防災美食塾で家作りと非常食を経験、やってみることの意味を考えた

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災害時、簡単な小屋を作って避難しようという提案


2015年から毎年夏に「いえづくり教習所」なるスクールが高知県で開かれている。その名の通り、家作りを学ぶもので、卒業生の中には移住した高知で大工になった人もいるほどの本格的なものである。そのいえづくり教習所が2017年秋、東京は日本橋のべったらスタンドという仮設スペースで「防災美食塾」なるイベントを開催した。これは災害時に事前に用意してあった骨組を組立て、とりあえず暮らせる場所を確保するためのノウハウを学び、併せて防災食を味わってみるという2日間のプログラムである。

初日、訪れて見ると会場には構造用合板と柱の山。これを使って2畳2間の小屋を2日間で組み立てるという。工夫は柱の長さ。全部2mほどと短いのである。「災害時に組み立てることを考えると、できるだけ電動式の道具を使わず、少ない人手で組み立てられるようにしておいたほうが良い。そこで柱の長さは2mまでとしました。これなら乗用車でも運べますし、梯子を使う必要もありません」(いえづくり教習所主催の建築家・中宏文氏)。

柱はすでに継手や仕口(材木を接合するための溝や凹凸などのこと)が刻んであり、後は組み立てるだけ。プログラムでは実際に刻んでみる時間が設けられたが、発災後に刻んでいたのでは間に合わない。柱を用意する際にプロに刻んでもらう、あるいは自分で少しずつ刻んでおくなどの必要があろう。


今回の会場となったべったらスタンド。用意された柱と構造用合板。道具はすべて手動のもの



ホームセンターで手に入る材料で家が建つ!?


用意されていたのは檜の10.5cm角の柱。長さ3mのもので1本1,500~2,000円ほどだそうで、思っていたよりも安いという印象を受けた。もちろん、もっと高いもの、安いものもあるそうで、値段は見た目、強度による。だが、今回使うものはこれで普通の家も作れるのだとか。全国どこのホームセンターでも手に入る、よくある材で家が建てられるとは。もちろん、プロが買うのは別の場所だろうし、少量買うのとは異なる価格なのだろうが、なにか、不思議な気がする。

今回使用する分は材料費だけで7万円ほど。刻む作業は大工さんに依頼しており、その費用は1日1万6,000円(税込)で4日分。大工さんの日当は地域によって違うが、この作業は自分でやればタダだ。

いずれは作り方の動画、必要な材料を揃えたキットの販売を考えているという中氏。「組立だけを自分でやる、刻みから自分でやるなど、作業の段階ごと、購入する人の技術レベルごとなどで異なるキットもあり得るだろうなと考えています」。

本当は基礎を打つ作業があるが、今回の場所は仮設で木の床がある場所のため、それは省略。実際の災害時も基礎までは作っている時間はなかろう。骨組み、壁だけでもあれば、雨風から身を守るようになるから、当座の住まい作りという意味ではそれで充分でもあると思う。


土台を作り、柱を建てる。はめ込むだけなので作業としては分かりやすい。この時点では柱はぐらぐらしているが、この後、梁を組んだらしっかり動かなくなった



自分で作ってみると、住宅観が変わる


さて、実際の作業だが、これが想像以上に短時間で終わり、あっけにとられた。初日は骨組を組み立てたのだが、土台から柱を立て、梁を渡し……の所要時間は数人でやったためもあるが、1時間弱。計4畳のスペースだからかもしれないが、大きなプラモデルのようなものという印象である。ただ、柱までは一人でもできるだろうが、その上に梁を渡す作業は一人では無理。2人でやる必要があると見た。初日の作業はそこまでで、2日目には2畳分にのみ床を貼り、壁を作った。これも合計2時間くらいか。ずっと住むという想定ではないため、大ざっぱに作ってはあるが、意外に簡単にできるものである。

