AIで女性の働き方再定義、WAIJが事業戦略を発表 日本マイクロソフトなどと連携しリスキリングを推進
2025/9/22 19:29 ジョルダンニュース編集部

AIによる自動化の影響を受けやすい事務職などは女性比率が高い
國本代表「多くの女性がAIの影響を受ける。これは大きな社会課題だ」
一般社団法人Women AI Initiative Japan(WAIJ、國本知里代表理事)は2025年9月18日、都内で事業戦略発表会を開き、AIを活用して女性のキャリア開発を支援する新戦略を発表した。日本マイクロソフトや生成AI活用普及協会(GUGA)などと連携し、AIの基礎知識習得から実践的なリスキリングまでを一貫して支援する。國本代表は「すべての女性がAIで、その先へ。」というミッションを掲げ、「AI時代の働き方を再定義し、主体的に人生を選択できる社会を目指す」と語った。
■女性に迫るAIの波、キャリアチェンジ急務
生成AIの急速な進化は働き方を大きく変え、「AIによる失業」への不安も広がる。WAIJは、この変化が特に女性に大きな影響を与えると警鐘を鳴らす。AIによる自動化の影響を受けやすい事務職などには女性比率が高く、ある予測では2040年に国内の事務職で214万人の労働力が過剰になる一方、デジタル関連職では326万人が不足するとされる。
國本代表は「多くの女性がAIの影響を受ける。これは大きな社会課題だ」と述べ、キャリアチェンジの必要性を訴えた。この課題認識のもと、WAIJは女性のAI活用を阻む壁を取り払い、新たなキャリアへの移行を支援する。

■見えぬ活用法、学びにくさ AIに関する調査が示す実態
WAIJが20代から50代の女性約1100人を対象に実施した「女性AI人材白書」では、リアルな課題が浮き彫りになった。仕事やプライベートでAIを日常的に利用していない人が半数以上にのぼり、背景には「AIに頼りすぎるのは危険」といったネガティブなイメージが存在する。
学習意欲はあっても、「何から始めていいのか分からない」という声が最多で、情報不足が障壁となっている。また、スキル習得のために求めるのは教材そのものよりも「参加しやすい学習環境」であり、女性同士で共に学べるコミュニティの重要性が示された。國本代表は「調査結果から、女性同士が共に学ぶ環境が必要不可欠だと確信した」と分析する。
■具体的な支援策を始動、キャリア創出へ
調査結果を踏まえ、WAIJは「日本にいる女性の10人に1人に、AIで人生の選択肢を届ける」という目標を掲げ、具体的なプロジェクトを発表した。
中核となるのが、AIスキルのレベルに応じたリスキリングプログラムだ。まずAIの基礎リテラシー向上に向け、GUGAと提携し「生成AIパスポート」資格の取得を支援する。WAIJメンバーに試験対策講座を無償提供し、受験料も割り引く。次に、より実践的なスキル習得のため、日本マイクロソフトと連携。同社の女性向けプログラムを基盤に、WAIJが企業の実案件に参画する機会を提供する。「eラーニングで学んだ知識を、実案件でどうビジネス課題解決に繋げるかを学ぶ」(國本氏)もので、修了者には実践的スキルを証明する共同の「スキル認定バッジ」が付与される。

また、企業を巻き込む取り組みとして、「女性のAIチャレンジ応援宣言 MIRAI-YA」を開始。女性のAI活用を推進する企業を募る賛同型のプロジェクトで、「学ぶことがキャリアに繋がるという実感を持ってもらいたい」(國本氏)考えだ。
さらに個人がAIに触れる最初のきっかけとして、「私のAIライフスタイル診断」の提供も始めた。LINE上で質問に答えると自分に合ったAI活用法がわかるもので、ナビゲーターにタレントの村上信五さんのAIアバターである「AIシンゴ」を起用し、心理的ハードルを下げる。

國本代表は「事務職の方がAIスキルを獲得してフリーランスになるなど、AIは働き方の価値観を変えるチャンス」と語る。WAIJは2030年までに100万人の女性に機会を提供することを目指す。発表会の最後、國本代表は「AIは怖いものではなく、キャリアを支えるパートナー。前向きな対応ができる女性を増やしたい」と述べた。AIという巨大な波を、女性がキャリアを飛躍させる追い風に変える挑戦が、本格的に始動する。