ドバイGITEX 2025 「スマートモビリティ」の社会実装進展  人工知能(AI)とデジタル技術が都市の未来を描く

ジョルダンニュース編集部

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、2025年10月13~17日に開催された世界最大級のテクノロジー見本市「GITEX(ジャイテックス) GLOBAL 2025(第45回)」では、世界180カ国以上から6800社超の企業・政府機関が一堂に会して、AIと移動体が融合したスマートモビリティなど最先端分野の成果を競うように展示した。中東などで相次ぐ「スマートシティ」構想を支える新技術が存在感を見せた。AIで最適化する交通システム、環境負荷を低減する電動・空飛ぶ車両など、都市の未来像を体現する実証展示が数多く並んだ。

GITEXでは、ドバイやアブダビなど、UAEを構成する首長国が展示を競っている。ブースの大きさも通常の展示会と比べると桁違いだ。そのためか、公共関連の展示が多いのも特徴だ。

アブダビ民間防衛隊のスマートパトカー「Raad」

アブダビ民間防衛隊は、巡回、検査、作戦調整が可能なAI搭載の指揮車両「Raad」を展示した。新世代の緊急対応技術を構築している。名称は、アラビア語で雷を意味する。普段はスマートパトカーとして機能し、緊急時には移動式指揮ユニットに変身する。街中を巡回し、建築物の状況をQRコードを介して、検査する。さらなる検査が必要な場合は、車両の後部座席に収納されたロボット犬が自動的に出動する。トランクから飛び降りて建物に入り、自律的に検査を行い、違反がないか、出口が塞がれていないか、居住者の健康と安全を脅かす可能性のあるものがないかを確認する。ドローンやセンサーも使用して現場からリアルタイムのデータを配信する機能もある。

マイクロポリス・ロボティクス社がドバイ警察向けに製造するM01パトロールユニット

ドバイのマイクロポリス・ロボティクス社が製造するM01パトロールユニット(M01-P)は、より本格的な警察車両である。ドバイ警察向けに特別に設計され、長年にわたり改良を重ねてきたこの車両は、センターからの制御下で運用できるだけでなく、人間の監督なしでも自律的にパトロールすることが可能だ。360度カメラシステムと多数のセンサーを搭載したM01-Pは、混雑した都市環境でも確実に自在に移動することができる。

居住許可やビザの違反者を特定する検査車両

UAEの連邦アイデンティティ、市民権、税関および港湾保安局(ICP)は、居住許可やビザの違反者を特定するため、AIを搭載した新型車両「ICP検査車」を導入する。6台の高解像度カメラで全方向最大10mの範囲を監視し、AIがリアルタイムで顔認証を行う。これにより、違反者や指名手配対象者を瞬時に特定し、スマートアラートで通知することが可能だ。入国希望者が多いUAEでは、ビザ関連検査の効率化が必須だ。

ドバイ・タクシー・カンパニーの新型車両

会期中には、ドバイのAI大手Presightとドバイ・タクシー・カンパニー(DTC)が覚書を締結した。AIによる配車最適化や運行管理、安全性向上などを推進することで合意した。具体的にはAIが車両データと都市全体の交通情報を解析し、需要に応じて最適な配車・ルートを提案する。渋滞緩和やCO2排出削減に寄与する。
DTCは、自社設計によるユニークな電気タクシーの導入準備を進めており、2026年第1四半期にはドバイ国際空港にお目見えし、その後、他の地域にも段階的に導入される予定だ。

3Dプリント製シャーシのフードデリバリー用電気自動車

民間需要では、暑い気象環境のため、フードデリバリー関連の需要も多いという。中国のPIX Beastieは、都市における人々の移動手段を再定義する次世代の小型電気自動車である。AI主導の設計に基づき、画期的なアルミニウム3Dプリント製シャーシを搭載する。先進的なロボット工学と最先端の電気自動車技術を融合させている。

中国XPENG AEROHTの自動車とドローン一体型の「空飛ぶクルマ」

ドバイは交通混雑が慢性化しており、従来型自動車社会の限界が露わになっている。GITEX期間中は特に顕著だ。将来的に、「空飛ぶタクシー」などの新世代モビリティの導入が議論されている。UAE通信大手e&のブースには連携する中国XPENG AEROHTは、自動車の上にプロペラを備えたドローンを一体化した「空飛ぶクルマ」を展示し、来場者の注目を集めた。
GITEX 2025では、都市交通の未来を担う新しいモビリティ技術が数多く披露された。大規模な道路整備が都市としての発展の一つの要因だったドバイだが、従来型の自動車中心の都市交通システムは限界を迎えている。GITEXで披露された、AIや空飛ぶ移動体などの先端技術を融合させた「スマートモビリティ」が急速に社会実装され、スマートシティーに変貌する日も近そうだ。

記事提供元:タビリス