【人インタビュー】誰よりも早くブロックチェーン・仮想通貨の未来を見た藤本真衣氏:世界を変える挑戦と情熱の原点 (下) スイスを拠点に世界へ:ジャパンブロックチェーンウイークが紡ぐエコシステムと未来への提言
2025/10/21 15:35 ジョルダンニュース編集部

効率的な決済システムとプライバシー保護へのこだわり
Q: イントマックスが目指すもの、そして技術的な特徴について、もう少し具体的にお願いします。
A: 私たちが目指しているのは、世界的に最も効率的なペイメントシステムの構築です。現在、メインネットはローンチしており、既にウェブ3に慣れたユーザー間のやり取りでは使われています。具体的には、メインネットローンチから既に約5,000万ドル(約65億円相当)のイーサリアムが、イントマックスのプロトコル(基盤となるルール)に入り、プライバシーが保護された状態になっています。
特徴は、ガス代が安いだけでなく、プライバシーもちゃんと担保していることです。既存のブロックチェーンでは、トランザクション(送金)データが世界中の誰でも見えてしまい、自分の残高や何に使ったかが知られてしまいます。これは日常使いでは気持ち悪いですし、将来的に安全ではありません。私たちイントマックスは、これを見越した上で、誰もがプライバシーが守られた状態で使えることを重視しています。
また、今後ローンチするプロダクトとして、仮想通貨決済を導入したい会社が簡単にインテグレート(統合)できるペイメントゲートウェイを開発中です。ウェブ3企業だけでなく、一般企業が簡単に導入できるパッケージを提供することで、マーチャント(販売者)への普及を目指します。

スイスを選んだ理念と資金調達の背景
Q: イントマックスの拠点はスイスとのことですが、シンガポールやドバイではなく、スイスを選ばれた理由は何でしょうか?
A: スイスを選んだ理由は、いくつかあります。まず、スイスはクリプトやイノベーションに対する理解が深く、私たちが大事にしているプライバシーの概念も、「大事だよね」と理解してくれる土壌があります。
また、私たちはプロトコル(基盤技術)を作るチームなので、永世中立国であるスイスのイメージが、私たちが目指す「中立で分散している」という理念に最もフィットしました。あとは、私たちがスイスに移住したのが4年前(2021年)で、当時は日本の暗号資産の期末課税(含み益への課税)がまだ解決されていない時期でしたので、会社を長期で運営していく上で、税制面での日本のデメリットも考慮する必要があったというのも正直あります。シンガポールとドバイと比較検討した結果、規制が急に変わるような安定していないところを懸念し、中立的で安定しているスイスを選択しました。

チームメンバーは、私を含めて約15名で、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアと世界中に散らばっています。メンバー集めは、特に立ち上げ期に時間をかけて現地(アフリカやラテンアメリカなど)に赴き、文化の違いも含めて信頼できる人を見極めました。最初に丁寧に人選したため、現在、信用できるメンバーが残っている、という状況です。
ジャパンブロックチェーンウィーク:エコシステムを育む土壌作り
Q: もう一つの大きな活動として、ジャパンブロックチェーンウィーク(JBW)について、その役割と今後の展望をお聞かせください。
A: JBWは、私が長年ボランティア的に行ってきたエコシステム育成活動から生まれました。サポートしている企業が日本の皆さんに知ってもらえる土壌を作りたいと考えるようになり、2018年にブロックチェーンゲームカンファレンス東京を始めたのが土台です。
その時々のホットなテーマに合わせたカンファレンスを毎年開催してきましたが、コロナ禍が明けて大きなイベントが増えたタイミングで、海外からの来日者を考え、時期をまとめて一気にやろうと。そうして誕生したのがジャパンブロックチェーンウィークというコンセプトです。今年はAIも外せなかったので、「ジャパンブロックチェーンウィークサミット AI Edition」という形で開催しました。今年の見どころは、Web3業界を代表するトップクラスのAI関連プロジェクトだけでなく、NVIDIAをはじめとする大手AI企業も登壇したことでした。

JBWはブロックチェーンコミュニティ全体の底上げ活動であり、来年(2026年)もAIエディションとして7月に開催する予定です。今後10年はAIから目を離せないと考えており、ブロックチェーンにAIをミックスすることで、技術的に最先端を見ている優秀な人材をクリプト界隈に取り込みたいという狙いもあります。
日本と世界のクリプトの未来:社会貢献への期待
Q: 15年近くこの業界に関わってこられた中で、ブロックチェーン技術が世界や日本に与えた影響をどのように評価されていますか?また、今後、期待することは何でしょうか?
A: 世界的に見ると、クリプトは人類のレベルをワンランク上げたという側面があると思います。銀行口座が作れない人たちが、クリプトのおかげで海外の仕事を受けたり、生活レベルが向上したりといった、世界的な貢献は結構あると感じています。例えば、ナイジェリアでは、英語が話せるのに海外からお金を受け取る手段がなかった若者たちが、クリプトのおかげで仕事を受けられるようになっています。
ただ、私が当初抱いた「世界が変わる」という理想は、まだ道半ばです。もっと社会のために役に立っていると思えるような、お金儲けだけではないプロジェクトが今後、さらに必要だと感じています。私自身がそれを実現するためにやっているのがイントマックスでもあります。プライバシーの大事さや分散性の大事さにもう一度立ち返って、人まかせにせず、自分たちでやっていきたいと思っています。

日本国内でみると、ブロックチェーンや仮想通貨があったおかげで「すごく変化があった!良かった!」というインパクトはまだ実感しにくいかもしれません。それは、日本人が他の国のように生活に困窮している状況にないから、恩恵を感じにくいという側面もあるでしょう。ただ、クリプトは、若者にグローバルにチャレンジするチャンスを与え、チャレンジ精神を植え付けているという点では、良い影響を与えていると思います。
イントマックスとしては、今年中にペイメントゲートウェイをローンチし、世界的な決済として使い始められることで、真に分散性と公平性が実現したブロックチェーンを世界に届けることを目標に、引き続き活動していきます。









