多くの人たちとの作品共有から生まれる新たな人間関係 アートが変える社会と経済
2025/3/3 12:20 ジョルダンニュース編集部
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アートが変える社会と経済: AI、NFT、メタバース時代のビジネスと投資の未来
本記事は書籍「アートが変える社会と経済: AI、NFT、メタバース時代のビジネスと投資の未来(著:倉田陽一郎)」の内容を抜粋したものです。
さて、シェアリングの何が楽しいかといえば、それは1人で一つの美術品を持っているのと比べ、数多くの人たちとその作品を共有することにより、そのコミュニティのコミュニケーションが活発化し、情報を共有することで、より深い満足感が得られることです。
当然、コミュニティが成立すると、その中でのさまざまなプロジェクトも可能になります。たとえば、ピカソのキュビズムの作品のトークンを保有してシェアリングしているオーナー同士で情報交換し、ピカソが育った場所に行くツアーを企画したり、マドリードのソフィア王妃芸術センターにある『ゲルニカ』を観に行くツアーに参加したりして、コミュニティに関わるすべての人たちの人生の質を向上することができます。実際に現地へのツアーに参加するとなると、これがまた時間とお金を要して、大変な旅をすることになります。しかし、コミュニティのイベントをメタバース空間で行えば、時間とお金をセーブした楽しい旅が可能になります。仮想空間内を訪れ、アバター仲間と一緒に遊ぶことができるようになるのも、人類の新たな進化の在り方かもしれません。
とはいえ、人間同士が直接会わず、仮想空間内でやり取りをするようになると、人間関係がどんどん希薄になっていくのではないだろうか……。確かにコロナ禍で、皆がZOOMなどを使ってやり取りする状況を見れば、そんなふうに感じる人も多いかもしれません。
しかしメタバース空間で人と人とが距離の制約を超えて会うことは、リモートの通信とはまったく違う、別の体験を皆で共有する関係性をうながすことになります。
美術品のシェアリングは未来のプロジェクトを生み出す
美術品の分割所有ということは、現在でも不可能なことではありません。しかし、美術品の所有権を分割し、証券化したものを分散して管理するというのは、現実的になかなか成り立たないのではないかと思います。アートの価値は長期にわたる時間軸が必要となるので、アート価値の維持と上昇を狙う美術品の分割所有は、その間の管理の継続維持が大変です。ただ単なる分割所有と管理とでは、美術品投資が主眼となり、コミュニティにより、その作品と自分との人生の関わりが希薄になってしまいます。
しかし、美術品の分割所有とシェアリングは、まったく別のものです。シェアリングを通して、ブロックチェーンで管理するシェアされた美術品を皆で共有し、管理し、維持して、育てていくという、一種のプロジェクトを生み出すことになるのです。それは新しいベンチャープロジェクトが誕生するようなもので、ゲーム内の冒険が始まるのに似たワクワク感があります。しかもそのトークンの価値が上がれば、実際に資産価値が上がるというメリットまでついてきます。そんな冒険を一緒にするコミュニティメンバーが、それこそ国や宗教、民族の壁も越えて、ゼロベースでアバターが接触して成り立つような新しい人間関係が生まれてくる可能性があるわけです。
むろんWeb3の時代が実際にどうなっていくのか、まだ始まって間もない世界の未来図は、現状では誰も描けていないのが真実です。インターネットが普及したのは1990年代の後半ですが、今のように、皆がスマホを使ってスワイプしている時代など、30年前はおそらくほとんどの人が予見していなかったと思います。数十年の短い間で、通信やITは世の中の構造を完全に変えてしまいました。
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