と遊び創造協会)とノウハウ提携した姉妹美術館である。最近、子育て支援・地方創生・林業振興等さまざまな意味合いを込めて全国の自治体などが「おもちゃ美術館」構想に乗り出していて、9番目の姉妹館開館となった(注4)。近県や県内旅行が注目されるコロナ禍において、香川県内の新たな観光スポットとして期待が集まる。
「一度行けばおしまい」ではない21世紀らしいスポットに
讃岐おもちゃ美術館(注5)は、自治体の支援を受けず、わははネットのつながりを活かしての迅速な設立であった。0歳から100歳まで誰でも楽しめる美術館を標榜する。美術館の手前側には『讃岐のヒト・モノ・コトをデザインするIKUNAS(株)tao.』による香川の魅力を伝えるショップ、県産食材にこだわったランチやスイーツが楽しめるカフェがあり、讃岐提灯をくぐった奥に木の香りが漂う木質空間が広がる。子どもを連れてきた祖父母が逆に夢中になって遊び、学生同士のグループがワイワイ楽しむ姿も見られるという。デートスポットとしてもお勧めできる。
一度行けばおしまいという「美術館」や「博物館」も多い中、「おもちゃ学芸員」によるコミュニケーションを重視した「おもちゃ美術館」は観光で重要なリピーターを生み出すことが可能だ。21世紀らしい観光スポットとして、今後の展開には目が離せない。
(本稿は個人的見解である)
(注1)こども基本法第13条(関係者相互の有機的な連携の確保等)参照。
(注2)「増補改訂版 東京おもちゃ美術館の挑戦~おもちゃと『おもちゃコンサルタント』が子育てを変える」(認定NPO法人芸術と遊び創造協会編著 言視舎 2017年8月)112頁。
(注3)日経新聞2022年12月30日朝刊2面「NPO解散法人2万超、事業継承ノウハウ欠くNPO25年「善意」の限界(4)」
(注4)東京おもちゃ美術館HP(全国のおもちゃ美術館):https://art-play.or.jp/area/
(注5)讃岐おもちゃ美術館HP:https://npo-wahaha.net/stm/
ExperienceTakamats:2022年12月27日掲載記事(0歳から大人まで!高松の讃岐おもちゃ美術館で伝統工芸・カフェ・ショップを満喫)
https://www.art-takamatsu.com/jp/travel/sightseeing/entry-871.html
渡部晶(わたべ・あきら):1963年福島県平市(現いわき市)生まれ。京都大学法学部卒。1987年(昭和62年)大蔵省入省。福岡市総務企画局長を30代で務めたほか、財務省大臣官房地方課長、(株)地域経済活性化支援機構執行役員、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)、沖縄振興開発金融公庫副理事長などを経て、現在、財務省大臣官房政策立案総括審議官。いわき応援大使。デジタルアーカイブ学会員。産業栽培メディア「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラム「読書の時間」を執筆中。
記事提供元:タビリス