専修学校をリノベーションしてホテルに。「ホテルカンラ京都」が目指したものとは?

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専修学校がホテルに


インバウンドの観光客増加により、宿泊施設不足が問題となっている京都。そんな中、専修学校をリノベーションしたホテルカンラ京都が、2016年10月に増床した。新館も専修学校をリノベーションしたものだというので、そのコンセプトや工夫について、宿泊支配人の櫻井暁子氏に話を聞いてきた。

現在別邸となっている旧来のホテルカンラ京都がオープンしたのは2010年10月28日。専修学校として、使用されていた建物をリノベーションしたホテルだ。
そして2年前には隣接する棟もホテルに改修し、それまでの29部屋に加え、39部屋の増床。ホテルカンラ京都らしさを継承しながら、洗面台を増やすなどの進化もしている。
オープンは2016年10月17日で、着工から竣工まで、たったの5ヶ月弱。工事の騒音で宿泊客を煩わせないようにとの心遣いもあり、既存のものを活かし、いかに短い工期におさめるかに工夫が必要だったという。そのため外壁はほとんどそのまま利用している。

当時京都駅と四条の間に立地するホテルが少なかったこともあり、ホテルとして活用するのは早々に決まったが、競合とどう差別化するかなどの課題があった。


ホテルの外壁は専修学校時代からほとんど改装していない



町家スタイルの客室とは


「京都という観光・文化資源が豊富な環境に立地していながら、京都を感じてほしくないホテルはないと思います。その中で、カンラらしさをどうやって出すかを考えたとき、京都の昔ながらの住居、つまり町家をデザインとして活かしながら、ホテルとしての快適さをマッチングして、お客様にご提案したいと考えました。また、館内全体で京都を感じていただきたいと考え、寺院や茶室などを視察したのですが、設計士たちがとてもいいなと感じたのは茶室でした。静寂の空間が醸し出す落ち着きを、ホテルとして提供できないかと考えたのです」と、櫻井氏。カンラ京都の考える「マチヤスタイル」とは、京都の伝統的な住宅形式である京町家の形状にこだわり、間口が狭く奥行きが深い京町家をモチーフにデザイン、客室内の細長い空間に洗面台を配して京町家の雰囲気をつくりつつ、空間デザインとして”ホテル”としての心地よさや快適性を提供する空間。客室の入り口もドアではなく格子戸だ。
「格子戸を開く『ガラガラ』という音は、日本人でさえ聞く機会が減りました。格子戸を引くことで、日常から一呼吸おく時間を表現したかったのです」

サービスの特徴は、フロント、コンシェルジュ、ベル係、予約係などで部署を分けていない点。時にはカフェのスタッフがドアマン係となって、お客様の荷物をサポートしたりと、全員がマルチに動くことにより、お客様を知り、スタッフを知り、ホテルを知れると考えているのだ。


客室の入口は格子戸で、廊下の景色も京都の路地のようだ



二つの建物を一つのホテルと見なしてもらう工夫


別邸と新館の二棟で運営しているホテルカンラ京都だが、二つを別々の建物ではなく、一つの建物として見せる工夫が必要だったという。
「一つのホテルとして見てもらうには、二棟がつながっていなければなりません。新館と別邸をつなぐ廊下は、車いすのお客様でも通りやすく、荷物を運びやすくという動作面を考えて段差をなくし、さらに雨もよけなければ……と、自然につなぎ目を作るのが難しかったと聞いています」
また、デザイン的に一番難しかったのは、ロビーだったとか。専修学校の無機質なグレーと白の壁を、暖かく親しみやすいホテルの顔に変えるために清水焼のタイルをフロントの背後に使うなどの工夫がされている。しかし、たくさんの人が集まる場所という雰囲気作りのために、学校らしい、広い吹き抜けのエントランスの効果が抜群だったとか。


フロントの背後の壁は清水焼のタイルが敷き詰められており、自然と「本物の京都」に触れられる仕掛けがある



専修学校とホテルの共通項である「教育」をホテルで提供するために


また、教育施設をリノベーションしたことに対する思い入れもある。
「どのように『学び』を提案できるのかが工夫のしどころだと思いました。京都の文化がはぐくんできたものをゲストに学んでいただくため、本物の組紐や日本茶などを客室に置いて、さりげなく文化に触れられるようにしています。また、私たちホテリエがお客様にさまざまな提案をするためには、季節感だったり、文化だったり、花だったり、ありとあらゆる京都を、日々学ばねばなりません。そうした学びがカンラらしさではないかと思っています」と、櫻井氏が熱を籠めるように、「本物の京文化」にはこだわりがある。エントランスへ降りる階段の横には、造園家の手による坪庭があり、カフェのラグには藍染が使われている。さらに客室で使う湯飲みは作家が作った清水焼、ウェルカムドリンクは宇治の煎茶、といった具合だ。
ユニークなのは、「ハウスオブクラフト」と呼ばれるブースの中で、職人が金継ぎ作業をしていること。金継ぎは、漆や金粉を使って割れた器を修復する日本古来の技法だが、カフェでお茶を飲みながら見学できるのは魅力だろう。
「エントランスに大きな絵画が飾ってあっても、目に入らないお客様もいらっしゃいます。それより、お客様の記憶に残るところ、手にとれるところ、使用するところに本物の京都をあしらいたかったのです。また、間近で金継ぎの技法を見ていただけば、人の手を介して工芸品ができあがるということを感じてもらえるのではないでしょうか」

また、修学旅行にも力を入れている。1室に最大5名入れるので、生徒数が100名までの学校であれば受け入れが可能。漬け物を作ったり、箸を作ったりと、京都らしい体験を提供するほか、「ホテル」を体験してもらうため、ホテリエの挨拶やマナーを見てもらう場にしたいと考えている。だから、食事もすべてホテルスタイル。ホテルという非日常を通して、未来に活かせる修学旅行にできたらと考えているそうだ。

ホテルカンラ京都では、これからも京都を訪れる観光客に、何か「学び」を得て帰っていただきたいという心意気で進化を続けるという。その工夫に期待したい。

■取材協力
ホテルカンラ京都:https://www.hotelkanra.jp/


宿泊グループ宿泊支配人の櫻井暁子氏。清水焼の湯飲みなど、客室の備品も本物にこだわっている



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