空き家対策は進んでいるのか?国土交通省がまとめた調査結果をみる

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空き家対策特別措置法の完全施行から2年が経った現在の状況は?


年々深刻化する空き家問題を背景に「空家対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策特別措置法)が成立したのは2014年11月(同月公布)だ。その後、2015年2月26日に一部施行され、2015年5月26日に完全施行された。

施行から2年あまりが経過しているが、この法律によって全国の市区町村でどれくらい対策が進んでいるのだろうか。国土交通省が2017年6月27日に公表した「空き家対策に取り組む市区町村の状況について」(調査対象:47都道府県1,741市区町村、調査回収率:100%)の集計結果を確認してみることにしよう。

まず、空き家対策特別措置法を簡単にまとめておく。著しい劣化や破損、腐朽などによって「そのまま放置することが不適切」だと認められる状態の空き家を「特定空き家」に指定し、市区町村から所有者等に対し必要な措置を助言・指導、勧告、命令することができる。そして措置を命じられた者がそれに応じなかったり、対応が不十分だったりしたときなどには、行政代執行法による措置(建物の解体など)ができることになった。

また、空き家対策特別措置法の第6条では市町村が「空家等対策計画」を定めることができる、第7条では市町村が「法定協議会」を組織することができる、と規定された。いずれも義務ではないことに留意しておきたい。

なお、空き家対策特別措置法の内容については「指導・勧告・命令・代執行の対象となる『特定空き家』で空き家対策は進むのか」で紹介している。あわせてご覧いただきたい。


空き家対策への市区町村の取組みが急がれている



「助言・指導」は累計6千件超、「代執行」はごく一部


「特定空き家」などに対する、2016年4月1日から2017年3月31日まで1年間の「措置実績」はどうなっているのだろうか。

「助言・指導」は221市区町村3,515件、「勧告」は74市区町村210件、「命令」は17市区町村19件、「代執行」は10市区町村10件、「略式代執行」は23市区町村27件だ。ただし、勧告、命令、代執行などを同じ対象物が受けている場合も含まれるだろう。

「略式代執行」は、市町村長が必要な手段を講じたにも関わらず措置を命じるべき相手方(所有者など)が確知できない場合に実施されるものだ。要するに、所有者が分かる空き家なら「代執行」、所有者不明の空き家なら「略式代執行」となる。

「助言・指導」の対象となった3,515件のうち、住宅が2,739件、非住宅が252件、門や塀などの附属工作物が226件、立木などが878件、その他(擁壁など)が138件となっている。住宅が大半を占めるのは当然だろうが、立木や工作物なども意外と多い印象である。ただし、同じ敷地内の住宅、工作物、擁壁などが重複しているケースも少なくないようだ。

その一方で、代執行10件のうち9件、略式代執行27件のうち20件が住宅である。空き家対策特別措置法の施行により「老朽空き家の解体が進む」とする論調も少なからずみられたが、1年間の除却(解体)数は合わせて29件にとどまった。住宅以外には非住宅が5件、工作物や立木などの除却・伐採が4件である。

また、法施行から2017年3月31日までの累計では、「助言・指導」が6,405件、「勧告」が267件、「命令」が23件、「代執行」が11件、「略式代執行」が35件となった。「助言・指導」はかなり多い印象だが、市区町村数では18.0%にとどまり、8割以上の市区町村は何ら措置の実績がない状況のようだ。

まだ法が施行されてからの期間が短い段階であり、代執行などの件数が増えるのはこれからだとも考えられる。しかし、代執行や略式代執行をした後の費用回収が難しいことなど、市区町村にとって難題も多いだろう。


国土交通省「空き家対策に取り組む市区町村の状況について」添付資料をもとに作成



「空家等対策計画」を策定する市区町村は、2017年度中に5割超の見込み


市町村による「空家等対策計画」の策定は任意とされているものの、2017年3月31日時点では全市区町村の20.5%(357市区町村)で策定済みのようだ。2017年度末(2018年3月31日)までには51.2%(891市区町村)に達する見込みとなっている。それ以降の策定を予定する市区町村もあり、「策定予定なし」は268市区町村(15.4%)にとどまる。

