空き家・建物活用でダイナミックに変わる静岡・用宗。不動産会社が世界に発信する”まちの魅力”とは

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静岡から2駅。漁師町の用宗に起きている変化


用宗(もちむね)は、静岡駅からJR東海道線で2駅。静岡市駿河区に位置する。
駅を降りると、近くに駿河湾、背後には満観峰があり、山と海の自然に恵まれた静かなまちという印象だ。現在も漁港や水産加工所があり、近隣の焼津漁港と共に古くは近海漁業で発展した漁師町である。とはいえ、どの地方都市も抱える問題の通り、高齢化が進み、空き家が増えてきているのは同じである

この用宗で、変化が起きてきているという。休日には行列ができる海沿いのジェラート店、外国人も訪れる路地裏にある1棟貸しの古民家宿、予約がなかなかとれないイタリアンのお店…。漁師町が少しずつ注目を浴びるエリアに変わりつつあるようだ。

実はこの変化は、ひとつの不動産会社が仕掛けているのだという。その会社は、静岡市内で不動産を展開し、2017年でようやく8期目をむかえたCSA不動産。今回、実際に用宗を歩き、まちの変化と魅力についてCSA不動産の小島社長にお話を聞いてきた。


休日には行列ができるという用宗海岸近くのジェラート店「LA PALETTE(ラ パレット)」。</br>地元の厳選食材を使った無着色無香料のジェラートが味わえる



歩けるまちという魅力。細かく区切られた路地が見せるさまざまな風景


小島社長にお会いすると、「まずはまちを案内しましょう」と、駅からほど近い住宅が建ち並ぶ路地に案内された。
人々が生活のために通っている路地は、細かく繋がり、いろいろな時代の家やちいさな工場や倉庫といった建物が見れる。道ひとつ入るだけでも様々な表情を見せていた。

「歩いてみると、面白いでしょう?まちを頻繁に歩いたり自転車でまわったりしている私でも、“あ、まだこんな路地があったんだ”“この家のつくりは面白いなあ”と、今でも発見があるんです」と小島社長はいう。

「もともと、静岡市内で不動産会社に勤めており主に店舗企画を担当していました。静岡市は世帯年収も多く、住みやすい街ではあるのですが、やはり地域住民だけだとご多分に漏れず少子高齢化が進み、大規模店舗化し、中心市街地ですらシャッター商店が目立ち始めました。良くも悪くも大きな特色がなく、人口が減ってしまい、大型店舗などでプロトタイプ化してしまうとどうやってその後まちを活性化するのかと…。
そのため、地域にも愛される場所でありながら、観光客も呼べる、“地域の良さ”を活かした人を呼び込むまちづくりが必要なのでは…と感じていました。そんな中、静かな漁港があり景色やアクセスも申し分ない用宗の魅力に注目したのです。用宗は駅から程近い多くの路地のある住宅街、道を抜けると見える防風林と浜辺と海、内海の漁港、まちを囲むように小高い山がある、など表情のあるまちなんです」。


CSA不動産の代表取締役社長 小島 孝仁社長。後ろは、蔵を改造したイタリアン&フレンチのお店「KURAYA KATO」



馴染ませるか、目立たせるか…絶妙なバランスで「まちをデザイン」する


用宗で最初に手掛けたのは、2017年7に路地に残る空き家となった古民家3棟を改築した一棟貸しの宿「NIHON IRO(日本色)」と、用宗海岸沿いの道路に面したジェラート店「LA PALETTE(ラ パレット)」である。
古民家の宿「NIHON IRO(日本色)」は天井を高くし開口部を広くとった部屋、ホテルのような水周り、檜風呂など高級ホテルや旅館のような快適性ながら、民家の柱や梁を生かし囲炉裏を備えるなど、どこか懐かしい造りとなっている。ジェラート店は、都心にあるようなお洒落な店舗。本格的なジェラートは、素材を生かした無着色無香料のものでお茶、みかん、わさび、塩、しらす(!)など、静岡の厳選食材を使用している。
また、路地中にある蔵を改造したイタリアン&フレンチのお店「KURAYA KATO」もオープン。観光客だけでなく、地元の奥様方など予約が絶えない人気店だという。

