「都市公園法の改正」で公園内の保育所が可能に。都市公園はこれからどう変わる?

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閣議決定から改正法成立、施行まで4ケ月


都市公園法が改正され、2017年6月15日に施行された。

これは「都市緑地法等の一部を改正する法律案」として、都市緑地法、生産緑地法、都市計画法、建築基準法、都市開発資金の貸付けに関する法律の改正とともに審議されていたものだ。2017年2月10日の閣議決定を経て、4月28日に可決・成立、5月12日公布、6月15日施行(一部は2018年4月1日施行)と、かなり慌しい印象を受けるが、都市が直面する大きな問題への取組みが含まれていることも施行が急がれた要因の一つだと考えられる。

それでは都市公園法の改正によって何が変わったのか、その主なポイントをみていくことにするが、まずその前に都市公園とはどのようなものなのかを整理しておきたい。

都市公園とは、良好な都市景観の形成、都市環境の改善、都市の防災性の向上、生物多様性の確保、人々のレクリエーションや豊かな地域づくりに資する空間の提供などを目的として設置されるもので、国や地方公共団体による営造物公園や緑地を指す。国立公園・国定公園・都道府県立自然公園など自然公園法の対象となる公園を除いたもの、と考えればよいだろう。

都市公園の種類として次のようなものが挙げられている。

□ 住区基幹公園:街区公園、近隣公園、地区公園
□ 都市基盤公園:総合公園、運動公園
□ 大規模公園:広域公園、レクリエーション都市
□ 緩衝緑地等:特殊公園、緩衝緑地、都市緑地、緑道
□ 国営公園


公園は都市にとって大切なインフラになっている



改正法により都市公園内で保育所やレストランも可能に


都市公園法の改正では「都市公園の再生・活性化」を目的として、主に次のような措置が図られている。

□ 保育所など社会福祉施設(通所利用)の占用を可能とすること
□ 民間事業者による公共還元型の収益施設(飲食店、売店など)の設置管理制度の創設
□ 大規模公園施設のPFI事業による設置管理許可期間の延伸(10年から30年に)
□ 公園運営に関する協議会の設置
□ 都市公園の維持修繕に関する技術的基準の策定

このうち注目されるのは、都市公園内で保育所などの設置が可能になったことだろう。これまでは関連施設(休憩所、休養施設、遊戯施設、運動施設、教養施設、売店、トイレ、管理施設など)以外で公園内に設置が認められるのは、災害用倉庫などごく一部に限られていた。

それに対して改正後は、地方公共団体など公園管理者の許可を受けたうえで、保育所、保育園、認定こども園、学童クラブなどの設置も認められる。また、公募によって公園内にカフェやレストランなどの収益施設も設置できるようになる。それに伴い、原則2%とされている建蔽率も地方公共団体の条例で緩和することが可能となった。ただし、公園としての性格上、建蔽率を無制限に緩和できるわけではなく、10%程度が上限の目安となるようだ。

なお、余談ながら「建蔽率」は従来「建ぺい率」と表すことが一般的だったが、「蔽」の文字が2010年に常用漢字へ加えられたことから、新しい法律や公的な文書などでは「建蔽率」と表記されることが多くなっている。


都市公園法が改正され、公園のなかに保育園やレストランなどを開設することが認められるのと同時に、建蔽率の緩和も受けられるようになった。法改正によってどのように変わるのか、先行した特区の事例も踏まえながら考えてみたい。



都市公園の活用は待機児童問題解消の切り札!?


