国内初の円建てステーブルコイン JPYCが資金移動業ライセンス取得
2025/8/26 1:16 ジョルダンニュース編集部

フィンテック企業のJPYC(東京・千代田)は8月18日、金融庁から、国内で初めてとなる資金移動業のライセンスを金融庁から取得した。今後、数週間以内に発行・償還サービス「JPYC EX」を開始し、日本円ステーブルコインの本格的な流通をスタートさせる。同社の岡部典孝代表は19日に開いた記者会見で、「スタートアップが国家的に重要な事業を任されたことに感謝している。このライセンス取得を機に、日本のデジタル金融の発展に貢献したい」と述べた。

今回のライセンス取得は、2023年6月に施行された改正資金決済法に基づくものだ。同法では、日本円に償還可能なステーブルコインが「電子決済手段」として定義され、資金移動業ライセンスを持つ事業者に発行が認められた。これにより、従来のプリペイド型電子マネーとは異なり、利用者は第三者への送金や取引を自由に行うことが可能になる。
岡部氏は、ステーブルコインの市場規模が世界的に急成長している現状を指摘。「世界のステーブルコインの時価総額は2500億ドル(約42兆円)を超え、1日の取引高は東証の株式取引高の4倍に達する日もある」と説明した。その98%近くが米ドル建てである一方、日本円のステーブルコインはほぼゼロだったが、今回のライセンス取得を機に状況が変わるとの見方を示した。
新サービス「JPYC EX」では、世界中の個人や企業に、数秒で低コストの送金が実現する。JPYCの発行や償還の手数料は当面無料とし、送金時にかかるブロックチェーンの手数料(ガス代)も、安価なチェーンでは1円以下に抑えられる。同社は、イーサリアム、アバランチ、ポリゴンの3つのブロックチェーンに対応してサービスを開始し、順次拡大していく予定だ。
JPYCは、利用者が自分のウォレットで資産を管理する「ノンカストディ」方式を採用しており、いつでもどこでも自分の意思でお金の流れをコントロールできるのが特徴だ。また、プログラムとの親和性が高く、「AIとの統合」や「プログラマブルマネー」として、国際送金や業務の自動化など、多様なデジタル変革(DX)に活用できる可能性を秘めている。
JPYCは、2019年の設立以来、金融庁と緊密な協議を重ねてきた。特に、厳格なマネーロンダリング対策やシステムリスク管理体制の構築に注力し、当局の要求水準を満たすべく、200種類以上の規定・マニュアルを提出したという。
岡部氏は、「4年半以上、大きな事故なく自家型前払式支払手段としてJPYCを運用してきた実績が、今回の第一号登録につながったと確信している」と述べた。
同社は、米国のステーブルコイン大手サークル社から2021年に出資を受けており、サークル社が世界で初めて出資したスタートアップだ。今回のライセンス取得は、銀行や大手企業の後ろ盾を持たない純粋なスタートアップが成し遂げた快挙であり、国内のWeb3業界にとって大きなマイルストーンとなる。
岡部氏は、日本の経済発展と日本円の価値向上への貢献を目標に掲げ、「日本円のステーブルコインを通じて、日本円を世界中の人々が自由に使える社会を目指す」と意気込んだ。
