バツイチ・シングルマザーの再出発を支援する“離婚女性専門”不動産会社

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離婚率が高い年齢は30~34歳、多くが婚姻から5年以内で離婚を決断


厚生労働省が2017年3月に発表した『我が国の人口動態』によると、2015年の日本国内の離婚件数は 22万6215組。そのうち年齢階級別離婚件数割合では妻・夫ともに30~34歳がボリュームゾーンとなっており、婚姻から5年以内で離婚を決断するカップルが多いことがわかった。

2分に1組が離婚していると言われるいま、世間の認識としても離婚は決して珍しいものではなくなってきたが、女性が一人、または、子どもたちを抱えて人生のリスタートを切る際には、様々な課題や困難が伴うことに変わりはない。

そんな“離婚した女性たち・これから離婚しようと考えている女性たち”にターゲットを絞り込み、物件仲介だけでなく様々なサポートを行っている不動産会社が南浦和にあると聞いて訪れてみた。ちなみに筆者自身もバツイチ、離婚経験者である。


▲離婚を考えたとき、真っ先に直面する課題は“離婚後の住まいをどうするか?”だ。新婚当初にスイートホームとして購入した住まいが離婚決断の足かせになることもある



店長はシングルマザー、自身の離婚経験を仕事に活かす


JR『南浦和』駅の東口から徒歩2分。商店街の並びに離婚女性専門不動産会社『ハウスブリアン』がある。温かい雰囲気の木の扉に大きな格子窓、店頭には黒板が設置されており、外から見ると「カフェか?美容室か?」という雰囲気なのだが、よくよく黒板の文字を確認してみると「無理な営業はしません!お気軽にどうぞ」と書かれている。まさに“不動産屋らしからぬ不動産屋”だ。

「わたし自身も5年前に離婚を経験したシングルマザーなんです」と対応してくれたのは、店長の緑川陽子さん(43)。

「リフォーム会社・フジキ建設のエンドユーザー向け仲介部門として『ハウスブリアン』が2年前にオープンした当初は、ターゲットをもっと広く設定していて“女性のための不動産会社”というコンセプトだったんですが、マンション購入を考えるキャリア女性やファミリーミセスって、どうしても大手不動産会社のほうに流れてしまうんですよね(笑)。そこで、自分の離婚経験を活かしてターゲットを絞り込み、“バツイチ女性・シングルマザー専門の不動産会社”に特化しようと考えるようになりました」

緑川さんの経歴は実にパワフルだ。20歳の時に結婚し、しばらくは専業主婦をしていたが、ママ友とのランチ会で「宅建免許を持ってると主婦でも働きやすいらしい」というウワサを聞いて「宅建ってなんだろう?」という興味から勉強をスタート。その年のうちに、合格率約15%と言われる宅建主任者(現:宅地建物取引士)の免許を一発合格で取得した。しかし、宅建取得後もコンビニ・魚屋・飲食店などのパートを転々とし、はじめて不動産業に携わるようになったのは次女が小学校に入ってから。賃貸仲介会社のスタッフとして働きはじめると、持ち前の明るい性格や熱心な仕事ぶりが評価され、不動産業界内で転職を繰り返しながらパートから契約社員へ、契約社員から社員へ、管理職へ…と、どんどんキャリアアップを重ねていった。

「○○ちゃんのママと呼ばれていた自分が、“緑川さん”と名前で呼んでもらえることが嬉しくて、仕事をするのが本当に楽しかった」と緑川さん。
しかし、仕事に熱中するあまり、妻には家庭を守って欲しいと考える夫との価値観にズレが生じ、2年の別居を経て離婚を決断することになった。
「その頃にはある程度自分で稼げるようになっていたので、仕事への自信が持てたことが『離婚』への背中を押してくれたような気がします」


▲『ハウスブリアン』の店長・緑川陽子さん(宅地建物取引士・二級建築士・二級FP技能士)。「仕事を行う上で離婚を公表することに抵抗はなかったか?」とたずねると「ぜんぜん(笑)。むしろ、この離婚経験を仕事に活かしたいと思いました」と前向きな回答が返ってきた



今だに不動産業界に残るバツイチ・シングルマザーへの偏見


離婚を決断した緑川さんが、真っ先にはじめたことは“住まい探し”だった。

「娘2人を連れて離婚しようと思うと、賃貸住宅で暮らすにしても最低10万円ぐらいの家賃がかかります。どのみちそんな高い家賃を払うなら、自分で家を買おうと思って町の不動産屋さんを訪れました。

当時は某ハウスメーカーで管理職をしていましたから、十分な年収も勤務年数もあり、返済比率にも余裕があり、他に借入れがあるわけでもなかったので、住宅ローンを組むことについては何の不安もありませんでした。でも、いざローン審査を受けてみるとどの銀行も融資が通らない、または、融資額減額という結果に…顔馴染みの銀行担当者に事情を聞いてみても、“どういう理由かはわかりませんが保証会社がNOと言っています”と首をかしげるような状態でした。そのとき、“やっぱり世の中にはシングルマザーへの偏見があるんだ”と痛感して正直凹みました。

