北海道の賃貸事情について調べてみた。寒冷地ならではの物件選びの注意点とは?

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地域ごとに違う賃貸物件の商慣習と物件事情


賃貸物件と一口に言えど、地域が違えばその商習慣や家のつくりなどの傾向に違いがあるようである。

著者は、札幌で生まれ育ち、進学で上京してからは東京、京都を経て、今は北海道の岩見沢で暮らしている。行く先々で賃貸物件を借りてきたが、複数の都市に住んだ経験から敷金礼金などの初期費用や更新料など地域ごとに傾向があることに加え、家のつくりにも違いがあると感じるようになった。

札幌は、人口190万人を越え、東京都特別区、横浜市、大阪市、名古屋市に継いで日本で5番目に人口の多い都市であるが、他の都市と比べると初期費用や家賃相場も低い印象を受ける。
また、北海道から上京した人とよく話すことは、「本州の家は寒い!」ということである。北海道では複層ガラスの樹脂サッシがあたり前なのに対し、東京や京都では単板ガラスのアルミサッシの窓がほとんどであった。北海道は寒いと思われがちだが、家の中は寒冷地ならではの仕様で、意外にも暖かく過ごすことができるのである。

北海道への移住のハードルとして、寒さをネックにする人も多いが、住んでみると意外と快適だったという声もよく耳にする。そこで、北海道の賃貸住宅事情について調べてみようと思う。

大阪の不動産会社勤務を経て、現在は札幌で設計や不動産の売買、賃貸仲介や、シェアハウスの企画運営等を行う株式会社創作工房の取締役齋藤優氏にお話を伺った。


建築設計事務所と不動産エージェントをハイブリットに営む株式会社創作工房・齋藤優取締役



地域ごとに根付く商慣習


札幌で賃貸物件を探すと、敷金0又は1ヶ月、礼金0ヶ月であるところが多く目につく。新築物件でもそのような物件を見つけることができたりする。また、札幌市中央区の家賃相場を見てみると1K/1DKでも平均4.29万円ほど。大都市である東京都や大阪市、名古屋市の中枢区と比べると大きく家賃相場に差が出ていることがわかる。さらに、京都市、仙台市、福岡市、広島市など札幌市よりも人口が少ない地方都市と比較しても、札幌の家賃は低いと言えそうだ。
また、北海道では、更新料が発生しないところがほとんどで、自動更新があたり前となっていることも興味深く、その背景について齋藤氏に聞いてみた。

「京都を例にすると、初期費用が高いのは、古い町屋が今も多く残っていることからもわかる通り、新築を建てやすい場所ではなく、そもそも物件の供給量が少ないからだと思います。また、どこかの物件が初期費用を一度下げてしまうと、競争が始まりどんどんデフレが進んでいく。京都はそういうことがないように家主同士で一定の初期費用を守っているからキープできているのかもしれません。歴史のある京都の文化がそうさせるのかもしれませんね。」

そして、札幌の賃貸事情に関しては、北海道民特有の住まい選びの思考にも関係があるという。
「札幌では、新築など築浅物件を重視する傾向があります。それに加えて、人口も多く市外からの流入もあるため、不動産を取り巻く環境は活況で、他都市と比べて利回りが良い物件が多く、不動産投資家やファンド等のプレーヤーが多く参入しています。賃貸住宅を企画する会社も多く、新築物件が次々と建てられてきた結果、立地条件の劣る物件では新築マンションですら空室が発生してしまうケースも見られています。」
客付けが難しい物件は、敷金礼金を下げざるを得ないのが今の札幌の現状なのだろう。
そういった背景もあり、更新料なんて取れる状況ではないということだった。

また、一般的には賃貸物件の管理会社が仲介も手がけているケースが多いが、札幌では仲介会社と管理会社が明確に分かれ、業務がきちんと棲み分けされている。そのため、どこの仲介会社を通しても賃料が均一化され、住まい手にとっては安心して部屋を借りることができるというのも、札幌独自の嬉しい慣習かもしれない。


ワンルーム・1K・1DK/マンション・アパート・一戸建ての家賃相場表LIFULL HOME



寒冷地ならではの物件を選ぶ際の注意点


北海道とその他の地域との大きな違いは、”気候”であろう。この気候の違いにより賃貸物件の設備が大きく異なっている。
例えば、東京などの地域では夏の暑さ対策のために賃貸物件でもエアコンが備え付けられているケースがほとんどである。だが、北海道などの寒冷地では寒さ対策の暖房器具が必須であり、エアコンのない物件も多い。
寒冷地以外で暮らす人にはなじみがないかもしれない、寒冷地特有の住宅事情を物件選びのポイントとあわせてご紹介したい。

