アステリアとJPYCが連携、ステーブルコインで企業向け決済網4月開始 AI経済見据え次世代の財務DX牽引
2026/3/9 12:02 ジョルダンニュース編集部

ソフトウェア開発のアステリアは2月27日、日本円連動型ステーブルコインを発行するJPYC(東京・千代田)と連携し、企業システムとステーブルコインを接続する新インフラ「JPYC Gateway」を4月1日から提供開始すると発表した。さらに、自社勘定で10億円分のJPYCを保有し、企業間決済におけるステーブルコインの普及を自ら後押しする。
同日、ザ・プリンス パークタワー東京で開催された次世代金融カンファレンス「MoneyX(マネーエックス)」のトークセッションに、アステリアの平野洋一郎社長とJPYCの岡部典孝代表が登壇。将来の「AIエージェント経済」を見据えた次世代の財務DXやステーブルコインの展望について熱弁を振るった。

送金手数料は一律8円、既存システムと連携
新サービス「JPYC Gateway」は、すでに1万社以上で導入されているアステリアのデータ連携ソフト「ASTERIA Warp」を通じて、企業のERP(統合基幹業務システム)や会計システムとJPYCをノーコードで接続する。これにより、リアルタイムでの企業間決済が銀行のオンラインバンキングと同等以上の使い勝手で可能になる。
平野社長は、送金手数料の圧倒的な安さを強調し、「1000万円送ろうが1億円送ろうが8円です」と語った。また、企業が安全に導入できるよう、先着100社には国内開発のハードウェアウォレット(コールドウォレット)を無償で提供するという。

お手本になるべく、JPYC10億円保有方針
国内のプライム上場企業として異例の取り組みとなるのが、自社勘定による10億円分のJPYC保有だ。平野社長は「他社は使っているのかと企業のCFO(最高財務責任者)は聞く。なかなか日本の企業はファーストペンギンになりにくい」と日本のビジネス環境の課題を指摘。自ら率先して支払いや受け取りにJPYCを使用することで、ロールモデルになり、他の企業が取り組みやすくする狙いを明かした。両社は今月上旬に資本業務提携の合意も発表しており、相互に資本参加して関係を強化している。
JPYCは17.8億円を調達、経済圏の拡大狙う
JPYC側も事業拡大を急ぐ。岡部代表は、アステリアをリード投資家として約17億8000万円の資金調達(シリーズBファーストクローズ)を実施したと明かした。北國銀行のCVC(QR投資事業有限責任組合)やJR西日本イノベーションズ、大手暗号資産取引所のbitFlyerなども参画している。さらに、LINEのウォレットでの正式採用も決まるなど、岡部代表は「一気にJPYCの経済圏は広がる」と自信を見せた。

AIエージェント経済の到来、日本の勝機に
両氏がセッションで最も強調したのが、AIが自律的に経済活動を行う「AIエージェント経済」の到来だ。平野社長は「銀行決済なんてやってる場合じゃない。24時間AIが働いており、少額から高額まで高速で実行する」と述べ、従来の月ごとの決済や60日後払いといった「前時代的」な仕組みから脱却し、経済の速度を上げる必要性を説いた。
岡部代表も、日本の少子化対策としてのステーブルコインの重要性に言及。「人がAIエージェント10体使って生産性を5倍にする」しか道はなく、AIがやった仕事を人がチェックし、人がやった仕事をAIがチェックする共存モデルが必須になると指摘した。
現状、世界のステーブルコイン市場はドル建てが圧倒的だが、法規制が整っている日本には大きなチャンスがあるという。岡部代表は「金融の方とも話していて、一番理想的なケースでは(世界の)25%を取れる可能性がある」と強気の見方を示し、日本がアジアにおけるステーブルコインのハブとなる未来に期待を寄せた。

【記者の目】保守的な企業風土の打破が試金石に
アステリアが自社勘定で10億円ものステーブルコイン保有に踏み切る意義は大きい。国内のプライム上場企業によるこの異例の決断は、「他社は使っているのか」と横並びを気にする日本企業の保守的な悪弊を自ら打ち破り、実体経済におけるステーブルコインの実需を創出する強い覚悟の表れと言える。世界的にドル建てが圧倒的なシェアを握る中、法規制で先行した日本は今、反転攻勢の好機にある。しかし、そのポテンシャルを活かしきれるかは、旧態依然とした商慣習やレガシーシステムから日本企業全体が脱却できるかにかかっている。単なる決済手段の代替にとどまらず、少子高齢化にあえぐ日本経済の生産性を飛躍させる「起爆剤」となるのか。アステリアという「ファーストペンギン」に続く企業がどれだけ現れるか、日本の真価が問われている。









