ぐるなび、対話型AI「UMAME!」で挑む脱検索 創業30年の刷新、若年層・訪日客の「今」を捕捉
2026/1/30 11:53 ジョルダンニュース編集部

飲食店紹介・予約サービスのぐるなびは1月20日、生成AI(人工知能)を活用した次世代の飲食店提案アプリ「UMAME!(ウマミ)」の提供を正式に開始した。ユーザーの過去の行動や好みを学習した「AIエージェント」が、検索行為を介さずに最適な店舗を提示する「No Search(検索しない)」体験を掲げる。1996年の創業から30年目を迎える同社は、杉原章郎社長の指揮下で全社的なAIシフト「ぐるなびNextプロジェクト」を推進しており、本アプリをその象徴的なサービスと位置づける。既存の検索型グルメサイトが抱える課題を技術で突破し、「探す外食から、出会う外食」へのパラダイムシフトを目指す。

杉原社長は同日開催された発表会で、「電話帳をヒントに生まれた30年前の創業時から、飲食店を立地から解放し、人と店の出会いを作るというDNAは変わっていない」と強調した。その上で、生成AIという技術的特異点を得たことで、サービスが新たな進化のフェーズに入ったと説明する。同社は2024年夏から社内外でAI活用を加速させており、新アプリは単なる店舗検索ツールではなく、ユーザー一人ひとりの食の嗜好を深く理解するパートナーとしての役割を担う。

開発を主導した岩本俊明最高技術責任者(CTO)は、新アプリの最大の狙いを「リアルタイムなウォークイン(予約なし来店)市場の開拓」と説明する。既存の主力サービス「楽天ぐるなび」が、大人数での宴会や接待、記念日といった「失敗できない予約」や事前計画型の利用に強みを持つのに対し、「UMAME!」は二次会需要や急なランチ、あるいは街歩き中の直感的な店選びなど、「今すぐ」のニーズに特化する。デジタルネイティブである35歳以下の若年層が抱える検索疲れや、日本のローカルな食体験を求めるインバウンド(訪日外国人)の需要を取り込み、両サービスの役割を明確に分けることでグループ全体での相乗効果を狙う。

技術的な基盤には、複数のAIが協調して動作する「エージェンティックAI(Agentic AI)」を採用した。岩本CTOによると、2025年1月から約1年間実施したベータ版の運用では、当初の想定通りの結果が得られない苦難もあったという。ユーザーは「銀座 寿司」といった従来のキーワード検索の癖が抜けず、単純なプロンプトエンジニアリングだけでは文脈を十分に汲み取れなかったためだ。そこで開発チームは2025年9月頃からシステムを全面的に刷新。ユーザーとの対話履歴や、「喫煙から禁煙へ」といった好みの変化を「メモリ(記憶)」として保持し、複数のAIエージェントが連携して推論する仕組みを構築した。これにより、アプリを開いた瞬間に、その人のその時の文脈に合致した店舗が提案される体験を実現した。

提案の精度を支えるデータ基盤も大幅に強化された。AIがユーザーの多種多様なニーズに応えるためには選択肢の豊富さが不可欠であるとして、対象となる店舗情報を従来の約42万店から約59万店へと拡充した。これには加盟店以外の情報も含まれており、外部データとの連携を通じて情報の鮮度と網羅性を担保している。岩本氏は「AI時代だからこそ、正確で豊富なデータを持つことの価値が高まる」と指摘する。
今後の展開として、急速に回復するインバウンド需要への対応を急ぐ。2026年3月を目処に英語版のリリースを予定しており、将来的には多言語対応を進めることで、言葉の壁を越えたボーダレスな食体験の提供を目指す。岩本氏は「海外のユーザーが自国の言語でOSを使っていれば、自動的にその言語で日本のローカルな店が提案される世界を作りたい」と意気込む。また、中長期的には他社のAIエージェントとも連携可能な「A2A(Agent to Agent)」の構想も掲げており、予約サービスや配車アプリなどのAIと連携し、食体験を中心とした広範なプラットフォームへの進化を視野に入れている。

収益モデルについては、当面はアプリ単体での課金や広告収益よりも、ユーザー体験の向上とデータの蓄積を優先する方針だ。蓄積された高精度なパーソナルデータや行動履歴は、加盟店のマーケティング支援や業務効率化に還元されるほか、将来的には「楽天ぐるなび」への送客や、インバウンド向けの付加価値サービスとしてのマネタイズも検討される。AIネイティブ企業への変革を掲げるぐるなびが、30年目の挑戦として放つ「UMAME!」は、飽和しつつあるグルメサイト市場に新たな潮流を生み出せるか、その真価が問われることになる。