1)水落とし
氷点下になる日が続く北海道の冬は、家を留守にする際には注意が必要である。在宅時は暖房をつけているため心配はないが、一度暖房を消してしまうと家は冷え込み、外の気温と同じになってしまう。そのため家の中に張り巡らされている水道管の中の水までも凍ってしまう可能性があり、家を留守にする際には、水道管の水を抜かなければならないのである。それを「水落とし」や「水抜き」という。この水落としを怠ると、水道管の中の水が凍り、水道管が破裂、家中水浸し、ひどいときには階下の住人にまで迷惑をかけることにもなる。この水落としの方法は、物件ごとに多少異なるため、入居する際にやり方を確認しておいた方が後々のトラブルを回避することができるだろう。最近は、水落としマニュアルなどを用意している管理会社もあるという。

2)暖房器具
北海道では、暖房など冬場のエネルギーの使用量が多いため、入居前に暖房やガスなどのインフラを確認しておく必要がある。賃貸物件での暖房器具は、「ガス」か「石油」が一般的だ。
ガス暖房は、点火が早くすぐに暖まるがランニングコストが高くなる傾向にある。一方で、石油暖房は輻射熱と放射熱を利用し、立ち上がりに時間がかかるが、部屋中を暖めてくれる。しかし、ランニングコストは石油の価格に左右され安定しなく、給油の手間がかかったり、石油独特の臭いが嫌だという人もいる。
どちらもメリットデメリットがあるため、入居の際にはぜひ確認していただきたい。

3)ガス
札幌を例に上げると、都市ガスとLPガスの物件があり、LPガスは会社によって料金がまちまちで使用料も高いため、安価な都市ガスのほうが人気のように思われる。だが、齋藤氏は意外にもLPガス派だという。
「LPガスにもメリットはあるんです。火力が強いし、災害時など停電した場合でもLPガスなら火をつけてお湯を沸かすことができます。また、LPガスもだんだんと廉価になってきていますし、以前は入居するまで基本料金がわからないケースがほとんどでしたが、資源エネルギー庁からも契約料金をなるべく明らかにするよう指導が入っていますので、今後住まい選びの際に暖房給湯についての不安が少しづつ解消されていくと思います。」※

インフラに関しては、日々の暮らしやすさやランニングコストにも大きく関係してくるので、入居の際にしっかりと確認しておいたほうがよさそうだ。

※経済産業省 資源エネルギー庁 平成29年2月22日発表「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令」等の制定について


除雪機を所有している家庭も多く、北海道の冬によく見られる光景。この寒い冬を越すために物件選びにも注意が必要



シェアハウスやカスタマイズ賃貸など新たな住まい方のこれから


全国的にシェアハウスやカスタマイズ賃貸など、賃貸でも多様な暮らしかたが広がってきている。最後に北海道での動向について聞いてみた。

「東京などと比べるとシェアハウスを運営している会社は少ないですし、まだまだ物件も多くはありません。ですが、一定の人気があり、わたしたちも年に一度は新しいシェアハウスをリリースしています。また、DIY可の物件などカスタマイズ賃貸もじわじわと認知度が広まり、特に手に職を持っている職人さんなどは、家を自分の手で改装したい、という方も多く、問合せが増えています。また、家主さんからご相談を受けることも多いですね。」

シェアハウスに関しては、今は札幌に集中しているが、札幌以外の郊外でも可能性がありそうとのことだった。たとえば札幌から車で80分程のところにある余市町のシェアハウス「Azuma」は、オープン前は客付けが心配されていたが、いざオープンしてみるとほぼ満室をキープしている状態だという。余市町は、人口約2万人で、古くから果樹栽培の盛んな地域である。最近ではワインの産地としても注目を集めており、新規就農者などの移住者が増えている地域だ。こういった、移住者が多く一次産業が活性している地域においては、移住とシェアハウスの組み合わせなど、まだまだ伸びしろがあるのではないか、と北海道ならではのシェアハウスの展望を聞くことができた。

北海道に関わらず、地域が違うと気候やそこで暮らすひとの気質も変わってくる。そういったことが住まい選びにも影響してくるということを改めて確認することができた。なじみのない地域での物件選びの際は、そこに根付く商慣習や物件事情を確認しておくことが、よりよい住まい選びへと導くのかもしれない。

取材協力:株式会社創作工房 http://im.sousakukoubou.com/


JR余市駅から徒歩11分のシェアハウス「Azuma」



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