グローバル・ブレイン、「AIドリブンVC」への変革目指す 百合本代表、運用中ファンド残高4000億円超を達成 ディープテック投資を強化
2025/12/17 13:40 ジョルダンニュース編集部

日本を代表する大手ベンチャーキャピタル(VC)のグローバル・ブレイン(GB)は12月5日、同社の年次カンファレンス「GBAF2025」で今後の成長に向けた新戦略を発表した。百合本安彦代表取締役社長が講演し、明らかにした。同社の運用中ファンド残高は今年、4042億円という規模に達した。フラッグシップファンドに加え、CVCファンド20社、共同投資事業2社の合わせて22のファンドを運営する。2001年の初ファンド(10億円)から約400倍という驚異的な成長を遂げてきた。来年も300億円規模のフラッグシップファンド設立を目指す。百合本氏は、こうした実績を背景に、AIの全面実装とディープテック領域での優位性を核とした、次なる成長戦略も提示した。

同社の投資実績について、百合本氏は強い自信を示した。国内シリーズA以降の全投資ステージで90%以上のカバレッジを達成し、圧倒的な案件ソーシング力を誇る。
個別の投資案件でも大きなリターンを実現している。2016年のファンドから投資した、暗号資産取引所「Upbit」を運営するDunamu社のM&Aでは、巨額のキャピタルゲインを得る見込みだ。Dunamu社については、韓国Naverの決済子会社Naver Financialが先日、株式交換で買収すると発表した。韓国金融監督院の電子公示システム(DART)への届出によると、株式交換による合併の取引規模は約103億ドルに達する。

さらに、同社の複数のファンドはグローバル・トップティアVCのパフォーマンス指標において最高水準にあり、「投資環境が変わっても基本的にはいいパフォーマンスを残せるという再現性」を実現していると強調した。2023〜2025年のIPO数も14社で世界トップクラスだ。
こうした順調な投資成績は、充実した社内体制が支えている。キャピタリスト76名、支援チーム42名(年内に50名体制へ)は国内トップだ。それぞれ、世界第4位と3位であるという。拠点数10カ所は世界2位、バックオフィスも31名を内部に抱える。バックオフィスを創業以来内製化していることで、「反社会的勢力やマネーロンダリングを完全に排除しきれているという、非常に大きな優位性がある」と百合本氏は述べた。

今後の戦略の柱として、同社は「AIドリブンVC」への変革を掲げ、AIエージェントの業務への全面実装を進める。AIを活用することで、投資検討における情報検索や分析時間を大幅に短縮し、意思決定の高速化と精度向上を図る。これにより、投資実行の件数を現在の170件から2027年までに250件へ、年間スクリーニング数を5000件から2027年に約3万件へと大幅に増加させる。競合に対して圧倒的な優位性を構築できたという。既に初期検討AIエージェントや顧客向け事業探索支援AIなどの開発が進んでおり、来年から順次導入する予定だ。
AIや量子コンピューター、半導体といったディープテック領域を重点分野と定め、国内最強VCを目指す。キャピタリストの34%がディープテックを担当している。博士号取得者や研究者、エンジニアなどである。論文などを基にした調査で、有望な研究者・教授との連携を強化し、現在までに55社の大学発スタートアップへ投資している。知財チーム(元大手企業知財部門出身者)がIP戦略を、GRチーム(元経産省出身者など)が規制対応や補助金申請を支援することで、ディープテック企業特有の課題を多角的にサポートする体制を確立したという。

さらに、VCの枠を超え、プライベート・エクイティ領域にも乗り出す。グロース市場の上場企業の時価総額が伸び悩んでいる現状を受け、IPO後の企業や大企業のカーブアウト・セカンダリー売却案件などを対象としたPost-IPOビジネスも手がける。ただ、「スタートアップという軸は決してずらさないようにしていきたい」と、あくまでスタートアップエコシステムを軸とした展開であることを強調した。
一方で、CVC As A Serviceを展開し、CVCを運営する企業向けにグローバル・ブレインのノウハウをシステムや研修、M&A支援を通じて提供する。
百合本氏はまた、次世代VC起業家育成のための「百合本塾」などを通じたスタートアップエコシステムへの貢献も継続するとともに、次期フラッグシップファンドも現行ファンドと同額の300億円規模で募集する方針を表明した。これはファンドのパフォーマンスを考えるうえで適切な規模であり、投資家へのリターン最大化を追求する意思の表れだ。目標リターンは引き続きグローバルトップ水準の維持を目指す。
百合本氏は、これらの戦略について「市場を変えていくような戦略であり、2026年はチャレンジングな年になる」と結んだ。