都市公園法の改正により全国の都市公園内で保育園などの設置を可能とした背景には、改めていうまでもなく待機児童の問題がある。保育ニーズが年々高まっているものの、新たに保育園などを開設しようとしても、その用地確保はなかなか困難な状況である。住宅地に隣接して保育園などを造ろうとすれば、近隣住民が猛烈に反対することもあるようだ。

待機児童問題解消の切り札として都市公園の活用に期待がかかっているようだが、そもそも都市公園はどれくらいあるのだろうか。

国土交通省がまとめた2015年度末時点のデータによれば、全国の「都市公園等」は106,849箇所、面積は約124,125haにのぼる。1人あたりの都市公園等面積は約10.3m2だ。面積は1960年度末時点と比べて約9倍、1989年(平成元年)度末時点と比べても約2倍に増加し、年々着実に増え続けている。

だが、1人あたりの面積を地域別にみると、最も広い北海道が38.2m2なのに対して、東京特別区は3.0m2、大阪市は3.6m2にすぎない。政令市で最も広いのは神戸市で17.2m2だ。ストックホルムの80m2やワシントンD.C.の52.3m2、ベルリンの27.9m2、ロンドンの26.9m2などと比較すれば、国内の都市公園はまだまだ貧弱だといわざるを得ないだろう。

それでも都市公園を保育園などの用地として活用していかなければならないところに、待機児童対策の困難さが表れているといえるかもしれない。


国土交通省都市局公園緑地・景観課による公表資料をもとに作成



国家戦略特区で先行している都市公園の活用


都市公園における保育所などの開設は、国家戦略特区によってすでに始まっている。2015年9月の特区法改正で、公園内に保育所などを設置することが可能になったのだ。東京都荒川区が2015年11月に全国初の認定を受けたほか、政令市では2016年3月に横浜市が初めて認定されている。

その後もいくつかの認定があり、2017年4月1日に荒川区(都立汐入公園)、品川区(区立西大井広場公園)、世田谷区(都立祖師谷公園)、横浜市(反町公園)、福岡市(中比恵公園)、仙台市(中山とびのこ公園)で合わせて6施設が開園した。

このうち荒川区の「にじの森保育園」は、約1,600m2の広い敷地に建てられた平屋建ての園舎で、定員は162人のようだ。約12.9haの都立汐入公園を「園庭」として使えるという。一般の住宅に隣接していないため、子どもたちが伸び伸びと遊ぶことのできるメリットもあるだろう。

品川区に開設された「まなびの森保育園西大井」(定員100人)は、区立西大井広場公園の植栽(築山)部分を整地して用地が確保された。保育園の前には小さな園庭があるものの、西大井広場公園そのものは運動公園のため、近隣の児童公園を園児の遊び場として使っているという。同じ都市公園内の保育園といっても、公園の種類によって活用状況は大きく異なるようだ。


品川区立西大井広場公園の一角に建てられた保育園



都市公園の活用には地域住民の理解や地域交流も欠かせない


横浜市で2017年4月1日に開園した「いずみ反町公園保育園」は定員40人の比較的小さな認可保育所であり、近くの保育園の分園として運営されている。反町公園(横浜市神奈川区)は1950年代に横浜市役所市庁舎がおかれていたところであり、1963年の公園開設当初はロケットコースター、ローラースケート場、ゴーカート場、バッティングセンター、釣堀などを備えた「遊園地」だったようだ。

その一角にある横浜市所有の管理詰所(鉄筋コンクリート造平屋建て、延床面積約170m2)が2014年3月に閉鎖されたまま使われていなかったため、これを改修したうえで保育所に転用したものだ。そのため専用の園庭は小さなものしかないが、既存施設の有効活用という面で注目される事例ではないだろうか。

これら以外にも特区による保育園などの設置がいくつか予定されているほか、改正都市公園法が施行されたことで、これから全国に広がっていくだろう。待機児童問題への対策という側面だけでなく、公園をうまく活用し地域住民と交流を図ることで、そこに通う園児にとってプラスとなる環境をつくることも可能だ。また、公園内のカフェ、レストランの設置もこれから進んでいくはずであり、居心地のよい都市公園が次第に増えていくだろう。

その一方で、都市公園内での保育園などの設置に関して「住民のための公園をつぶすな」「(園児以外の)子どもたちの遊び場を守れ」といった反対意見もすでに出始めているようである。同じ都市公園でもその性質や条件はそれぞれ異なり、いろいろと難しいケースもありそうだ。


横浜市・反町公園に開設された保育園。使われていなかった旧管理詰所を改修した



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