半導体からAIまで守る新会社「GMOプリファード・セキュリティ」設立――産官学トップが議論する「AI前提時代」の防衛

ジョルダンニュース編集部

GMOインターネットグループは2026年3月5日、AI開発を手掛けるPreferred Networks(PFN)などとの合弁による新会社「GMO プリファード・セキュリティ」の設立を発表した。半導体の設計段階からAI環境まで一貫してセキュアな基盤を構築する。同日都内で開催された日本最大級のサイバーセキュリティカンファレンス「第3回 GMO 大会議・春・サイバーセキュリティ2026」で発表した。政界の要人や企業のトップらが、日本の安全保障や企業経営における実践的なサイバー防衛策について活発な議論を交わした。

GMO第会議は3回目の開催

「セキュリティといえばGMO」へ、新会社の狙い

新会社の事業の根幹について、GMOインターネットグループの熊谷正寿グループ代表は「ゆくゆくは日の丸半導体で、国の情報を守る。3年後、5年後には『セキュリティといえばGMO』と思っていただけるようにしたい」と意気込みを語った。また、「一番お客様に喜んでいただけるサービスを作り、その結果としての利益だ」と自身の経営哲学を披露した。さらに脅威を増すAIを用いた攻撃に対し、「AIを駆使するハッカーを退けるのもまた、我々ホワイトハッカーのAIの使い方次第だ」と呼びかけた。

GMOインターネットグループの熊谷正寿グループ代表(写真はいずれも主催者提供)

政府の危機感と「能動的サイバー防衛」の明言

サイバー攻撃が国家の安全保障に直結する中、政府からも強い危機感と新たな方針が示された。高市早苗内閣総理大臣のメッセージでは、「昨年、サイバー対処能力強化法が成立するとともに、新たなサイバーセキュリティ戦略を策定した」と報告され、「攻撃は自分ごと」として、国民全体の意識向上を求めた。小泉進次郎防衛相もビデオメッセージで「能動的サイバー防衛関連法により、自衛隊はアクセス無害化措置という新たな任務を担う」と明言し、民間や学術機関の知見の結集を強く訴えた。

AIファーストの「爆速経営」を支えるガードレール

パネルディスカッションでは、LINEヤフーの川邊健太郎代表取締役会長とBoost Capitalの小澤隆生代表取締役が登壇した。AIを活用したコード生成が急速に普及する現状について、小澤氏は、「アメリカで流行っているサービスがあると、すぐに(真似て)AIで昨日作っただろうというようなプロダクトを持ってくる(起業家がいる)」と指摘し、スピードの裏に潜むセキュリティリスクを指摘した。これに対し川邊氏は、予測不可能な状況下での経営として「人間がポリシーとしてガードレールを設定し、良いブレーキはAIを使って行うシカ愛」と述べ、人間によるルール設定とAIによる制御の組み合わせで、爆速経営と堅牢な守りの両立は可能であるとの見解を示した。

Boost Capitalの小澤隆生代表取締役

生成AI時代のプログラミングと平時からの経営的判断

シンギュラリティ・ソサエティの中島聡代表理事(オンライン登壇)とKADOKAWAの夏野剛取締役・代表執行役社長CEOによる特別対談では、AIがもたらす新たなリスクが議論された。中島氏は、AIを用いたプログラミングについて「よくわかっていない人が大量に入れ、いつか事故が起こる」と警鐘を鳴らした。一方、夏野氏は、AIによってフィッシング詐欺などが極めて巧妙化している現状を指摘した。経営者としては技術的防御だけでなく、「事態が起こった時にどう対処するかを、あらかじめ取締役会レベルで決めておくこと」が重要だと語り、ランサムウェアへの支払い禁止の法制化に関する議論など、実務責任者ならではの苦悩と平時からの経営判断の重要性を説いた。

KADOKAWAの夏野剛取締役・代表執行役社長CEO

将来戦の姿と「国産AI基盤」、そして信頼関係の構築

軍事やインフラの専門家が将来のサイバー戦を展望したセッションでは、陸上自衛隊の小山直伸・教育訓練研究本部研究部長陸将補が、将来の戦いはAIと無人機により「極めて早い速度で連続した攻撃」になると予測し、AI自体の脆弱性(データポイズニングなど)への対策も急務だとした。経済産業省の奥家敏和大臣官房審議官は、「サイバーとフィジカル空間が一体化した時のセキュリティマネジメント」の重要性を指摘した。

陸上自衛隊の小山直伸・教育訓練研究本部研究部長陸将補

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の伊東寛主席研究員は、ロシアが実際の攻撃の前にサイバー空間で「試し打ち」を行っていたデータを示し、堅牢な防衛網を築くための産官学連携が必要だと強調した。 新会社の共同創業者でもあるPreferred Networksの岡野原大輔代表取締役社長は、半導体の設計段階での意図しないバックドア混入リスクなどに触れ、データ学習の段階から信頼のチェーンを繋いだ「国内の自立的な体制」を構築する重要性を強く訴えた。

Preferred Networksの岡野原大輔代表取締役社長

記事提供元:タビリス