東京、世界2位へ躍進 世界の都市総合力ランキング 2025、成長の鍵は9位のスタートアップ

ジョルダンニュース編集部

森記念財団都市戦略研究所がこのほど発表した「世界の都市総合力ランキング 2025(GPCI-2025)」において、東京はニューヨークを抜き、調査開始以来初となる総合2位に浮上した。今回のランキングでは気候変動やインフレへの対応力がスコアを大きく左右しており、東京は特に「文化・交流」や「居住」の分野で高い評価を獲得した。一方で、今回から本格的に導入された「スタートアップ・エコシステム」の視点では、スタートアップ数の劇的な伸びといったイノベーションの兆しが見えるものの、人材育成やビジネス環境の整備といった根深い課題も浮き彫りとなっている。2026年、さらにランキングを上げるには、スタートアップを含む「研究・開発」の向上が重要だ。

東京は2位に浮上した(イメージ写真)

東京がニューヨークを逆転した最大の要因は、圧倒的な「生活の質」と「観光資源の充実」にある。東京は「居住」分野で初めて世界1位を獲得しており、飲食店の多さや働き方の柔軟性の向上が高く評価された。深刻なインフレによる物価上昇でニューヨークが同分野のスコアを大きく落としたのに対し、東京は相対的な物価水準の低さや治安の良さが追い風となり、人や投資を惹きつける「磁力」を強めている。

さらに、環境意識の高まりを反映した指標再編も東京に有利に働いた。新設された「企業のサステナビリティ評価」において、東京は世界2位という極めて高い評価を受け、「環境」分野の順位を昨年の18位から7位へと一気に押し上げた。小池知事が指摘するように、こうした優れたGX(グリーントランスフォーメーション)技術や清潔な街並みは、東京が世界に誇る新たな強みとなっている。

調査対象48都市の概要(出所 森記念財団都市戦略研究所)

今年初めて実施された「世界の都市総合力ランキング スタートアップ・エコシステム」において、東京は世界9位、アジアではシンガポールに次ぐ2位にランクインした。特筆すべきは、スタートアップ数が大幅に増加したことで「起業ダイナミズム」グループにおいて世界4位の評価を得た点である。これは、イノベーションを生み出す土壌が急速に整いつつあることを示唆している。

この環境を支えているのは、世界トップクラスの「企業集積」と「資金調達環境」だ。個別指標では「世界トップ500企業」が3位、「ミドル&レイターステージの調達規模」および「投資主体数」がそれぞれ4位を記録した。既存の経済基盤を活かした事業拡大の可能性において、東京はロンドンやパリに引けを取らない実力を発揮している。

スタートアップの指標は「研究・開発」に含まれる (出所 森記念財団都市戦略研究所)

しかし、エコシステムを維持・発展させるための「ソフト面」には依然として大きな障壁が残る。東京は、起業家を育てる「起業人材・教育環境」で27位、インフラやコスト面を含む「起業促進環境」で21位と、トップ10都市の中で下位に沈んだ。デジタル人材の教育体制や他国と比較した賃金水準の低さ、ICT環境の充実度などが、優秀な人材を獲得・定着させる上でのボトルネックとなっている。

東京が総合2位の座を不動のものにし、首位ロンドンを追撃するためには、現在の強みである「文化」や「居住性」をいかに「ビジネスの爆発力」に変換できるかが問われている。今後は法人税率の引き下げやワークプレイスの充実といった参入障壁の緩和を進めると同時に、積極的な人的投資を通じて、世界中から高度人材が集まり自由にイノベーションを育める環境を構築することが不可欠である。

記事提供元:タビリス