観光を起爆剤に誇れるわが街に 渡部晶(財務省勤務) 大都市観光に不可欠な存在、公園
2023/3/27 15:15 ジョルダンニュース編集部
観光立国推進基本計画は、観光立国推進基本法に基づく法定の計画である。前回の第3次計画は20年度末で期限を迎えたが、コロナ禍で観光需要の見通しが不透明といった理由から、第4次計画についての議論は一時中断されていた。年度末までの閣議決定を目指している、今回の第4次計画の素案は、観光を「成長戦略の柱」「地域活性化の切り札」と位置付け、持続可能な観光、消費額拡大、地方誘客を強く打ち出している。具体的には、25年までに訪日客1人当たりの消費額を20万円とする新たな目標を設定した。19年の15.9万円から25%の引き上げとなる。
この素案の「インバウンド回復戦略」の「消費拡大に効果の高いコンテンツの整備」の1つに掲げられているのが、「大都市観光の推進」である。「大都市の観光は国際的に大きく注目されており、我が国の観光においても観光の拠点として重要で、底上げを図ることが必要である」としている。
日本でも、大阪にある大阪城公園、天王寺公園などがあげられる。最近、これらの公園の「人を集め都市の価値を高める仕組み」を分析・解説した好著『スキーム図解 公民連携パークマネジメント』(学芸出版社)が刊行された。
著者の鈴木文彦氏は、大和総研主任研究員で、元銀行マン(七十七銀行)である。自治体の財政分析に精通しており、日経グローカルで「自治体財政 改善のヒント」(注1)や財務省広報誌ファイナンス「路線価でひもとく街の歴史」(注2)を連載中である。
都市観光で重要な役割を果たす公園であるが、総じて公園にかかる使用料・手数料は維持管理費の6~7%にとどまっており、大部分は税金や補助金等で賄われ、自治体財政の負担になっていると指摘する。
そこで、公民連携(民間企業の生命力を注入することで公共施設の付加価値を上げ、それを民間企業の利益と自治体の負担削減に配分するシステム)により、経営の持続可能性を追求することが重要になる。
大阪城公園は、2015年4月から電通関西支社その他5社からなる「大坂城パークマネジメント共同事業体」によって運営されている。この事例では、既存施設の管理だけでなく、大阪城の魅力を向上させる設備投資を伴うスキームとなっている点が画期的だという。
また、天王寺公園のエリアは、聖徳太子ゆかりの四天王寺をはじめとして天王寺動物園、大阪市美術館、日本庭園の慶澤園、真田幸村ゆかりの茶臼山など大阪の文化・観光資源が集まっており、そのエリア中核の動線となるエントランスエリアの、民間の柔軟かつ斬新なアイディアによる運営でこのエリア全体の活性化につながっているのだ。
前述の書でも、著者鈴木文彦氏は「公園で観光振興」と題するコラムで、「域外から収益機会を得る観光振興は地域活性化の重要な要素になります。特に所得向上を意識した場合、『集めて、見せて、買わせて、ファンにする』のプロセスを確立することが重要です」(p37)と指摘している。公民連携による公園の活用には大きな可能性がひらかれている。
(本稿は個人的見解である)
(注1)交通政策審議会 第45回観光分科会(令和5年2月9日) 配布資料
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/kanko02_sg_000001_00009.html
(注2)日経グローカル
https://www.nikkei.co.jp/rim/glweb/
(注3)財務省広報誌ファイナンス
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/index.htm
渡部晶(わたべ・あきら):1963年福島県平市(現いわき市)生まれ。京都大学法学部卒。1987年(昭和62年)大蔵省入省。福岡市総務企画局長を30代で務めたほか、財務省大臣官房地方課長、(株)地域経済活性化支援機構執行役員、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)、沖縄振興開発金融公庫副理事長などを経て、現在、財務省大臣官房政策立案総括審議官。いわき応援大使。デジタルアーカイブ学会員。産業栽培メディア「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラム「読書の時間」を執筆中。
