高齢者の居住支援「住まいサポートふくおか」が成果をあげている理由とは?

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新たな住宅セーフティネット制度は低調な滑り出しだが……


国は2017年10月25日に「新たな住宅セーフティネット制度」をスタートさせた。高齢者や低額所得者、障がい者などの「住宅確保要配慮者」に対して、「入居を拒まない賃貸住宅」をあらかじめ登録することが一つの柱となっている。登録をすることにより、家主はさまざまな支援制度や、一定の改修工事に対する補助や融資制度などを受けることができる。

しかし、2018年1月初旬時点の登録住宅数は、全国で10件、43戸にすぎない。一部地域でまとまって登録されている例もあり、41都府県は「ゼロ」のままだ。登録制度が始まってからまだ期間が短いとはいえ、かなり低調な滑り出しだといわざるを得ないだろう。

その一方で、国とは異なるアプローチで高齢者の居住支援を実施し、既に一定の成果をあげている事例があるという。福岡市居住支援協議会による「住まいサポートふくおか」の取組みだ。

現状では65歳以上の単身高齢者または65歳以上の人のみで構成される世帯(65歳以上の人と障がい者など配慮が必要な人のみで構成される世帯を含む)を対象とする制度のようだが、いったいどのような工夫が凝らされているのだろうか。協議会の事務局である、福岡市住宅都市局住宅部住宅計画課居住支援係の小幡潤也氏、福岡市社会福祉協議会地域福祉部地域福祉課の栗田将行氏にお話を伺った。


お話を伺った福岡市住宅都市局:小幡氏(左)、福岡市社会福祉協議会:栗田氏(右)



支援団体によるプラットフォームを構築


高齢者が民間賃貸住宅へ入居しようとしても、「保証人」や「緊急連絡先」を確保できないなどといった事情がネックになることも多い。このあたりはどのような対応をしているのだろうか。まず「住まいサポートふくおか」の概要について聞いてみた。

「これは高齢者の民間賃貸住宅への入居にあたり、協力店(不動産事業者)や支援団体(民間企業やNPO)、福岡市などと連携して、福岡市社会福祉協議会がコーディネートする仕組みです。民間賃貸住宅への入居に協力する不動産事業者は現時点で37社、入居中のさまざまな生活支援を担う支援団体は14団体となっています」(栗田氏)

そして、支援団体が提供する入居支援サービスには次のようなものがあるという。
□ 見守り(定期的な安否確認、見守りセンサー、定期訪問など)
□ 緊急時対応(119番通報、協力員等による駆けつけなど)
□ 専門相談(弁護士、司法書士、行政書士による各種相談)
□ 生活支援サービス(NPOやボランティア等による家事、買い物、外出等の支援)
□ 権利擁護(成年後見受任、福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理など)
□ 死後事務委任(行政への諸手続、関係者への連絡など)
□ 家財処分(家財回収、処理、片付けなど)
□ 葬儀(納棺、火葬など)
□ 埋葬・納骨(永代供養、共同墓等への納骨など)
□ 医療・介護・保健サービス等のコーディネート

「高齢者の入居にあたっては、孤独死やその後の処理を懸念する家主側の問題だけでなく、毎日の生活や自らの死後を心配する入居者本人の問題もあります。そこでこれらの支援団体(プラットフォーム)が、いわば『家族の代わり、親族の代わり』となってさまざまな手助けを行い、双方の心配ごとを解消していこうというものです。また、入居にあたっては家賃債務保証会社なども活用しています」(栗田氏)


「住まいサポートふくおか」のパンフレット(表紙)



一人ひとりの状況に応じて必要なサービスを選んで提案する


高齢者の生活に特有のさまざまな場面を想定して入居支援サービスを用意しているようだが、これらは誰でも利用できるのだろうか。

「ひとくちに高齢者といっても、おかれた状況や希望は一人ひとり異なります。そこで、まず初めに社会福祉協議会がヒアリングをして、その人に必要だと考えられるサービスを取捨選択し、提案させていただきます。また、サービスを受けるためには入居者がそれぞれの支援団体と契約することが必要です」(栗田氏)

「住まいサポートふくおか」の事例紹介をみると、社会保険料や前住居での家賃などを滞納している高齢者のケースもあるようだ。

「家賃の滞納などがあると自身で転居先を探すことは一層困難ですが、社会福祉協議会がその返済計画なども含め細かくコーディネートすることで入居可能になることもあります」(栗田氏)

「福岡市の事業として24時間対応のコールセンターによる、ひとり暮らしの高齢者のための定期的な電話による安否確認なども実施しています」(小幡氏)

