2025年の国内IPO、スタートアップ上場は半減 大企業含む全体の資金調達額は1兆円突破 「大型案件」が市場を牽引
2025/12/30 2:27 ジョルダンニュース編集部

2025年の国内スタートアップ企業による新規株式公開(IPO)は、前年までの「量」を追う展開から、市場環境と成長性を厳しく問われる「質」への転換が鮮明となった。東京証券取引所の資料によると、新興企業向けであるグロース市場への上場社数は23社にとどまり、前年の50社から大幅に減少した。第4四半期(10〜12月)には、特徴的なスタートアップの上場が相次ぎ、今後の市場活性化に向けた明るい兆しも見えている。

2025年のグロース市場は、上半期を中心に株式市場の先行き不透明感が漂ったことから、多くの上場準備企業が様子見姿勢を強めた。スタートアップが上場した「後」の成長をより強く求める制度改革の年でもあった。東証は12月8日に、グロース市場の上場維持基準の規則改正を施行した。これは「高い成長を目指した経営」を強力に促すもので、上場企業に対して成長戦略のアップデートや開示の充実を要請している。上場5年後までに時価総額100億円を達成を求められたことで、スタートアップ経営者や証券会社やベンチャーキャピタルなどの関係者が上場に対して及び腰になったことも影を落とした。
上場したスタートアップの顔ぶれを見ると、従来型のITサービスだけでなく、高い技術力を背景としたディープテック(深層技術)や、社会課題解決型の企業が目立った。具体的には、8月に上場した小型衛星の設計・製造を手掛けるアクセルスペースホールディングスや、12月に上場した大型蓄電池を製造するパワーエックスなど、宇宙やエネルギーといった大規模な設備投資を必要とする分野の企業が株式公開に踏み切った。また、製造業向けAIサービスを展開するフツパーなど、AI(人工知能)を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)支援企業も存在感を示した。
四半期別の推移をみると、第1四半期は5社、第2四半期は4社、第3四半期は5社と低調に推移していたが、第4四半期には19社が上場を果たし、前年同期(13社)を上回る活況を呈した。グロース市場におけるファイナンス(資金調達)規模は、中央値で約31.1億円と、小規模な案件も多い中で、11月に上場した総合コンサルティングのノースサンドが調達した金額は221.8億円と今年のグロースで最大だった。企業の成長フェーズや資金需要に応じた二極化が進んでいる。

特定投資家(プロ投資家)向けの株式市場TOKYO PRO Marketの存在感も増している。一般市場(プライム、スタンダード、グロース)とは異なり、投資家を限定することで、柔軟な上場基準や開示規則が適用されている。2025年の新規上場社数は、一般市場のみでは66社にとどまったが、TPMなどのプロ向け市場を含めると計110社にのぼった。
地域経済の担い手である地方スタートアップの動きも無視できない。一般市場での上場は東京に集中しているが、TOKYO PRO Marketを活用する地方企業が増えている。関西ではTPMを含む新規上場が19社に達し、前年の13社から増加した。まずプロ向け市場でガバナンスを整え、その後にグロース市場などの一般市場へ「ステップアップ上場」を目指す流れが、地方の有望なスタートアップの間で定着しつつある、と東証は見ている。
市場全体で見ると、2025年の国内新規株式公開(IPO)市場は、上場社数こそ伸び悩んだものの、大型案件の相次ぐ登場によって資金調達額が劇的に拡大する「質への転換」を象徴する一年となった。一般市場への新規上場社数は66社と前年の86社から減少した一方で、ファイナンス総額(公募・売出の合計)は前年比約33%増の約1兆2956億円に達し、2018年以来、7年ぶりに1兆円の大台を突破した。
この規模拡大の主因は、プライム市場における超大型案件の存在だ。特に9月に上場したソニーフィナンシャルグループ*は、初値ベースの時価総額が約1兆4656億円に達し、2022年の市場再編後で最大の時価総額を記録した。また、3月に上場したJX金属のファイナンス額は約4386億円となり、資金調達規模では市場再編後で最大の案件となった。12月に 再上場したSBI新生銀行も、初値時価総額で約1兆4202億円だった。