物件を仲介してくれた不動産屋さんのおじさんからも、“なんであなたが自分の名義で家を買わないといけないの?離婚するの?お子さんたちの養育費はもらえるの?慰謝料はどうなってるの?”と、いろいろなことを根掘り葉掘り聞かれて…。今振り返れば、おじさんだってわたしのことを心配して“なんとか住宅ローンが通るように”と親切心で聞いてくれていたとわかるんですが、そのときは“どうして赤の他人のおじさんに自分のプライベートについていちいち話さなくちゃいけないの?!”と屈辱的な感情を持ちました。

“これから自分で頑張ろう!”と思って大きな決断をした矢先なのに、離婚女性たちはこんなイヤな思いをしながら人生の再出発をすることになるのか…と実感した瞬間でした。長年不動産業界で仕事をしていたのに、自分自身が経験するまでそのことに気づいていなかったんです」


▲思わずカフェと間違えて入店しそうになるお客さんも多いというハウスブリアンの外観。離婚を経て新しい人生への第一歩を踏み出す際には、どうしても生活拠点となる『新しい住まい』が必要になる。しかし現実に目を向けてみると、不動産業界内ではいまだに離婚女性やシングルマザーへの偏見が残っており、住宅ローン融資の難しさや不動産会社による両手仲介(※)など、様々な課題に直面するケースが多いという。※両手仲介というのは不動産会社が物件の売り主と買い主の双方から仲介手数料を得ること。違法ではないが、近年問題視されている



不動産にかかわらず、仕事探しや弁護士・司法書士紹介までトータルサポート


こうして、緑川さんは自身の経験をきっかけに、“離婚女性の再出発への不安にちゃんと寄り添うことができる不動産会社”としてホームページやSNS等で様々な情報発信をはじめた。

『ハウスブリアン』へ相談に訪れる女性たちは、浦和市内だけでなく首都圏広域に及ぶ。

「まずは、私のブログを見てメールで相談をしてくださる方が多いですね。相談内容はけっこうバラバラで、“離婚を考えているので今住んでいるマンションを夫にナイショで査定してほしい”とか、“離婚した後にマンションを買うとしたらいくらぐらい必要ですか?”といった内容のほか、不動産を買う・借りるにまったく関係なく、“なんとなく話を聞いてほしくて…”とたずねてくる人もいます」

筆者自身も経験したことだが、離婚を決断する際には先輩たちの意見がとても参考になる。「自分の場合はこうだった」「離婚届に判を押す前に○○を確認したほうがいい」など、離婚経験者からの具体的なアドバイスは何より心強く感じられるものだ。

「家族関係が変わり、住む場所も変わり、生活もガラリと変わると思うと不安が膨らみすぎて、中にはパニック状態になる人もいます。でも、離婚後に暮らす家が決まっただけで、“住む場所さえあれば、あとはなんとか頑張れる!”と安心して明るい顔に戻る人もいますから、わたしの離婚経験と不動産の知識が少しでも女性たちのお役に立てたら嬉しいと思っています」と緑川さん。

『ハウスブリアン』では相談にやってくる女性たちに対し、仕事を取得するためのキャリアカウンセラーや信頼できる弁護士・司法書士の紹介も行う。不動産の仲介だけにかかわらず、緑川さんのネットワークを駆使して女性たちの離婚後の独立支援をトータルでサポートしているのだ。


▲こちらは店の看板犬・はるおくん。緑川さんが保護施設から引き取った2歳のゴールデンレトリバーで、はるおくんに会うために店に立ち寄る女性客も多いという



離婚をしたくても踏み出せずにいる人の背中をちょっとだけ押してあげたい


“離婚女性たちの駆け込み寺”とも言える緑川さんに、今後の目標について聞いてみた。

「最終的な目標としては、安い家賃で生活できるシングルマザーのシェアハウスをボランティアで展開したいと考えています。運営費などを考えると実現するにはまだまだ様々な課題があるのですが、とりあえず、離婚して仕事が無くて困っている人にも、“まずはここへおいでよ!”って言えるような女性のための住まいを作りたいですね。

離婚をしたくても、仕事や家のことが心配で踏み出せずにいる人の背中を、ちょっとだけ押してあげる…そんな存在でありたいと思っています」

自身の離婚経験から5年が経った今、はつらつと仕事に取り組みながら人生を謳歌している緑川さんの姿は、離婚を考えている女性や離婚したばかりで不安を抱えている女性たちにとって、キラキラと眩しく映るに違いない。

■取材協力/ハウスブリアン
http://www.house-brian.com/


▲最後に、緑川さんから今離婚を考えている女性たちへアドバイス。「いま住んでいる家が持ち家なら『ローンの名義はどうなっているか?夫婦で連帯保証人になっていないか?残債はどれぐらいか?』をまずしっかりと把握してください。全部夫任せにして何も知らないのはとても危険です。いま賃貸で暮らしている人の場合は、自分たち夫婦の貯金額がどうなっているかをしっかり把握しておくこと。これを把握することで離婚後の自分の生活が見えてきます。また、すでに仕事を持っている人は良いのですが、パートやアルバイトの方には“ちゃんとした収入が得られるようになるまでもうちょっとガマンしたほうがいいよ”と、離婚をとどまるよう助言することもあります」(緑川さん談)。『ハウスブリアン』では、店舗内で定期的にキャリアアップセミナーや交流会を行うなど離婚女性の独立支援やネットワークを広げるためのサポートも行っている



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