2017年3月31日時点における「策定済み市区町村数」の割合を都道府県別にみると、高知県の79.4%を筆頭に、富山県が60.0%、広島県が43.5%、石川県および山口県が42.1%の順になっている。また、2017年度末までの見込み数でみると愛媛県、富山県、高知県が90%を超え、それ以外に10府県が60%を超えるようだ。

だが、2014年10月時点で401の市区町村が「空き家条例」を制定していたことを考え合わせると、「空家等対策計画」の策定がいくぶん遅れ気味の印象もあるだろう。すでに代執行や略式代執行を実施していながら、2017年度末までの策定が予定されていない市区町村も多いようだ。空き家問題が深刻なほど、計画の策定が難しい側面もあるのかもしれない。


「空家対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策特別措置法)が2015年5月26日に完全施行されてから2年あまりが経った。その間、市区町村の取組みはどれくらい進んだのだろうか。国土交通省がまとめた集計資料をもとに、空き家対策の現状を確認しておきたい。



法定協議会は地域によって温度差がある?


空き家対策特別措置法による「法定協議会」については、2017年3月31日時点で設置済みなのが370市区町村にとどまり、全体の21.3%だ。市区町村数に対する割合では広島県、山口県、大分県が5割を超える一方で、1~3市町程度にとどまる府県も多い。空き家率が比較的低い沖縄県は法定協議会がゼロだ。

法定協議会には市町村長が含まれるが、それ以外の所属割合をみると、地域住民(自治会・町内会の役員などを含む)が92%で最も高く、次いで建築士(またはその関連団体)の86%、宅地建物取引士(またはその関連団体)の73%、司法書士(またはその関連団体)の62%、弁護士(またはその関連団体)の56%などとなっている。

それに対して市町村の職員は29%、都道府県の関係部署の職員は24%にとどまり、民間主導の色合いも濃いようだ。ただし、地域のNPO団体等は14%にすぎない。そもそも関連するNPO団体が存在しない市町村もあるだろうが、空き家問題の解決に向けて地域のNPO団体が活動する場が広がることを期待したい。


空き家が放置されると、腐朽、破損が急に進む



空き家の売却における3,000万円特別控除は大都市圏で効果がみられる


空き家対策特別措置法とは別に、2016年度の税制改正により「空家等の譲渡所得3,000万円特別控除」の制度が創設された。1981年5月31日以前に建築された一戸建て住宅などを相続し、空き家のままとなっていた場合にこれを売却すれば、譲渡所得(売却益)から3,000万円を控除するものである。

相続開始から3年目の12月31日までに売却すること、耐震基準を満たさない場合は耐震リフォームをした後に売却すること、もしくは空き家を解体した後の敷地を売却することなど、いくつかの要件を満たさなければならないが、被相続人の取得時期が古いものは売却代金の大半が利益とみなされるケースも多く、3,000万円控除による減税効果は大きいだろう。

国土交通省による今回の集計でも、この控除に必要な確認書(確定申告に必要な書類)の交付実績がまとめられている。それによると、制度が適用された2016年4月1日から2017年3月31日までの1年間で、確認書を交付したのが496市区町村、交付件数は4,477件にのぼったようだ。都道府県別にみると、東京都692件、神奈川県564件、愛知県525件、大阪府390件など、大都市圏での交付が多い。

もちろん、大都市圏は住宅数そのものが多く、空き家あるいはその敷地の潜在ニーズもあることを考えなければならないが、空き家の流通にそれなりの効果があったといえるだろう。ただし、確認書を交付した市区町村の割合は28.5%にとどまり、全県で1ケタの交付件数だったところもいくつかある。住宅需要や価格水準の違いもあり、全国的に有効な制度とはいえないようだ。


いまは一戸建て住宅への対策がメインだが、今後は老朽化したアパートが空き家のまま放置される事例の増加も懸念される



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