高齢者だけでない単独世帯の「孤独死」の問題。急がれる総合的な防止対策

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65歳以上の単独世帯の増加が止まらない


国内の高齢化が進行する中で「孤独死」の問題が年々深刻化している。

「孤独死」の定義は明確でなく、全国を網羅した統計なども見当たらないが、東京都福祉保健局「東京都監察医務院」がまとめた資料によれば、東京23区内における「一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数」は、2003年に1,451人だったが、その後はおおむね右肩上がりで増えている。2015年には初めて3千人を超え、3,127人に達した。

内閣府が毎年まとめている「高齢社会白書」では、この監察医務院の数値を引用し「孤立死と考えられる事例」としているが、単純計算すれば全国の孤独死者数が年間およそ3万人という推計が成り立つだろう。なお、内閣府では「孤独死」ではなく「孤立死」という用語を使っている。

年間の死亡者数は約130万人(厚生労働省「人口動態統計:2016年」による)であり、国民のおよそ50人に1人が孤独死していることになる。これだけでも決して他人事とはいえない水準だが、急速に進む高齢化の中でさらに悪化することが懸念されているのだ。

孤独死が発生しやすい属性として「65歳以上の単独世帯」が挙げられるものの、夫婦のみの世帯もいずれ単独世帯になる可能性が高い。そこで内閣府の「高齢社会白書」をもとに、1980年から2015年までの「65歳以上の者がいる世帯数の推移」(単独世帯および夫婦のみの世帯を抽出)を表したのが下のグラフである。

2015年時点で単独世帯数が約624万世帯、夫婦のみの世帯数が約747万世帯で、過去30年あまりの間にそれぞれ5~7倍に増えた。さらに、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、世帯主が65歳以上の単独世帯数は2035年に約762万世帯になるとみられている。また、男女別の将来推計を見ると、65歳以上の女性の単独世帯数は女性が男性の2倍以上の水準で推移するようだ。

夫婦のみの世帯数のピーク予測は2020年の約651万世帯で内閣府の数値と大きく乖離しているが、内閣府は「65歳以上の者がいる世帯」、国立社会保障・人口問題研究所は「世帯主が65歳以上の世帯」としている違いに注意しておきたい。


内閣府「高齢社会白書」をもとに作成



孤独死は親族や関係者にも大きな影響を及ぼす


孤独死の原因が何であれ、亡くなられた本人にとって不幸な結果であることに間違いはない。長い時間、苦しんだ末に息を引き取ったのであればなおさらだ。だが、本人だけではなく遺族や賃貸住宅の大家・管理会社、近隣住民、分譲マンションであれば他の区分所有者などにも、孤独死が大きな影響を及ぼすことが少なくない。

遺族は最期の別れができなかったこと、すぐに見つけてあげられなかったこと、あるいは孤独死という結果を招いてしまったことに対して深い後悔の念を抱くことも多いだろう。遺体が腐敗し、その異臭によって発見されたような場合には、近隣の人にも苦い記憶として刻まれることになりそうだ。

亡くなったのが賃貸住宅なら、清掃や残置物の処理、原状回復工事に多大な費用がかかる場合もある。ここに詳しくは書かないが、孤独死から発見までの日数が長かったときは悲惨、いや凄惨というべき状態になることもある。気になる人は立会い経験のある人に聞いてみるとよいだろう。それが「事故物件」になれば、次の賃借人をすぐに探すことは困難で、長期間にわたり空室となるケースも多い。

分譲マンションや一戸建ての場合も「事故物件」扱いになれば、相場で売却することはできない。安値でも処分できなければ、それを相続した遺族は空き家のままで固定資産税や都市計画税、マンションの場合には管理費や修繕積立金を支払い続けることになる。近親者が相続したものの、管理費などが滞納されてしまうマンションも少なからずあるだろう。


誰しも最期のときは孤独にならない環境のなか、安らかな気持ちで迎えたい



さまざまな主体による「見守り」活動が始まっている


孤独死の発生を防ぐために、さまざまな対策も講じられている。法制面では、高齢社会対策基本法などによって総合的な高齢者問題への取組みが進められているほか、2017年10月25日に施行される「新たな住宅セーフティネット制度」では、自治体と民間が協力して「居住支援協議会」を設立し、高齢者などの見守りを含むサービスを実施することが盛り込まれた。

近年、全国で増えているのが、自治体・民生委員や社会福祉協議会、NPO団体、自治会・町内会、民間事業者などが連携した見守り活動だ。ボランティアが定期的に戸別訪問や電話などをするケースが多いものの、配食サービスなどを組み合わせた事例もある。郵便、新聞、宅配などの配達事業者が通常業務の中で異常を察知しようとする取組みもある。

