「家族増えたよ」伝えたい=母亡くした元井さん-中越沖地震、16日で10年・新潟

時事通信社

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新潟県中越沖地震から10年を迎え、亡くなった母について振り返る元井春夫さん=13日、新潟県柏崎市

 新潟県中越沖地震の発生から16日で10年。震度6強を観測した同県柏崎市では14人が死亡した。母親を亡くしたタクシー会社社長の元井春夫さん(62)は「この10年で家族が増え、にぎやかになった。母には元気にやっているよと伝えたい」と静かに話した。

 2007年7月16日午前10時13分。自宅2階にいた春夫さんは、下から突き上げるような激しい揺れを感じ、1階に駆け下りた。台所近くのいすに座っていた母親の元(はじめ)さん=当時(77)=が倒れ、ガラス製の引き戸が2枚覆いかぶさっていた。「大丈夫か」。呼び掛けながら体を起こすと、頭に傷ができていた。立ち上がった元さんは近所の住民を心配し、外に出て声を掛け続けた。

 異変が起きたのは昼すぎ。自宅に戻り、眠っていた元さんが苦しそうにいびきをかき始めた。救急車で病院に運んだが、その日の夜に亡くなった。くも膜下出血を起こしていたという。

 春夫さんら家族は病院で、ぼうぜんとしたまま夜明けを迎えた。物が散乱した自宅を片付け、ようやく元さんを連れ帰った。「言うべきことをはっきり口にし、時に厳しい母だった」と春夫さんは振り返る。

 地震後、元さんが大切に耕していた田畑は、春夫さんの妻美知子さん(62)が受け継いだ。春夫さんは勤務先のタクシー会社で社長になった。警察学校の学生だった長男道行さん(33)は結婚。警察官として働き、子どもが2人生まれた。春夫さんは亡き母を思い、「かわいがっていた孫に子どもができ、びっくりしているだろう」と話す。

 柏崎市で行われる中越沖地震の追悼式で、春夫さんはほぼ毎年、遺族代表として地震の恐ろしさや復興に向けた胸の内を語り続けてきた。中越沖地震の後も、東日本大震災や熊本地震などの災害で多くの犠牲者が出た。春夫さんは「10年で風化させてはいけない。常に危機意識を持ち、すぐに避難ができるよう備えをしておくべきだ」と力を込めた。 

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