グアニン四重鎖構造を持つRNAがおたふくかぜウイルスのRNA合成の場を提供する――おたふくかぜウイルスの封入体形成機構の理解――
2024/12/13 16:55 PR TIMES
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【ポイント】
おたふくかぜウイルス(MuV)は細胞に感染すると封入体と呼ばれる膜のない構造体を形成し、その中でウイルスRNAを合成します。今回、この封入体形成に宿主細胞のグアニン四重鎖構造を持つRNAが重要な役割を持つことを明らかにしました。
MuVの封入体の形成に関与する宿主RNAの特徴を初めて明らかにしました。
封入体形成はMuVだけでなく多くのRNAウイルスで見られる共通機構であり、幅広いRNAウイルスの増殖機構の解明につながることが期待されます。
【概要】
東京大学大学院医学系研究科の竹田 誠教授と加藤 大志准教授、熊本大学生命資源研究・支援センターの沖 真弥教授、九州大学生体防御医学研究所の大川 恭行教授、国立感染症研究所の鈴木 忠樹部長らによる研究グループは、おたふくかぜウイルス(注1)のRNA合成の場である封入体(注2)の形成にグアニン四重鎖構造(注3)を持つRNAが重要な役割を持つことを明らかにしました。
RNAウイルスであるおたふくかぜウイルスは、細胞に感染すると封入体と呼ばれる膜のない構造体を形成し、そこでウイルスRNAを合成します。封入体は液-液相分離(注4)によって形成される液滴と考えられていて、多くのタンパク質や核酸(RNA)が含まれると考えられます。
そこでPhoto-isolation chemistry(注5)によって、おたふくかぜウイルスの封入体に取り込まれる宿主RNAを探索した結果、グアニン四重鎖構造を持つRNAが多く含まれることが明らかになりました。このグアニン四重鎖構造を持つRNAは、液滴形成実験によって液滴内部の分子を濃縮することが示され、効率よくウイルスRNA合成を行う上で重要な役割を果たしていると考えられました。本研究の成果は、封入体の形成メカニズムの一端を明らかにしたものであり、RNAウイルスのRNA合成機構の解明につながることが期待されます。
本研究成果は、日本時間2024年12月7日に米国科学雑誌「Science Advances」に掲載されました。
【用語解説】
(注1)おたふくかぜウイルス (Mumps virus: MuV)
パラミクソウイルス科オルソルブラウイルス属に分類されるRNAウイルス。飛沫などによって伝搬し、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)を引き起こす。
(注2)封入体
モノネガウイルス感染細胞で見られる非膜性の構造体。LLPSによって形成される液滴で、ウイルスRNA合成の場と考えられている。
(注3)グアニン四重鎖構造
グアニン含量の多いDNAおよびRNAにおいて形成される高次構造。遺伝子の発現制御など様々な生命現象に関わることが知られている。
(注4)液-液相分離 (Liquid-liquid phase separation: LLPS)
タンパク質や RNAといった高分子間の多加相互作用により、溶液中に異なる液相が分かれて存在する現象。LLPSに形成される液滴は動的であり、内外の物質が交換される。
(注5)Photo-isolation chemistry (PIC)
目的の細胞集団や微小組織に光を照射し、そこに発現する遺伝子を網羅的に検出する空間的トランスクリプトーム手法。
【論文情報】
雑誌名:Science Advances
題 名:Structural and molecular properties of mumps virus inclusion bodies
著者名: Hiroshi Katoh*, Ryuichi Kimura, Tsuyoshi Sekizuka, Kohei Matsuoka, Mika Hosogi, Yuki Kitai, Yukiko Akahori, Fumihiro Kato, Michiyo Kataoka, Hirotaka Kobayashi, Noriyo Nagata, Tadaki Suzuki, Yasuyuki Ohkawa, Shinya Oki, Makoto Takeda
(*責任著者)
DOI: 10.1126/sciadv.adr0359
▼プレスリリース全文はこちら
