今年のテックトレンド 知的変革、長寿、未来のエンジニアリングが3本柱 CES主催者が分析
2026/1/14 1:41 ジョルダンニュース編集部

全米民生技術協会(CTA)は、世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」の開幕に先立ち、今年の技術トレンドを展望する「Tech Trends to Watch」を発表した。登壇したCTAのイノベーション&トレンド担当シニアディレクター、ブライアン・コミスキー氏は、今年のCESを貫く最大のテーマとして「インテリジェント・トランスフォーメーション(知的変革)」を掲げた。人工知能(AI)が実験室を飛び出し、産業の現場や個人の身体、そして社会インフラそのものへと深く浸透していく「質的な転換」である。

コミスキー氏は、今年の技術潮流を読み解くための3つの柱として、「インテリジェント・トランスフォーメーション」、「ロンジェビティ(長寿)」、「エンジニアリング・トゥモロー(未来のエンジニアリング)」を提示した。これらは単独で存在するのではなく、相互に作用しながら社会課題の解決を目指す動きとして描かれている。コミスキー氏は出展事例を引き合いに出しながら、説明した。
第一の潮流である「インテリジェント・トランスフォーメーション」は、過去20年間のクラウド化を中心としたデジタル・トランスフォーメーション(DX)に続く、新たな産業革命の波である。コミスキー氏は、AIがもはや単なる効率化ツールではなく、パートナーとしての地位を確立しつつあると指摘する。その象徴が「エージェント型AI(Agentic AI)」への進化だ。
従来の生成AIがユーザーの指示を待つ受動的な存在だったのに対し、2026年のAIは自律的に行動を開始する。コミスキー氏は「これまでのAIへの指示は『メールの下書きを書いて』というものだったが、これからは『今日の受信トレイを管理して』と頼むようになる。AIが主導権を持ってタスクを遂行する」と述べ、AIが人間の意図を汲み取り、能動的に実務を代行する段階に入ったことを強調した。

さらに重要な変化は、AIがデジタル空間から物理世界へと進出する「フィジカルAI」の台頭だ。UnitreeやSharpaといった企業が展示するヒューマノイドや産業用ロボットは、AIの視覚・言語能力を取り込み、複雑な環境下での自律動作を可能にしている。また、Siemens(シーメンス)は産業用メタバース(デジタルツイン)とAIを融合させ、製造現場やインフラ管理の在り方を根本から変えようとしている。
第二の潮流「ロンジェビティ」は、単に寿命を延ばすことから、健康で豊かな期間を延ばすことへと焦点が移っている。ここでコミスキー氏が特筆したのが「GLP-1経済圏」の出現だ。糖尿病や肥満治療薬として普及するGLP-1受容体作動薬の影響は、医療の枠を超え、フィットネス、食品産業、睡眠市場など、関連する生活産業全体に変革を迫っている。
デジタルヘルス分野では、テクノロジーの役割が「トリアージ(選別)」、「マネジメント(管理)」、そして「エンパワーメント(自律)」へと進化している。WithingsのスマートスケールやOura Ringのようなウェアラブルデバイスは、単なる数値計測にとどまらず、血管年齢や代謝マーカーといった深層的な健康データを可視化する。コミスキー氏は「患者自身が健康管理の責任者となり、心拍数から睡眠の質までをリアルタイムで把握し管理するようになる」と語り、医療の主導権が個人へとシフトする未来を示唆した。また、住空間も「ホーム・ヘルス・ハブ」へと進化し、スマートホーム機器が居住者の健康と安全を見守るプラットフォームとしての機能を強めている。
第三の潮流「エンジニアリング・トゥモロー」は、テクノロジーによる社会基盤の再構築を指す。モビリティ分野では「SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)」が定着し、自動車はハードウェアの性能だけでなく、ソフトウェアによって機能が更新され続けるプラットフォームへと変貌した。Bosch(ボッシュ)やQualcomm(クアルコム)などが参画し、安全性と高度なパーソナライゼーションを両立させる技術開発が進んでいる。

また、この潮流はホワイトカラーの仕事だけでなく、農地や建設現場といった第一次・第二次産業の現場でも顕著だ。John Deere(ジョンディア)の自律走行トラクターやDoosan(斗山)の無人建設機械は、AIとロボティクスを駆使して労働力不足を補い、生産性を飛躍的に向上させている。エネルギー分野においても、電動化(EV)に加え、送電網の近代化や、小型モジュール炉(SMR)、水素エネルギーといった次世代電源への投資が加速しており、テクノロジーが気候変動対策の実働部隊として機能し始めている。
講演の締めくくりとして、コミスキー氏はCES 2026が示す未来像を次のように総括した。「インテリジェント・トランスフォーメーションが経済を再形成し、ロンジェビティがより長く、健康的で豊かな生活を可能にし、エンジニアリングが世界最大の課題に対する解決策を設計する」。テクノロジーはガジェットのスペック競争を越え、人間の生存と社会の持続可能性を支えるインフラとしての「責任」を負う時代に入ったと言える。









