増え続ける空き家 「希望のコミューン 新・都市の論理」より(5)
2024/12/16 13:16 ジョルダンニュース編集部
希望のコミューン 新・都市の論理
本記事は9月25日に出版された「希望のコミューン 新・都市の論理(著:布野修司, 森民夫, 佐藤俊和)」の内容を抜粋したものです。
住宅が居住のためにのみ使用されるのであるとすれば、すなわち投機の対象として売買されることはないとすれば、また、世帯数の増加がなければ、毎年の新設住宅着工戸数は、住宅の耐用年数に応じてほぼ一定になっていくはずである。しかし、総人口は既に減少に向かいはじめたにもかかわらず、総住戸数(ストック)はこの間増加しつづけ、結果として、空き家が増えつづけている。新設住宅着工戸数(フロー)については、耐震偽装事件による建築基準法改正(2007年)によって100万戸ほどになった。リーマンショック直後には78万戸(2009年)となり、その後徐々に増え、消費増税前の駆け込み需要もあって80万〜90万戸台で推移したが、コロナ禍で81万戸に再び落ち込んだ。2022年は85万9529戸(持家25万3287戸、貸家34万5080戸、分譲住宅25万5487戸(マンション10万8198戸、戸建住宅14万5992戸))(建築着工統計調査報告(2022年計)、国土交通省総合政策局)であったが、長期的にはさらに減って、2040年には約55万戸になると予測されている。仮に、世帯数と同じ住戸数が必要であるとして、総住戸5000万戸が50年(耐用年限)に一度更新されるとすれば年100万戸、100年に一度更新されるとすれば年50万戸の新設住宅建設となるから、ほぼそういう方向に推移していくと考えていい。
問題は、老朽化した鉄筋コンクリート造の共同住宅の更新システムが成立していないことである。日本には2021年末に686万戸の共同住宅のストックがあるが、そのうち旧耐震基準(1981年以前)の築40年以上のストックが115・6万戸である。新耐震基準となって以降も経年劣化が進行するのは当然で、2041年末には築40年以上のストックは425・4万戸と推計される。現在建設されるタワーマンションもやがて同じ運命を迎える。既に補修が必要なタワーマンションも存在している。鉄筋コンクリート造の共同住宅は建替えるしかない。鉄とガラスとコンクリートは膨大な廃棄物となる。そしてそれ以前に、現在の区分所有法では建替えのためには住民の5分の4の同意が必要である。区分所有の共同住宅の建替え実績は270件(2022年4月)で、平均築年数は37・7年、団地型43・5年という(国土交通省)。建替え費用を捻出するためには、住戸数を増やして販売する、容積率の余剰か緩和が不可欠である。建替えが可能となった事例は、最寄駅から10分以内に立地するものがほとんどである。更新システムが不在だから、空き家は増加し続ける。それどころか、所有者不明の土地が410万ha(九州の面積に匹敵する)という(所有者不明土地研究会、2017年)。悪循環、システム矛盾というより、循環なき、システムなき蕩尽である。国土計画の再構築、全国の居住空間の再編成は必至である。
1968年に総住宅数が世帯数を超えて以来、空き家は増え続け、70年代末には268万戸(空き家率7・6%、1978年)、1983年には330万戸、21世紀初頭には820万戸(13・5%、2013年。総世帯数は5245万世帯、総住宅数は6063万戸、その差818万戸から複数住戸を所有する世帯を除く。さらに別荘などの「二次的住宅」を除けば808万戸)、1988年には849万戸(13・6%、2018年)と推移し、世帯数の減少も加速して、2033年には2166万戸が空き家となると予測されるのである。空き家のうち、賃貸用住宅が431万戸、売却予定住宅が29万戸、「二次的住宅」が38万戸、「その他の住宅(世帯主が長期不在、取り壊し予定など)」が349万戸である(2018年)。また、戸建住宅が317万戸、長屋建が50万戸、共同住宅が475万戸である。
スクラップ・アンド・ビルドの時代からリノベーションの時代への転換は必然である。
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