ひとつ、面白かったのが引き戸の作り方。土台と梁に釘を並行に打ってレールとしたのだが、それだけで戸が開け閉めできるようになる。きちんとした資材がなくても、アイディアでモノは作れるのだと実感した。

参加した人も同じように思ったようで「家って自分でも作れちゃうんだと思った」という声を聞いた。「大正生まれの父は時間をかけて鉄筋コンクリート造の家を自分で作った人で、子どもの頃、いつになったらできるの?と言っていた母を覚えています。でも、今回、参加してみて自分でも作れるかなと思いました」。

これと同じ言葉を2年前、高知で始めて開かれたいえづくり教習所でも聞いた。やったことが無い人は家なんて自分には作れないと思っているが、ちょっとでもやってみると作れるんじゃないかと思うようになるらしい。もちろん、全部を自分で作れるまでには長い時間がかかるだろうが、全くのブラックボックスと思うか、自分でもいじれるものと思うかで、家との付き合い方は変わってくるはずだ。

小屋自体は最後にキャンプ用のタープで屋根を作っておしまい。最初はブルーシートを掛けてという話だったが、雨に濡れた時の強度で考えるとタープに分があるとか。短時間で作られたものでも、壁があり、床があるという空間には安心感がある。


左上がレール下部、右上が上部。この2カ所の間に構造用合板をはめ、取っ手を付けただけで引き戸に。左下の状態にタープを掛けて完成(右下)だ



些細なコツが成否を分けることもある


さて、制作後は防災食で晩御飯である。初日は湯を沸かして非常用ご飯、缶詰を温めて頂いた。湯沸しグッズは説明書がやや煩雑だったためか、水を入れすぎたり、箱から湯が溢れだしたりと散々な目に。非常用のご飯はパックの中にスプーン、乾燥剤、品によっては味付け用の調味料が入っているのだが、取り出さないままに湯を注いでしまいそうになったり、最初に混ぜるものを混ぜなかったり、調味料を入れ忘れたりと、些細な間違えも。非常用グッズは揃えてあるからと安心せず、一度試しておかないといざという時には使えない可能性があるかもしれない。特に停電した場合には読みたくても説明が見えにくいこともある。

この日、用意された缶詰は高知県幡多郡黒潮町が町出資で作った第三セクターで作っている品で、魚ときのこのアヒージョやトマトで煮込んだ3種類の豆、ぶりとろ大根や野菜とひじきの甘辛煮、栗ぜんざいなどと実にバリエーションが豊富。これだけ種類があれば、飽きずに食べられるだろう。意外に美味しかったのは缶詰を食べた後の汁に浸した乾パン。缶詰の少し濃い味つけが薄められ、食事としてはもちろん、つまみとしてもいけそうである。

2日目はカセットコンロ用のボンベを使って米を炊いた。非常時に役に立つとカセットコンロ用ボンベ、コンロは常備している人が多いだろうが、専用の炊飯器と無洗米、水があれば、平常時と同じようにご飯が炊ける。2万円前後というが、何があっても温かいご飯を食べたいと言う人なら用意しておいても良いかもしれない。

さて、2日間参加してみて思ったのは、やってみることの大事さだ。小屋作りでは柱や梁がうまくはまらない時には余った材木で叩くやり方があることが分かったし、防災グッズの説明はいざ使おうとすると意外に分かりにくいことも知った。ほんのちょっとのことだが、慌てている時には知っているか、知っていないかが大きな差になるはず。機会があったら経験してみることは大事だろう。

いえづくり教習所
http://iedukurischool.strikingly.com/

黒潮町缶詰製作所
http://kuroshiocan.co.jp/index.html


最後のご飯タイム。左上写真右奥の白いシャツが中氏。右上は湯を沸かす防災グッズ。右下はカセットコンロ用ボンベ利用の炊飯器。左下は缶詰を温めているところ。カセットコンロ用があればいろいろ使える



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