現在は高齢者を対象とする事業だが、今後、他の「住宅確保要配慮者」にも拡大する予定はあるのだろうか。

「いまのプラットフォームはいずれも高齢者仕様となっていますが、将来的に他へ広げる構想ももっています。しかし、単純に仕組みをつくれば良いというわけではなく、求められているものが何かをしっかりと見極めて土台づくりをしていかなければなりません。また、社会福祉協議会では社会貢献型空き家バンクの設立準備をしていて『空き家を探して福祉でつかう仕組みづくり』にも取り組んでいるほか、入居者から遺贈された財産を福祉のために活用していくことにも取り組んでいます」(栗田氏)


「住まいサポートふくおか」の関係図(福岡市社会福祉協議会資料より引用)



さまざまな事業の経験をもとに発展させた「住まいサポートふくおか」


福岡市は持ち家の割合が少なく(全国平均:61.7%、福岡市:36.8%)、共同住宅の割合が多い(全国平均:42.4%、福岡市:77.6%)といった特色があるようだ(数値はいずれも「平成25年住宅・土地統計調査による)。その一方で、高齢者のいる世帯における高齢単身世帯の割合は全国平均よりも4割ほど多く、福岡市では比較的早い段階からさまざまな形で住宅セーフティネットの構築に取組んできたようである。それでは、新たに「住まいサポートふくおか」をスタートさせるまでにはどのような経緯があったのだろうか。

「福岡市では平成15年から高齢者を対象にした民間賃貸住宅入居支援事業を実施し、主に日常の見守りや死後事務などを担っていました。この事業をさらに発展させ、平成23年6月に福岡市社会福祉協議会の独自事業として『ずーっとあんしん安らか事業』をスタートさせています。これは、契約者からあらかじめ預託金をお預かりし、亡くなったときに預かった金額内で葬儀・納骨・公共料金などの清算・家財の処分などを行うものです」(小幡氏)

「そして平成26年10月にスタートしたのが『住まいサポートふくおか』の取組みです。当初は厚生労働省の『低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業』の指定を受け、福岡市から福岡市社会福祉協議会に運営を委託して実施していましたが、現在は福岡市居住支援協議会が事業主体となり、福岡市と福岡市社会福祉協議会が共同事務局として運営にあたっています」(小幡氏)

「平成29年度からは『やすらかパック事業』も始めました。これは保険の仕組みを利用し、社会福祉協議会と死後事務の委任契約を結んで利用料を支払うことで、直葬(通夜・告別式を行わない形式)、納骨、家財処分、役所の手続きなどを行うものです。本事業が緊急連絡先の役割を担うわけですが、いつ何が起きるか分からないという気苦労もあります」(栗田氏)

「平成23年に始めた『ずっとあんしん安らか事業』は女性の利用が多く、平成29年に始めた『やすらかパック事業』は男性の利用が多いという特色もあります。一見すると似たような仕組みでも、それぞれのニーズを汲み取って設計することが大事だと思います」(小幡氏)


住宅セーフティネット制度がうまくいかない事例も多いなかで、一定の成果をあげている「住まいサポートふくおか」の取組みは何が違うのか。その仕組みや特色について、福岡市の担当者にお話を伺った。



コーディネートのためには不動産、福祉、両面での知識・スキルが欠かせない


「住まいサポートふくおか」による入居者の推移をみると、直近の2年間では月平均5.3件の成約があるようだ。また、相談に訪れる人も多く、本人からの相談は延べ約500人になるほか、親族や関係機関などからの相談もあるという。「住まいサポートふくおか」の取組みが比較的順調に稼働している要因は何だろうか。

「大事なのはノウハウや人脈の積み上げだと考えています。入居を希望する高齢者とのコミュニケーション、さまざまな支援団体との連携、それをコーディネートする人のスキルなど、必要な要素はいくつもあります。とくにコーディネーターには住宅問題、福祉問題の両面で多くの知識が求められます。これまでの活動を通して、スキルを高めた人材も育ってきました」(小幡氏)

「高齢者の入居という観点だけでみると不動産取引の枠組みのなかで捉えられがちですが、そこには福祉の目線も欠かせません。その知識の重要性を理解したうえで、専門スタッフをおく不動産会社も出てきました。また、支援団体においては年に1回『プラットフォーム連絡会議』を開催し、さまざまな情報交換や話し合いをしています」(小幡氏)

住宅セーフティネットをうまく稼働させていくためには、「住宅確保要配慮者」と一括りにして一律のサービスを提供するのではなく、一人ひとり異なるニーズに耳を傾け、必要なものをしっかりとコーディネートしていくことが大切なのだろう。地域の実情に応じて求められる内容も異なるはずだ。サービスを提供するうえで、「不動産」という枠にとらわれることなく、さまざまな立場の者が密に連携していくことの重要性を感じる取材だった。


入居者のために何が必要なのか、関係者の連携協力、情報共有も欠かせない(福岡市社会福祉協議会資料より引用)



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