CES2026:モビリティは「AI定義」の時代へ

ジョルダンニュース編集部

世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」では、自動車産業の主戦場が「ソフトウェア定義(SDV)」から「AI定義(AI-Defined)」へと完全に移行した。生成AIは実験室を飛び出し、物理世界で推論・実行する「フィジカルAI」として、車両の設計、製造、そして走行体験そのものを再定義し始めている。

■エヌビディア、「推論」するクルマ

「フィジカルAIにとってのChatGPTのような瞬間だ」。米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・ファンCEOは、自律走行向け基盤モデル「Alpamayo 1」を発表し、こう宣言した。

エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは、自律走行向け基盤モデル「Alpamayo 1」を発表した

従来の高精度マップやLiDAR(ライダー)への依存度を下げ、AIが視覚情報を言語化して状況を理解・推論する「Vision Language Action(VLA)」モデルを採用。これにより、複雑な交通状況下でも人間のような判断が可能になる。独メルセデス・ベンツは、2026年発売予定の次期「CLA」にこの技術を搭載し、都市部での高度な運転支援を実現する。

■著名アーティストも参入、AIエージェントの可能性

 AIの波は、自動車メーカーの枠を超えた異色のコラボレーションも生んでいる。著名ミュージシャンのwill.i.am氏は、カスタムカー製作の米ウェスト・コースト・カスタムズ(West Coast Customs)と提携し、コンセプトEV「Trinity」を披露した。

1人乗り3輪という斬新なデザインのEVは、NVIDIAの「DGX Spark」を活用したAI音声対話機能を搭載。完全自動運転を目指すのではなく、「エージェントAI」がリアルタイムデータに基づいてドライバーを支援するというコンセプトで、AIが運転体験を拡張する新たな方向性を提示した。

著名ミュージシャンのwill.i.am氏が構想するコンセプトEV「Trinity」

■ロボタクシー、「実車」投入の競争激化

自動運転サービスの商用化も新たな段階に入った。米新興EVのルシード・グループは、米ウーバー・テクノロジーズ、自動運転開発の米ニューロと提携し、SUV「Gravity」をベースにしたロボタクシーを発表。数年以内に2万台規模での展開を目指す。

一方、Amazon傘下の自動運転開発企業Zoox(ズークス)も、開催地ラスベガスにて自律走行ライドシェアの実力を誇示した。実験室レベルを超え、公道でのサービス提供を競う「実行フェーズ」への移行が鮮明になっている。

ZOOXは、ラスベガス市内を実際に、客を乗せて走行していた

また、米Tensorは「個人所有」を目的としたレベル4自動運転車を発表。NVIDIAのチップを搭載し、即時反射と推論を使い分けるデュアルシステムで、自家用車市場の無人化にも布石を打った。

CESの新エリア「CES FOUNDRY」に展示されたTensor

■「エージェントAI」が変える車内体験

車内空間では、ドライバーの文脈を理解して能動的に提案を行う「エージェントAI」の実装が進んだ。 独BMWは米アマゾン・ドット・コムの「Alexa Plus」を統合し、自然な対話での車両制御を実現。

アマゾンのブースに展示されたBMWの車両

ソニー・ホンダモビリティは、2028年の投入を目指すSUVタイプの試作車「AFEELA Prototype 2026」を公開し、車内をエンターテインメント空間と定義した。

AFEELAのプロトタイプ

■日本のティアフォー、自動運転レベル4+の実現に向けたAIを展示

自動運転の民主化をビジョンに掲げるティアフォー(東京・品川)は、今回で6回目の出展。同社が提唱する自動運転レベル4+の実現に向け不可欠なエンドツーエンド(E2E)AIを展示した。

ティアフォーのモデル車両

CES 2026は、AIが単なる「機能」から、車両の設計、製造、そしてユーザー体験のすべてを定義する「コアインフラ」へと昇華したことを決定づけた。

記事提供元:タビリス