乗換案内30周年 短期集中インタビュー1 スマホ1台で移動を快適に!

ジョルダンニュース編集部

 ジョルダンの経路検索「東京乗換案内」が1993年5月に発売されて30年。乗換案内は電子ブック版から始まり、大きく発展してきた。その背景には、Windows95登場(1995年11月)の登場によってパソコン人口のすそ野の急拡大、インターネットの利用増、携帯電話の普及、そしてスマートフォンの登場などの一連の流れに乗って、より便利に、正確に、開発を進めてきたことが大きい。「スマホ一台で移動を快適に」を掲げる創業社長である佐藤俊和をはじめ、経路検索の迅速化と正確性を求めて第一線の現場を担う担当者らキーパーソンのインタビューを5回にわたってお伝えする。(敬称略)

 トップバッターは多岐にわたる関連部署の“司令塔”進行管理を担う運用部の安田正治。

――ジョルダンに入社した動機は、やはり鉄道好きだったのですか。また、それまで乗換案内を使っていましたか。

安田 子供のころから時刻表が好きだったが、乗換案内に出合ったのはパソコンにバンドルされていたソフトだった。その後、ガラ携だったが、携帯で経路検索ができることが大きな魅力だった。そして就職活動中にこんなおもしろい乗換案内を開発している会社、ジョルダンの存在を知り、2002年に入社しました。

乗換案内の原点、電子ブック版

メンテには50人近くが従事、春のダイヤ改正は突貫作業


――入社後、20年以上が経過し、現在、乗換案内に関連するどのような業務に従事していますか。

安田 ひと口に乗換案内の開発といっても、鉄道事業者が作成した時刻表をそのまま使うのではなく、乗換案内用に修整を加え、より便利にする作業があります。鉄道、バスを含めた運賃計算のプログラムや乗り継ぎ駅、駅の番線データなど様々な工程をこなしていかなければなりません。そして、毎年春のJRのダイヤ改正への対応。2月25日前後に公開となるのですが、JRからデータが届くのは約5日前。事前に可能な限り準備をしておくのですが、やはり最後は“突貫工事”ですね。

――関連部署も多岐に渡ると思います。総勢何人くらいでやっているのですか。利用者は、開発の裏側など意識することなく、便利だなと思って使っているわけですが。

安田 エンジン開発部、運用部、新潟分室、それにバスチームを合わせると50人くらいになります。それに多言語対応チームもあります。営業部門もかかわっています。

東京乗換案内(Win31)の画面

――現在の利用形態はどうなっていますか。やはり無料での利用が多いのでしょうか。

安田 月間検索回数は2億回以上です。その3分の2がスマホのアプリで、残りがブラウザ版です。多くは無料利用なので、広告収入が頼りです。有料会員も約20万人存在します。そのほかCD版を買っていただいているお客様もいます。

利用者の声を反映し、「お客様に育てれながら成長」


――さて、この辺でジョルダンの乗換案内の強みというかセールスポイントを教えてください。

安田 ひと言で説明すると私たちは「お客様に育てれながら成長している」ということです。
 経路検索エンジンは基本的に早い経路を探してきますが、あくまでロジカルにそれを行うので、人間の感覚で欲しい経路がどうしても出ないことがあります。そのような場合に、指定の経路を表示できるように手作業で調整を行います。これを経路追加といいます。開発するにあたり、普通のロジックでは出てこない要望ですね。
 つまり、早いだけでなく、安い、列車の接続が便利などを盛り込むことです。乗換案内は、すでにインフラに近い存在なので、使い勝手がよくて当たり前です。それだけではない、きめ細かなサービスの提供です。例えば、目的地まで早くいく経路をロジックに委ねると、短距離でもバスに乗ります。当然バス運賃が必要です。しかし、そこは歩いても行ける距離なのです。
 そのような場合には、少し時間が長くなるかもしれませんが、「歩いて行ける経路」の方を提案する。このような調整の積み重ねによって、より実際の感覚に近い経路を導き出せるようになるわけです。
 また、東京・新宿駅から大阪駅までの経路と時間を知りたい場合、肝心なのは東京から大阪までで、新幹線、飛行機、高速バスのいずれかの移動手段を使うのか。所要時間は、費用は。これが必須です。まず、これを提示することです。

