大田区・京浜島、工業団地の鉄工所をアートファクトリーにリノベーションした「BUCKLE KB」

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モノづくりで有名な大田区の一大工業団地・京浜島の鉄工所をアートファクトリーにリノベーション


東京都大田区にある約1km2の人口島、京浜島。地域の大半は工業用地で、島全体が工業団地といっても差し支えないだろう。羽田空港に離着陸する飛行機を間近で見ることができる「つばさ公園」が有名だろうか。
京浜島がある大田区には大小3481の工場があり(2014年12月時点。大田区ホームページより)、日本の製造業の技術を下支えしている。「大田区に図面を投げこむと、どんなものでも翌日には見事な製品になって出てくる」という言葉があるほど、工場から工場へと加工をまわし、高度な技術で難加工、短納期というオーダーに応えてきた。その「大田区の工場の屋台骨」としての役割を担ってきた工業団地が京浜島だ。

しかし、かつては鉄工所の音や火でにぎわったこの島も、時代の移り変わりとともに廃棄物処理場やリサイクルセンターが少しずつ増えてきている。以前と比べ活力が失われつつある京浜島の現況を逆手にとり、ニューヨークのSOHO、ロンドンのEAST END、北京の798芸術区のようなアーティスト達のクリエイティビティにより活性化させようと、鉄工所の一部をアーティストの制作の場としてリノベーションして甦らせたのが「BUCKLE KB」である。その立ち上げに携わったアイランドジャパン(株)代表で、寺田倉庫アート事業企画プロジェクトの伊藤悠さんにお話をうかがった。


東京都大田区、京浜島の鉄工所をアートファクトリーとして活用しているBUCKLE KB。クリエイターの発信の場として注目されている



湾岸エリアをつなぐバックルになりたいとの想いから「BUCKLE KB」と命名


BUCKLE KBが誕生したいきさつは何だったのか。
「この場所は寺田倉庫が目を付けて、須田鉄工所から借りた工場の一角でした。その利用方法について考えていた時に知り合いのアーティストを連れて行ったところ、都内では制作用の広い場所の確保が難しく、また自由に音を出せる環境を探していたこともあり『こういう場所があれば自由に制作ができるに違いない』と興味を示してくれました。そこで2016年の1月に寺田倉庫アート事業企画プロジェクトとしてプロジェクトをスタート。3~5月にクラウドファンディングで資金調達を行い、6月にスタートさせたアートファクトリーがBUCKLE KBです」

名前の由来についてお聞きした。
「この場所がある湾岸エリアをベルトと見立てて、そのバックルとなりたいという想いを込めて『BUCKLE KB』と名付けました。これからも、制作工房を中心に周辺の方々と協力をしながら様々なイベントや企画を開催していく予定です」
現在、2階建ての工場の1階は様々な加工作業ができるオープンなアートファクトリーに、2階はオフィスとアーティストの制作・滞在スペースとして活用している。

「BUCKLE KBで創作活動を行っている方、また出入りしているアーティストは20人ほど。絵を描く方、映像制作を行う方、木工や彫刻を手掛ける方などがメインで、ほかに撮影や収録、音楽関係のライブなどに使いたいという問い合わせがあった場合には場所をお貸ししています」


制作中の「新ゲルニカ」。先日開催された鉄工島FESで大々的にお披露目された



「鉄工島FES」が大成功。イベントを通してまちに溶け込む


2017年9月30日(土)~10月1日(日)の2日間、「鉄工島FES」と題したイベントが大々的に開催された。BUCKLE KBで行われた数々のプロジェクトから派生した鉄工島ならではの作品の展示、漫画家・根本敬が描いたピカソの「ゲルニカ」と同じサイズで制作した「新ゲルニカ」の披露、同作品の前にステージを組んで行う石野卓球や七尾旅人らのミュージシャンによるライブ、映画上映、防災都市ブートキャンプ、大田区~品川区の運河パレードなど、多くの観客を集めて盛り上がりを見せた。

「この場所にBUCKLE KBをつくりましたが、今回のフェスティバル前はまわりの工場の方々とほとんどお付き合いがありませんでした。しかし、フェスティバルの準備をするにあたりあちこちにご挨拶におうかがいしたらものすごく面白くて。ご挨拶を機に色々な方とコミュニケーションをとることができました。また、『ものづくりをする者同士だから』と様々な面で快くサポートしてくださったこともありがたかったですね。イベントを開催するということは、新たなコミュニティや人間関係の構築にも役立つという側面を持っているのだと改めて感じているところです」


大田区や品川区などの行政、観光協会、警察、企業など、様々な機関と連携して盛大なイベントに。ライブは須田鉄工所の一部を</br>舞台にしてBUCKLE KBでしか見られない様々なプログラムを展開。商業目的だと利用できない公園も防災目的では利用可能で、</br>今回のイベントでは「都市防災ブートキャンプ」が開催された(撮影/右下の3点は越間有紀子。左記3点以外は鈴木雄介)



2020年の東京オリンピックに向けて世界中からの注目が高まる東京。その文化発信拠点のひとつとなれるか


BUCKLE KBの立ち上げ、そして「鉄工島FES」の事務局長などプロジェクトの中心人物として牽引する伊藤さん。どのような夢を持っているのだろう。
「BUCKLE KBとしての活動、そして今回のフェスティバルにしても、美術や音楽など、それぞれのジャンルの中だけで活動していたら見つからないことがたくさんあると思うのです。お互いの領域を横断することでいつもと異なるクリエイティブなこと、より面白い取り組みを試すことができ、その結果この場所の使われ方もより多様化して豊かになると考えています。相乗効果として、ここで活動するアーティストの知名度が上がるなど社会との接点が生まれれば嬉しいですね。同時にオーナーである須田さんや東京都、大田区をはじめとした行政、そして企業の方々がこのようなアート事業への意義を感じてくださればとても喜ばしいことだと思います」

羽田空港にほど近い京浜島にあるBUCKLE KB。アートやものづくりの情報や人材が交流するハブになることを目標に、国内だけでなく、北京・上海・香港・台湾などのスタジオ・アーティストと交流できる空間として機能させることも視野に入れている。
「日本で生まれる絵画や音楽などの芸術を、海外の方にも見ていただけるような場所になれると幸せですね」と伊藤さん。

2020年の東京オリンピック開催に向け、ますます外国人の注目が高まる東京。BUCKLE KBがその国際的な文化発信拠点のひとつとなるか、今後の取り組みに期待したい。

■BUCKLE KB/
https://buckle-kobo.tokyo/ja/


お話を伺ったアイランドジャパン株式会社代表の伊藤悠さん(左)と、株式会社須田鉄工所代表取締役の須田眞輝さん。「以前須田さんに『BUCKLE KBが来てくれたことで島の雰囲気が変わった。色んな人が来ることで色んな出会いがあって楽しい』と言っていただけた時は嬉しかったですね」と伊藤さん。「満足できる作品をつくりたいというのが先で、我々のように商売が先ではない。アーティストと話をするのは楽しいですね」と須田さん。今後も地域に溶け込み、貢献しながら活動を続けていくことだろう



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