宇宙スタートアップのアクセルスペースが上場 初値は公開価格の2倍、時価総額は400億円超
2025/8/19 1:50 ジョルダンニュース編集部

宇宙スタートアップのアクセルスペースホールディングス(HD)が2025年8月13日、東証グロース市場に上場した。同日、東証内で記者会見を開いた。CEOの中村友哉氏とCFOの折𠩤大吾氏が登壇し、事業内容や今後の展望、上場への思いを語った。

アクセルスペースホールディングスは「宇宙を普通の場所に(Space Within Your Reach)」をビジョンに掲げ、小型衛星を安く・早く開発する技術を強みに、事業を展開している。創業は2008年。最初の顧客は気象情報会社のウェザーニューズからの受託開発だった。その後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)向け技術実証衛星の開発・運用など、11機の人工衛星を開発・打ち上げ・運用してきた実績を持つ。
主力事業は大きく二つ。一つは、顧客向けに人工衛星を開発する「アクセルライナー」事業。単なる衛星開発だけでなく、政府許認可や周波数調整まで一貫して請け負うワンストップサービスだ。もう一つは、自社で打ち上げた地球観測衛星群(コンステレーション)からの光学画像を販売する「アクセルグローブ」事業だ。画像そのものの販売に加え、画像から得られるインサイトをソリューションとして提供することで、付加価値を高めている。
中村CEOは、衛星開発とデータ提供の両事業を運営するビジネスモデルは世界的にもユニークであり、他社との差別化に繋がると強調した。
現在は赤字が続いているものの、事業自体は順調に成長しているという。アクセルライナー事業は政府案件が中心だが、今後は民間案件の獲得も狙う。アクセルグローブ事業は、2022年5月期に衛星5機体制となって以降、民間企業からの案件が伸びており、政府に依存しない事業構成が確立されつつある。
今後の成長ドライバーとして、2026年に次世代の中分解能光学衛星「GRUS-3」を7機打ち上げる計画を明らかにした。上場に伴い調達した資金を活用する。これにより、撮影頻度とエリアを大幅に拡大し、顧客ニーズに応じたサービス提供を強化する。さらに、中期的には高分解能衛星の開発・運用も視野に入れ、中分解能と高分解能の衛星を組み合わせた新しいサービスの創出を目指す。例えば、広域を中分解能で日常的にモニタリングし、気になる変化があれば、その箇所を高分解能で詳細に撮影する、といった活用法だ。
また、民間向けの新規サービスとして、衛星を部分的に貸し出し、軌道上での実証機会を低コストで提供する「アクセルライナーラボ」事業を本格化させる。宇宙事業への参入を検討する企業が増える中、実証実績をタイムリーに得られる仕組みを提供することで、新規参入を後押しする狙いだ。
宇宙関連ということで、個人投資家を中心に成長への期待は高く、初値は751円と公開価格(375円)の2倍となった。時価総額は400億円を超えた。株価が公開価格を上回ったことについて、中村CEOは「多くの投資家から高い評価をいただき大変嬉しく思う」と述べつつも、「今日の株価に一喜一憂することなく、アクセルスペースの成長性をしっかり示していきたい」と語った。上場は、優秀な人材の獲得やM&A(合併・買収)といった非連続的な成長の手段としても活用できるため、同社にとって最良のタイミングだったとの見解を示した。
質疑応答では、東大発ベンチャーとしての思いや、宇宙業界の競合・協業関係についても言及。中村CEOは、日本の宇宙開発を牽引してきた中須賀真一東大教授との師弟関係に触れ、上場はゴールではなく、小型衛星の可能性を世界に示すための「スタート」だと力強く語った。
また、地球観測衛星の市場について、光学衛星とSAR(合成開口レーダー)衛星は競合するものではなく、それぞれの強みを活かして共存・補完し合う関係にあると説明。防衛省案件でも両方の調達方針が示されており、地球観測のニーズが伸びれば、双方の市場も拡大していくとの見通しを示した。