ドコモベンチャーズ、新ファンド150億円設立 Z・α世代やAI領域に重点 ドコモ前田社長「単独では不十分」、データ基盤生かしスタートアップ共創急ぐ

ジョルダンニュース編集部

NTTグループのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるNTTドコモベンチャーズは、2026年2月19日にスタートアップ企業との協業を推進するイベント「NTT DOCOMO VENTURES DAY 2026」を開催した。同社は新たに150億円規模の「ドコモ・イノベーションファンド4号」を設立し、AI(人工知能)や次世代のコミュニケーション領域への投資を加速する。NTTドコモが持つ1億人規模の顧客データとスタートアップの機動力を掛け合わせ、激化する競争環境を勝ち抜くためのオープンイノベーションを急ぐ構えだ。

「未来から逆算」、運用総額1200億円でAIや東南アジアに積極投資

NTTドコモベンチャーズの安元淳COOによると、同社の累計運用総額は国内CVCとして最大級の1200億円に達する。これまでの投資件数は223件に上り、海外比率は45.7%を占めている。直近1年間だけでも24件、約64億円をコミットしており、安元COOは「月に2件のペースで出資しており、順調にポートフォリオへの組み入れができている」と自信をのぞかせる。

4号ファンドを設立し、累計の運用総額は1200億円となった。説明する安元COO

2026年1月に新たに設立した「ドコモ・イノベーションファンド4号(DI4号)」は、ファンド総額150億円、運用期間10年間で組成された。投資戦略について安元COOは、「ドコモグループが2030年など中長期で目指す姿から逆算し、どのような社会変化や技術革新が起こるのかをターゲットにしながら出資先を探索している」と説明する。具体的には、「新たな“つながり”を創りつづける」をテーマに掲げ、「AI」「Communication & Community」「Entertainment」「Resilience」「Social Impact」の5領域を注力対象に定めた。また、東南アジアでの協業創出を目指し、NTTファイナンスと共同で1000万米ドル(約15億円)規模のスタートアップ投資ファンドも立ち上げている。

同社の笹原優子社長(CEO&CCO)は、「スタートアップの構想実行力とNTTグループの社会実装力を束ね、世界の景色を変える」とミッションを語り、新事業創出における「ワクワクしワクワクさせる」といったカルチャー醸成の重要性を強調した。

笹原CEO&CCOは、新事業創出への意気込みを語った

ドコモ前田社長、プラットフォーム回帰へ「スタートアップの力不可欠」

パネルディスカッションに登壇したNTTドコモの前田義晃社長は、「スピーディなAI時代において、単独企業で価値を生み出し続けるのは非常に難しい。ドコモ単独では全く十分ではないという危機感がある」と吐露し、スタートアップとの共創が不可欠との認識を示した。

NTTドコモの前田社長は、スタートアップとの共創が不可欠との認識を示した

ドコモは「iモード」時代にプラットフォームの中心でエコシステムを築いたものの、スマートフォン時代にはグローバル企業に覇権を奪われ、サービス提供者へと立ち位置を変えざるを得なかった過去がある。しかし、現在は約1億人の会員基盤を持つ「dポイント」や「d払い」といった決済データなどを活用し、再びデータ駆動型のプラットフォームへの回帰を図っている。前田氏は、これらの膨大な顧客データやインフラをスタートアップに開放・連携させることで、AIエージェントをはじめとした多様な価値を迅速に提供していく方針を示した。

ドコモは長年、オープンイノベーションに熱心だった

Z世代向けSNSやロボットなど、多様な投資先と協業

発表会では、具体的な投資先との協業事例や新規出資も明らかになった。

直近1年間では、1カ月に2件のペースで投資している。説明する安元COO

DI4号ファンドからの新規案件として、位置情報共有アプリ「whoo(フー)」を提供するLinQ(リンキュー、東京・渋谷)への出資を発表した。同アプリは仲の良い友人と位置情報を共有するもので、Z世代を中心に月間600億件の位置情報データを取得し、グローバルで累計3000万ダウンロードを突破するなど急速に成長している。

また、Z世代向けにオンラインのたまり場アプリを提供するパラレルとは、ドコモが持つコンテンツと掛け合わせ、デジタル上での「共視聴」などの体験価値を高める取り組みを進めている。

一方、法人や社会インフラ領域では、ロボティクスプラットフォームを展開するugo(ユーゴー)との協業が進んでいる。NTT西日本グループにOEM提供され、商業施設等へのAIロボティクス導入が決定しており、安元COOは「NTTグループのプロダクトにスタートアップの技術が組み込まれて提供できている、良い事例だ」と評価した。

記事提供元:タビリス