「まちの良さを今以上に引き出すには、古いものをそのまま工夫もなく活用するのも駄目だし、いきなりどこからか借りてきたように目立つものをポンとそこにおくだけでも駄目だと思うんです。馴染ませながら目を引き、目立たせながら土地になじむ…その絶妙なバランスを支えるのがデザインの力、だと考えます」と小島社長はいう。

不動産会社ではあるが、CSA不動産には全社員20名中、3名ものデザイナーがいる。また、世界中のホテルや店舗などのデザインで知られるスーパーポテトにいた人材も抱えているという。


古民家をリノベーションした一棟貸しの宿「NIHON IRO(日本色)」。</br>近所のお母さんたちが作る朝食やしらす漁体験ができるなど、地域の暮らしを体験するオプションも用意されている



路地に残る空き家を「資源」「宝」と考える不動産会社


ここまで見ると、どんどん新しいものを持ち込んでまちを変えているのかと思うが、そうではない。

「このまちにもともとあった建物だけでなく、地元で愛されるおいしいお店やスナックなど、まちの魅力を作ってきたものを大切にしたいと思っています。このまちに来てもらった人には、地元にあるおいしいお寿司屋さんや料亭もぜひ紹介したいし、私も良く利用するんですが、クオリティの高いアジア食堂もあるんですよ」。

まちを歩いていると小島社長はまちの人々に声をかけられる。跡継ぎのいない水産加工場や、抱えている空き家など相談も多いそうだ。だが、まちの魅力に憑かれた小島社長には、路地に残る空き家や倉庫は「宝」に見えるようだ。

「次は、シャッター街になってしまったスナックなどがっていたさな横丁を再生しようと思っています。昭和の雰囲気を生かしながら活気のある場所として再生したいですね。あと、漁港の使わなくなった加工工場を海を臨める温浴施設として再生する計画も進んでいます。晴れた日は駿河湾越しに富士山も見えるので、銭湯絵画のように湯船につかりながら見えるように設計中です。温泉から望む景色は、絶景なはずです」。

現在、まだまだ賃貸物件やホテルやゲストハウスなど複数のプロジェクトの検討が進んでいるという。


用宗の昭和の雰囲気が残る横丁。今はシャッター街となっている



どのまちにもそこにしかない魅力がある。
それを発見して発信するのは、「世界」に向けて


2017年7月から徐々に形になってきた様々なプロジェクトだが、結果はどうなのであろうか?

「もちろん、まだまだ今からなのですが、静岡のTV、新聞、タウン誌で宗が特集でとりあげられたりと注目を集めています。古民家の宿では、具体的にはお話はできませんがハリウッド映画の有名人もお忍びで泊まったりしたんですよ。
私は旅行が好きで、それこそ国内だけでなく海外も数多く行きましたが、どこにもそこにしかない魅力があります。そういった愛すべき特色があるまちは、国が違っても多くの人を惹きつけます。用宗は小さいまちですが、漁港があり、山があり、海があり、歴史があり、そういった良さをひとつひとつ発掘し、魅力をもっと引き出して、世界に発信することが必要だと思っています」。

不動産会社だけでなく、CSA travelという会社を起ち上げているのは、「不動産」と「観光」の視点でまちづくりを行っているからだという。社員には外国籍のメンバーも多く、彼らがまた新しい用宗の魅力を教えてくれることも多いのだとか。

用宗のまちづくりは、地域に残る魅力を大切にした“文脈のあるまちづくり”であった。
今後も、エキサイティングに変化を続ける用宗の「世界発信するまちづくり」に注目していきたい。

■取材協力
CSA 不動産
http://csa-re.co.jp/

CSA travel
http://csa-travel.co.jp/


CSA不動産とCSA travelの用宗の街づくり事業計画より



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