だが、これらの取組みでも目が行き届かないケースは多いほか、団地自治会や町内会、老人会などによる「声かけ」では、担い手自身の高齢化という問題も抱えているようだ。

そこで、たとえば横浜市戸塚区では「みまもりネット」を構築して、地域住民や協力事業者が高齢者などを「ゆるやかに見守る」ことを目指している。「見守る人」「見守られる人」を特定せずに「ちょっと気がかりなこと」があれば、地域ケアプラザや区役所へ連絡する仕組みだ。地域住民と地域ケアプラザのネットワークのほか、協力事業者・協力機関の全区的なネットワークを作るとし、2017年6月時点で383事業者が参加している。

また、県内各地の自治体や事業者と「見守りネットワーク」の協定を結び、孤独死対策を進めているのが神奈川県住宅供給公社だ。居住者・管理会社・公社の三者で「孤独死等防止検討会」を設立して意見交換、情報共有などを進めるほか、管理会社は高齢単身入居者の見守り活動として「ライフサポート事業」を実施している。

2016年度に安否確認をしたのが32件で、16件は生存確認をし、そのうち8件は急を要する状態から救命することができたという。残り16件は死亡確認だったようだが、早期発見につながったことは評価すべきだろう。


孤独死を生じさせないためには、回りの人々がしっかり見守ることも大切



孤独死は若い世代にも多い!?


だが、こうした官民による孤独死への取組みについて「孤独死問題を高齢者問題と断定することは危険」「現在の孤独死対策では不十分。より広い層の孤独死対策を検討すべき」と指摘するのが、一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会による「孤独死現状レポート」だ。

同協会では2016年から「孤独死現状レポート」をまとめているが、2017年3月2日に公表された第2回分(2015年4月~2017年1月:1,095人のデータ)をみると、孤独死の平均年齢は男性が59.6歳、女性が57.8歳となっている。一般的な高齢者対策の対象となる65歳以上より、だいぶ低い印象だろう。

孤独死の男女別死亡年齢の構成比では、いずれも60歳~69歳がいちばん多く、男性が32.4%、女性が22.8%を占める。しかし、59歳以下の総数では男性が40.6%、女性が42.7%であり、およそ半数は「高齢者ではない」ようだ。さらに、女性では20代が9.2%、30代が8.3%にのぼり、39歳以下の割合が合わせて17.5%になる。男性の39歳以下は9.8%であり、若い女性の孤独死が目立つ結果だ。

さらに死因別人数の割合をみると、「病死」によるものが男性は61.2%、女性は49.5%と最も多く、次いで「死因不明」が多くなっているが、「自殺」は男性の11.6%に対し、女性が19.9%にのぼる。5人に1人が自殺という状況は深刻な水準だ。年齢別のデータと合わせれば、「若い女性の自殺による孤独死が多い」ことも考えられ、対策を急がなければならない。

これらは一般社団法人日本少額短期保険協会の協力各社(17社)における保険金支払い実績の中から孤独死事案を抽出したデータであり、全国の孤独死総数からみれば一部にすぎない。また、対象が賃貸住宅居住者であり、高齢者の持ち家比率が高い(対象となる高齢者の比率が低い)ことも考慮しなければならないだろう。

しかし、孤独死問題やその実像を探るうえで、大いに参考にすべき資料だと考えられる。とくに賃貸住宅を貸す側の大家の立場で見れば、「孤独死が心配だから高齢者には貸したくない」というのは、実態に当てはまらない考え方だともいえそうだ。


孤独死は高齢者だけの問題ではない。ひとり暮らしの若い女性などに対するケアも必要



孤独死を防ぐための総合的な対策が急がれる


「孤独死現状レポート」のデータをもう少し見ておくことにしよう。

孤独死から発見までの平均日数は男性が42日、女性が37日のようだ。男女とも過半数が死後14日以降に発見されており、90日以上経ってから発見されたケースも1割を超える。何らかの異変があっても、なかなか周囲に気付かれないような生活環境で暮らしている人も多いのだろう。

また、死後3日以内に発見される割合は男性より女性のほうがだいぶ高い。第1発見者の構成をみると女性は「近親者」(親族、友人、知人、会社・学校の関係者など)が多く、男性は「職業上の関係者」(管理会社、オーナー、福祉、配送業者、警察など)のほうが多い。生前の友人関係や近所付き合い、近親との連絡頻度など、男女間の違いも影響するようだ。

さらに、レポートにまとめられた「損害額」の内訳では、残置物処理費用が平均で196,436円、最大で1,463,400円だったほか、原状回復費用は平均で338,375円、最大で3,413,744円にのぼっている。孤独死した後の状況次第で原状回復費用がかなり高額になるケースもあるだろう。

賃貸住宅の場合、これらをカバーできる保険に加入していればオーナー(家主)の負担額は小さくなるものの、そうでない場合は遺族が多額の請求を受けることになりかねない。遺体の発見が遅れて「事故物件」として扱われるようになれば、オーナーの実質的な損害がさらに膨らむことになる。

いずれにしても孤独死は本人の問題にとどまらず、まわりの人も巻き込む結果になる。近隣との深い関わりが失われがちな現代において、日常生活の中で異変をどう察知するか、ITの活用も含めて今後検討すべき課題は多い。


孤独死問題への対策は、これからますます重要になる。ITを活用できる場面も多いだろう



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