この素案の「インバウンド回復戦略」の「消費拡大に効果の高いコンテンツの整備」の1つに掲げられているのが、「大都市観光の推進」である。「大都市の観光は国際的に大きく注目されており、我が国の観光においても観光の拠点として重要で、底上げを図ることが必要である」としている。
ニューヨークの鮮やかな思い出、数々の公園
大都市観光で不可欠な存在は公園だろう。筆者の大都市ニューヨークでの観光では、いくつかの公園で過ごした素敵な時間を鮮やかに思い出す。それは、セントラルパーク、ニューヨーク公共図書館があるブライアントパーク、廃線となった貨物線の線路の跡地を1.6km 以上続く遊歩道として再生させたハイライン、ブルックリン橋付近のブルックリン ブリッジ パーク、メグ・ライアンの『恋人たちの予感』など映画ロケ地でも知られるワシントン スクエア パークなどだ。日本でも、大阪にある大阪城公園、天王寺公園などがあげられる。最近、これらの公園の「人を集め都市の価値を高める仕組み」を分析・解説した好著『スキーム図解 公民連携パークマネジメント』(学芸出版社)が刊行された。
著者の鈴木文彦氏は、大和総研主任研究員で、元銀行マン(七十七銀行)である。自治体の財政分析に精通しており、日経グローカルで「自治体財政 改善のヒント」(注1)や財務省広報誌ファイナンス「路線価でひもとく街の歴史」(注2)を連載中である。
都市観光で重要な役割を果たす公園であるが、総じて公園にかかる使用料・手数料は維持管理費の6~7%にとどまっており、大部分は税金や補助金等で賄われ、自治体財政の負担になっていると指摘する。
民の生命力注入で付加価値上げ、持続的経営を
そこで、公民連携(民間企業の生命力を注入することで公共施設の付加価値を上げ、それを民間企業の利益と自治体の負担削減に配分するシステム)により、経営の持続可能性を追求することが重要になる。
大阪城公園は、2015年4月から電通関西支社その他5社からなる「大坂城パークマネジメント共同事業体」によって運営されている。この事例では、既存施設の管理だけでなく、大阪城の魅力を向上させる設備投資を伴うスキームとなっている点が画期的だという。
また、天王寺公園のエリアは、聖徳太子ゆかりの四天王寺をはじめとして天王寺動物園、大阪市美術館、日本庭園の慶澤園、真田幸村ゆかりの茶臼山など大阪の文化・観光資源が集まっており、そのエリア中核の動線となるエントランスエリアの、民間の柔軟かつ斬新なアイディアによる運営でこのエリア全体の活性化につながっているのだ。
前述の書でも、著者鈴木文彦氏は「公園で観光振興」と題するコラムで、「域外から収益機会を得る観光振興は地域活性化の重要な要素になります。特に所得向上を意識した場合、『集めて、見せて、買わせて、ファンにする』のプロセスを確立することが重要です」(p37)と指摘している。公民連携による公園の活用には大きな可能性がひらかれている。
(本稿は個人的見解である)
(注1)交通政策審議会 第45回観光分科会(令和5年2月9日) 配布資料
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/kanko02_sg_000001_00009.html
(注2)日経グローカル
https://www.nikkei.co.jp/rim/glweb/
(注3)財務省広報誌ファイナンス
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/index.htm
渡部晶(わたべ・あきら):1963年福島県平市(現いわき市)生まれ。京都大学法学部卒。1987年(昭和62年)大蔵省入省。福岡市総務企画局長を30代で務めたほか、財務省大臣官房地方課長、(株)地域経済活性化支援機構執行役員、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)、沖縄振興開発金融公庫副理事長などを経て、現在、財務省大臣官房政策立案総括審議官。いわき応援大使。デジタルアーカイブ学会員。産業栽培メディア「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラム「読書の時間」を執筆中。
記事提供元:タビリス