日本のスタートアップ、CES2026で受賞相次ぐ AI×ハードウェア、「フィジカル」回帰で存在感

ジョルダンニュース編集部

世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」が1月9日(米国時間)、4日間の会期を終え閉幕した。会期に合わせて発表された「イノベーションアワード」において、日本のスタートアップが躍進を見せた。特にスマートフットウェアを開発する株式会社ORPHE(オルフェ)が、各部門の最上位である「ベスト・オブ・イノベーション」を受賞したことは、デジタル技術が仮想空間から現実(フィジカル)の課題解決へと回帰する世界的潮流の中で、日本の「ものづくり×AI」が高い評価を得たことを象徴する出来事となった。

「足元」のデータ化で最高評価

スポーツ&フィットネス部門で最高賞を受賞したORPHE(東京・渋谷)の「ORPHE INSOLE」は、靴の中敷きに精密な6軸モーションセンサーと圧力センサーを内蔵した製品だ。 歩行時の足の角度や着地衝撃、足裏の圧力分布をリアルタイムで計測・解析する技術が評価された。特筆すべきは、単なる運動記録にとどまらず、産業現場での「転倒リスク検知」や労働者の健康管理など、BtoB(法人向け)領域での実用性を高めていた点だ。 CESの審査では、技術的な品質に加え、消費者へのメリットや独自性が厳格に評価された。ORPHEの受賞は、AIによる解析技術が、ウェアラブルデバイスというハードウェアを通じて具体的な社会課題(労働安全、健康寿命)の解決に結びついている点が評価されたとみられる。(ORPHEに関する詳細は関連記事https://news.jorudan.co.jp/docs/news/detail.cgi?newsid=JDA00000596 をご参照ください)

最高賞「ベスト・オブ・イノベーション」を受賞したORPHE(オルフェ)の「ORPHE INSOLE(オルフェインソール)

トレンドは「AIの実装」と「フィジカル」へ

今回のCESにおける技術トレンドは、メタバースなどの仮想空間から、製造やエネルギーといった現実空間(フィジカル)への回帰が鮮明であった。 AIは単なる「話題の技術」から、産業機械やエッジデバイスに組み込まれる「インフラ」へとフェーズが移行したといえる。日本のスタートアップが強みを発揮したのは、まさにこのAIとハードウェアが融合する領域であった。

高齢化課題を「価値」に変える

部門賞(Honoree)を受賞した企業から、日本の課題先進国としての側面が見て取れた。 UNTRACKED(アントラクト、横浜市)の「StA²BLE 2.0」は、わずか1分で転倒リスクを予測・評価するシステムだ。独自の振動刺激を用いることで、従来の身体機能だけでなく感覚機能の評価も可能にした。 また、SHOSABI(ショサビ、東京・品川)は、脳と身体の協調性(Brain-body coordination)に着目。3DモーションセンシングとAIを組み合わせ、表面的な筋力ではなく「動作の質」をトレーニングする手法を提示した。「ヘルスケアとアクセシビリティの進化」という全体の潮流にも合致している。急速な高齢化が進む日本において培われた「健康寿命(Longevity)」を伸ばすための技術が、グローバル市場でも競争力を示した形だ。

自社サービスの機能を説明するSHOSABIの神山祥子社長(左)

新たな体験価値の創出

産業用途だけでなく、エンターテインメント分野でも実装が進んだ。 部門賞を受賞したAMATELUS(アマテラス、同・渋谷)の「SwipeVideo」は、視聴者が画面をスワイプすることで自由に視点を切り替えられる映像配信技術だ。アプリ不要でWebブラウザ上で動作する特許技術であり、スポーツ観戦やイベントにおいて、受動的な視聴を能動的な体験へと変革した。 また、水上ドローン「ARIVIA(アリヴィア)」を展開するスペースワン(福島県郡山市)は、水上で光と音、噴水を組み合わせたショー演出を提案した。これらもまた、デジタル技術を現実空間での体験価値向上に結びつけた事例といえる。

スペースワンが開発した水上ドローン「ARIVIA(アリヴィア)」

CES 2026は、AIが「魔法」としてではなく「道具」として、いかに現実社会をアップデートできるかが問われる場となった。ORPHEをはじめとする日本勢の受賞は、ハードウェアとソフトウェアを高度に統合できる日本のスタートアップが、世界の「フィジカル回帰」の潮流において重要なプレーヤーとなり得ることを示した。

ORPHEは単独出展だった。日本貿易振興機構(ジェトロ)が設置したジャパン・パビリオンから4社、民間主導のジャパンテックパビリオンからも1社が、イノベーションアワードの部門賞を受賞した。

記事提供元:タビリス