便利です! モバイルチケット、リアルタイム運行情報、地図機能


――進化を続ける乗換案内ですが、もっと使ってほしい、こんなサービスがあるということをアピールしてください。

安田 まず、イチ押しはモバイルチケットです。乗換案内アプリから提携している交通事業者のチケットを購入できます。スマホを利用して、原則24時間、どこからでも買えます。コロナ禍の際など、売り場に行く必要もなく感染防止にも威力を発揮しました。

モバイルチケットのキャプチャー画面。

 そのほかには、JR東日本、東京メトロ、都営地下鉄のリアルタイム運行情報が便利です。これは、今、どの列車がどこを走っているのかが乗換案内で分かる仕組みです。大幅な遅延や運休はいろいろな手段でお伝えしていますが、それほどでもない遅れについて、つまり自分が乗りたい電車が今どこを走っていて、駅には何分ごろ到着予定かなどがリアルタイムで分かります。
 これによって、振替輸送を利用したほうが良いのか、もう少し待ってみた方が良いのかの判断ができます。今後もこの3社以外にも対応の拡大を検討していきます。

――とても便利そうですね。列車の遅延の際、他の路線を使った方が早いのか、それとももう少し待てばいいかは、いつも迷います。その他のおすすめは?

安田 ルート地図機能があります。目的地の駅まで経路検索で到着後、そこからバスに乗る場合のバス乗り場や目的の施設などへの経路を示す地図です。ナビゲーション機能がついているので、初めての道でも迷わずたどり着くことができます。

――コロナ禍についてお聞きします。行動制限が実施されたり、在宅勤務が推奨されたりで人の動きに変化が出ました。

安田 国内で緊急事態宣言が発出された2020年4月、5月は乗換案内の検索数は7割減程度に落ち込みました。
 ジョルダンも完全在宅勤務になったのですが、鉄道が減便になったりしたので、自宅での対応に追われました。この期間は新たな事業をするより、これまでのサービスをより堅実に維持しようと努めました。

――インバウンド(訪日外国人)対応についてお聞きします。

安田 現在、乗換案内は鉄道、飛行機、高速バスと一部の路線バスについては英語をはじめ、13言語に対応しています。付随サービスはこれからというところです。例えば、列車の遅延について、あと何分くらいで運転再開するなど細かな情報が提供できるかが課題です。電車の外国語の車内放送でも、まだできていないケースもあるようです。
 乗換案内のユニークな取り組みとしては、検索結果上で、各国語と日本語の2か国語を併記していることが挙げられます。
 まだまだ現地の看板では日本語以外の表記が不足していることも多いものです。そこで、外国人が2か国語併記を利用して自分の国の言語を確認しつつ日本語の表記と見比べてもらえれば、駅や路線を識別することができるようになります。また、日本人が検索して各国語で説明してあげることもできます。

必要情報を全部そろえ、移動の計画段階からお役に立つ


――最後にこれからの乗換案内についてお尋ねします。

安田 よりきめ細かい情報を提供することと考えています。乗換案内を利用すれば、自宅から目的地の駅までは迷うことなくたどり着けます。 ただ、駅で何番線から発車するのかなどを提示しないと不便を感じる利用者もいます。
 また、コロナ禍以降、混んでいる列車を避けて乗りたい。急行より空いていて、時間はかかって座っていける各駅停車を利用したいという方もいます。必ず座れる座席指定列車も各地に増えてきました。少し待っても、その列車を利用する経路を出して欲しいというご意見もいただくようになりました。
 つまり、必要な情報を全部そろえ、旅や移動の計画段階から旅程を組み立てられるような乗換案内を目指したいのです。

――ありがとうございました。
記事提供元:タビリス