大阪市大正区「ヨリドコ大正メイキン」。取り壊し寸前の長屋がシェアアトリエ+住居+店舗に

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取り壊されるはずだった長屋


大阪市大正区は下町の風情や人情の残る地域だが、高齢化が進み、空き家も増えているため、Iターン、Uターン住人の誘致の試みが進められている。

その一つとして、長屋の空き室を利用してコミュニティ作りに取り組むシェアハウス「ヨリドコ 大正メイキン」が、11月に一部クラウドファンディングの支援なども受けて誕生した。1階は工房スペースと店舗スペース、そして2階は、工房を使用するクリエイターが居住できる住居スペースというユニークな作りで、「運営側が使い方のプランニングに最初から参加したので、無駄のない空間作りになっています」と語る運営の細川裕之氏にお話しを聞くことができたので、紹介しよう。

大正区にある長屋住宅の「小川文化・北棟と南棟」は築65年の長屋。南棟には6組ほど住人がいたが、老朽化が進んでおり、リノベーションするか建て直すか悩んでいた。住宅メーカーやリノベーション会社からは、「取り壊すのが現実的」とアドバイスされていたという。

DIYによる再生に大きく舵を切ったのは、細川氏主催のテングマルシェに、イラストレーターの神吉(かんき)奈桜(なお)さんが参加したのがきっかけ。当事彼女はいつ朽ち果てても驚かないような、築100年ほどのあばら家に住んでいたが、「風呂がないのは当然で鍵もない。虫も出るし、雨漏りもするけど楽しい」とあっけらかんと笑うのを見て、小川文化へ引っ越してこないかと声をかけた。神吉さんの生き方を参考に、長屋を再生できるのではないかと直感したからだ。そしてそれが、小川文化を中心にアーティストのシェアアトリエと住居と店舗を一緒にするという構想につながっていく。


イラストレーターの神吉奈桜さんと運営の細川裕之氏



大正区とのつながり


まず取り組んだのは、リノベーション。
神吉さんが住んでいるのは南棟だが、住み始めたときは、前の住人の家財道具が残っている状態で、改装は家財道具の片付けから始まった。しかしゴキブリの死骸やネズミの糞だらけで、女性一人では手入れも難しく、Facebookに「ヘルプミー人魚棟」というイベントページを立ち上げ、DIYを手伝ってくれる人を募ったのだという。その結果、入れ替わり立ち代わり集まってきた人数は、数十人。その中に、大正区の筋原元区長がいた。大正区は若者の流入や空き家活用に取り組んでいたため、区から情報を流してもらったり、大正区のイベント会場になったりと、つながりができたという。

何より大きかったのは、WeCompassを紹介してもらったこと。Wecompassは総合プロデューサーの川幡祐子さんが、大正区と共に作った団体で、建築士やDIYサポーター、不動産鑑定士はもちろん、弁護士や金融機関も所属する空き家活用のプロ集団。耐力壁を多用して縦の面をつくりながら、金具で補強したり、天井を一枚の厚めの合板にしてねじれに対する耐性をつくったりするなど、耐震や防火にしっかりと対策してもらえたという。


築65年の長屋がオシャレなシェアハウスに生まれ変わった



なぜシェアアトリエにしたか


住居スペースと工房スペースを一体化し、クリエイターを集める発想は、細川氏と小川オーナーが運営する北区のシェアオフィス「ヨリドコワーキン」のノウハウが使えるカタチにしようと考えたから。

さらに、細川氏は、「大阪のクリエイターは環境が整っておらず、東京へ行くしか大きな成功はないという暗黙の了解ができていますが、大阪にはものづくりの歴史があり、働き方や生き方、暮らし方、環境を整えれば十分戦えるはず。しかし、自分の持っているスキルをビジネスに組み立てないまま、なんとなく仕事をしているクリエイターが多く、サポートしてくれる環境が重要です。ヨリドコ大正メイキンには住める、作れる、売れるというハード面があるうえ、運営の私は専門学校でプレゼンの授業を担当したり、私塾を開いてクリエイターが活をしていくための脈の作りや暮らしをレクチャーしており、ソフトのサポートもできるのです」と、参加者をクリエイターに特化した理由を語る。

居住スペースは二階に5部屋あり、それぞれにデザインが違う。201号室はインテリアコーディネーター協会の女性グループがプロデュースした部屋で、鏝絵も使ったかわいらしい雰囲気。202号室をプロデュースしたのは近畿大学の建築学部。木の模様を利用したシンプルな部屋に仕上がっている。203号室は、リノベーション会社のプランナーの有志による、古い建具を利用した個性的な部屋。204号室はWeCompassがプロデュースした部屋で、壁が青い以外はロフト的なデザイン。205号室は大阪市立大学の建築学部の学生が建物の土壁を再利用してユニークな部屋に仕上げた。シャワー室は1階のものを共同で使用。防音の個室も用意されていて、音を出す工作も可能だ。


古い建具を利用した個性的な203号室は、見学者にも人気だ



今後の活動


「オープンするまでに1万人の人に認知してほしいと、耐震改修の見学会、さらに壁紙を貼ったり、柱を磨いたりするDIYワークショップなどを開き、認知度を高める努力をしました」と、大正区では徐々に知られるようになってきているが、12月にはプロレス団体のオフィシャルマスクやグッズを作るクリエイターや、イラストレーター、Tシャツにプリントや刺繍を施すアパレル関係者の3組が入居。入居者の成果物の数が増えたら、入口を販売スペースにする予定だ。さらにクリエイターの数が増えて成果物が増えれば、ものづくりマルシェも開催する計画をしている。

さらに、日常的に入居者のワークショップを開催したり、大正区と提携して、ものづくりの現場を見学してもらうオープンファクトリーイベントの立ち寄り場に入れてもらったりしている。
大正区では、区外の学生や修学旅行生に工場見学をしてもらうよう、計画を進めているが、金属関係の工場が多くて、男子向けの印象。ヨリドコ大正メイキンは女子に喜ばれる場になるのではないかと期待されているそうだ。

現在はまだオープンまもないが、ユニークな室内からは面白いものが生まれ出そうな予感にあふれており、イベントで認知度を上げて住人数も増やしていく予定だ。まもなく販売スペースも登場する予定なので、大正区を訪れた際は、立ち寄ってみてほしい。


一階入口を販売スペースにする予定だ



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