【人インタビュー】誰よりも早くブロックチェーン・仮想通貨の未来を見た藤本真衣氏:世界を変える挑戦と情熱の原点 (上) 藤本真衣氏が歩んだ道 イントマックス共同創業で理想の技術を追求
2025/10/17 9:38 ジョルダンニュース編集部

日本でのブロックチェーンの黎明期から、その可能性を信じ活動を続けるオピニオンリーダー、藤本真衣氏。かつて「ミスビットコイン」の異名で知られ、現在はブロックチェーン関連スタートアップ、イントマックス(INTMAX)の共同創業者としてグローバルな舞台で活躍し、またジャパンブロックチェーンウィーク(JBW)の創設メンバーの一人として、日本のブロックチェーン・エコシステムをけん引しています。東日本大震災の寄付活動をきっかけにビットコインと出会い、その分散性と公平性に魅了された藤本氏の道のりは、まさにブロックチェーン技術と文化の進化と重なります。本インタビューでは、藤本氏がビットコインと出会った原点から、自身が共同創業したイントマックスの革新的な技術、そしてJBWを通じて目指す日本と世界のブロックチェーンエコシステムの未来について、その情熱の源泉に迫ります。
ブロックチェーンとの運命的な出会い 東日本大震災と寄付の壁
Q: まず、藤本さんがブロックチェーン・クリプトの世界に足を踏み入れた経緯と、その後「ミスビットコイン」と呼ばれるようになった背景についてお聞かせください。
A: 私がこの世界に入ったのは2011年、東日本大震災の直後という運命的なタイミングでした。当時、私は金融やテクノロジーとは無縁の、子ども向けのウェブコンテンツサービス(昔流行った「美人時計」の子どもバージョンであるキッズ時計)を提供する会社で働いていました。

震災後、私たちのチームは笑顔を作るコンテンツだけでなく、やはり支援をしないといけないという話になり、寄付プラットフォーム「アイキッズケア」を立ち上げることになったのです。そのプラットフォームを運営する中で、海外から寄付をしたいという外国人の方が現れました。しかし、当時の既存の金融システムでは、寄付するために銀行送金で一週間かかり、手数料が7,000円もかかるという現実に直面しました。
せっかくこんなに多くの人が海外から寄付したいと言っているのに、今の金融システムだとそのお金の流れがとてもスムーズではなく、手数料が高い。この問題にぶち当たった時、たまたまその当時ビットコインを世界的に広めていたロジャー・バーさんという方と出会いがありました。
ビットコインは、手数料が10円以下で、お金が即日に着金するという衝撃的な事実を聞きました。「え、ちょっと待って。じゃあビットコインっていうものは、こういう寄付とか、緊急時のお金の送金、海外送金に一番なアイデアなんじゃない?」ということで、たちまち魅了されました。当時、ビットコインを信じる人が多くいなかった中でも、そのコンセプトが、私には、スッと入ってきたのは、こうした原体験があったからです。
普及活動と「ミスビットコイン」の誕生
Q: その後、ビットコインの普及活動に尽力され、「ミスビットコイン」として知られるようになりました。どのような活動をされていたのですか?
A: ビットコインで寄付を受け付けようとしたのですが、次の問題として、ビットコインを知っている人、持っている人が少ない、「怪しいんじゃないの?」という懸念から、ビットコインを送金ツールとして使いたくない人が多い、という壁にぶつかりました。
そこで、まずはビットコインというものが、詐欺のようなものや、宗教だと誤解されるようなものと何が違うのかというのを、しっかりと広めていかないといけないと思いました。それでブログとかYouTubeを始めたんですね。その時、キャッチーなネーミングにするため、「勝手にミスビットコインチャンネル」というチャンネルを作りました。2017年に起こったビットコインのハードフォーク(ブロックチェーンの分岐)の際に両陣営のキーバーソン達にインタビューしたYouTube動画がバズったことで、「ミスビットコイン」という名前が有名になりました。

当時、私は起業家というよりも、どちらかというと、海外の人が日本に来る時に最初に相談するコネクターのような役割が強かったのです。例えば、バイナンスやアニモカといった主要なプロジェクトが日本に来る際も相談を受けました。私は、このエコシステムを育てないと、という思いから、規制当局の関係者、日本の主要プレイヤー、潜在的な協業先、業界団体のメンバーなどをつなぐ役割を担い、必要に応じて調整や紹介を行っていました。

ブロックチェーンの理想と現実 イントマックス設立へ
Q: 理想を追求する中で、既存のブロックチェーンが抱える課題を感じたそうですね。その課題を解決するためにイントマックス(INTMAX)を共同創業されました。
A: 私は安い手数料や中央集権ではない(権力にコントロールされない)というところに魅了されてこの世界に入ったはずなのに、使ってみると、結局ガス代(トランザクション手数料)が高い時には3万円とか、非常に高額になってしまう現実に直面しました。「全ての人が平等に使えるはずのツールだったのに、結局お金持ちしか使えないってどういうこと?」と、非常に残念な、チャレンジングな時期を迎えました。
たまに手数料がほぼないブロックチェーンが出てきても、結局は中央集権で、分散性(非中央集権性)を犠牲にして安い手数料を提供しているんですよね。これでは、私がもともと惚れたものではないから納得がいかない。ただ、技術的に分散を保ったまま手数料を安くするのは難しい、というのも分かっていました。
そんな中で、今の共同ファウンダーである日置玲於奈と出会い、イントマックスのコンセプトを聞きました。それは、私が感じていた「私の思ってたクリプトじゃない」というところを解決するものだったのです。イントマックスの強みは、ネットワークがどれだけ混んでも、大体ネットワーク手数料が0.0005ドルで世界中の人が使えることです。しかも、イーサリアムのレイヤー2(L2:イーサリアムのセキュリティを利用しつつ処理能力を向上させる技術)なので分散性も保ち、イーサリアムのセキュリティも引き継いで使える。これはすごい、絶対これが必要だからやろう、ということで創業したのがイントマックスです。