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei-sentankenkyu/20241204
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【ポイント】
おたふくかぜウイルス(MuV)は細胞に感染すると封入体と呼ばれる膜のない構造体を形成し、その中でウイルスRNAを合成します。今回、この封入体形成に宿主細胞のグアニン四重鎖構造を持つRNAが重要な役割を持つことを明らかにしました。
MuVの封入体の形成に関与する宿主RNAの特徴を初めて明らかにしました。
封入体形成はMuVだけでなく多くのRNAウイルスで見られる共通機構であり、幅広いRNAウイルスの増殖機構の解明につながることが期待されます。
【概要】
東京大学大学院医学系研究科の竹田 誠教授と加藤 大志准教授、熊本大学生命資源研究・支援センターの沖 真弥教授、九州大学生体防御医学研究所の大川 恭行教授、国立感染症研究所の鈴木 忠樹部長らによる研究グループは、おたふくかぜウイルス(注1)のRNA合成の場である封入体(注2)の形成にグアニン四重鎖構造(注3)を持つRNAが重要な役割を持つことを明らかにしました。
RNAウイルスであるおたふくかぜウイルスは、細胞に感染すると封入体と呼ばれる膜のない構造体を形成し、そこでウイルスRNAを合成します。封入体は液-液相分離(注4)によって形成される液滴と考えられていて、多くのタンパク質や核酸(RNA)が含まれると考えられます。
そこでPhoto-isolation chemistry(注5)によって、おたふくかぜウイルスの封入体に取り込まれる宿主RNAを探索した結果、グアニン四重鎖構造を持つRNAが多く含まれることが明らかになりました。このグアニン四重鎖構造を持つRNAは、液滴形成実験によって液滴内部の分子を濃縮することが示され、効率よくウイルスRNA合成を行う上で重要な役割を果たしていると考えられました。本研究の成果は、封入体の形成メカニズムの一端を明らかにしたものであり、RNAウイルスのRNA合成機構の解明につながることが期待されます。
本研究成果は、日本時間2024年12月7日に米国科学雑誌「Science Advances」に掲載されました。
【用語解説】
(注1)おたふくかぜウイルス (Mumps virus: MuV)
パラミクソウイルス科オルソルブラウイルス属に分類されるRNAウイルス。飛沫などによって伝搬し、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)を引き起こす。
(注2)封入体
モノネガウイルス感染細胞で見られる非膜性の構造体。LLPSによって形成される液滴で、ウイルスRNA合成の場と考えられている。
(注3)グアニン四重鎖構造
グアニン含量の多いDNAおよびRNAにおいて形成される高次構造。遺伝子の発現制御など様々な生命現象に関わることが知られている。
(注4)液-液相分離 (Liquid-liquid phase separation: LLPS)
タンパク質や RNAといった高分子間の多加相互作用により、溶液中に異なる液相が分かれて存在する現象。LLPSに形成される液滴は動的であり、内外の物質が交換される。
(注5)Photo-isolation chemistry (PIC)
目的の細胞集団や微小組織に光を照射し、そこに発現する遺伝子を網羅的に検出する空間的トランスクリプトーム手法。
【論文情報】
雑誌名:Science Advances
題 名:Structural and molecular properties of mumps virus inclusion bodies
著者名: Hiroshi Katoh*, Ryuichi Kimura, Tsuyoshi Sekizuka, Kohei Matsuoka, Mika Hosogi, Yuki Kitai, Yukiko Akahori, Fumihiro Kato, Michiyo Kataoka, Hirotaka Kobayashi, Noriyo Nagata, Tadaki Suzuki, Yasuyuki Ohkawa, Shinya Oki, Makoto Takeda
(*責任著者)
DOI: 10.1126/sciadv.adr0359
▼プレスリリース全文はこちら
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記事提供元:タビリス