アングル:課徴金取り消し、高裁インサイダー基準が監視委拘束か

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7月14日、金融庁が出した課徴金納付命令の取り消しを元金融コンサルタントが求めた裁判で、国は最高裁判所への上告を断念し、初めて課徴金命令の取り消し判決が確定した。6月撮影(2017年 ロイター/Issei Kato)

[東京 14日 ロイター] - 金融庁が出した課徴金納付命令の取り消しを元金融コンサルタントが求めた裁判で、国は最高裁判所への上告を断念し、初めて課徴金命令の取り消し判決が確定した。

金融庁や証券取引等監視委員会の幹部は、法律解釈ではなく事実認定で敗れたため、監視委の調査などへの影響は限定的とする。しかし、東京高等裁判所が示したインサイダー情報取得の認定基準が先例となり、拘束力を持つ可能性が一部の弁護士から指摘されている。

<「伝播」とは何か>

今回の訴訟の主な争点は、1)2010年に発表された東京電力の公募増資を巡り、主幹事を務める野村証券の営業社員(当時)が未公表の重要情報を入手したか、2)元営業社員から元金融コンサルタントにその情報が伝わったかーーの2点だ。

一審の東京地方裁判所、二審の東京高裁はともに、金融庁・証券監視委の事実認定を退け、野村証券の当時の営業社員による重要情報の入手はなかったと判断、課徴金命令を取り消した。

6月29日、東京高裁(阿部潤裁判長)は一審の判断を支持し、国の控訴を棄却した。判決では「本件重要事実が野村証券内部において営業員に伝播したものとは認められない」と指摘した。

控訴棄却を受け、金融庁は証券監視委、法務省と最高裁に上告するか、検討に入った。その際、幹部たちの議論は、判決文に頻出したある文言に向かったという。

伝播とはどういう意味なのか――。一部の幹部は「判決理由を読むと、『伝播』が意思を持った情報伝達と読める。これはわれわれの主張と異なる」と指摘。法律の解釈を争うため、上告すべきだと主張したという。

国は裁判で、金融商品取引法では、職務に関し、インサイダー情報を「知った」としか規定しておらず、意思を伴った「伝達」まで立証する必要はないとの法律論を展開した。

これに対し、判決理由では「伝播」が「知った」や「伝達」とどう違うのか具体的な説明がなく、幹部からは「裁判所が何を言いたいのかわからない」といった声も漏れた。

一方、「判決ではわれわれの法律論通りの部分も多い。法律論について、国の主張が明確に否定されたわけではない」との意見も根強く、最高裁に上告しないとの判断に傾いたもようだ。最高裁では事実認定を再度争うことができないことも、上告断念の1つの理由になった。

「今回は証拠が足りなかったということだ。敗訴は仕方がない」、「監視委の調査手法や制度を揺るがすものではない」との声が金融庁や監視委の関係者から出ている。

<先例としての拘束力が発生か>

だが、法律家からは今回の国の敗訴が今後の監視委の調査に影響を及ぼすとの声が出ている。

ある弁護士は高裁判決を重視、「今後は、未公表の重要情報が社内で伝播したルートを明確に立証しなければいけない」と話す。そのうえで、伝播したルートの立証が困難な場合が出てくると指摘する。例えば、携帯電話やパソコンを使わず、立ち話で重要情報を伝え、当事者が否定し続ければ、その立証は難しい。

岩田合同法律事務所の鈴木正人弁護士は、事実認定が微妙な事案について「今回の基準に照らして裁判所を説得できるのか、との観点から監視委内でより慎重な検討が行われるのではないか」とみている。

課徴金制度が創設されて12年、課徴金命令の取り消し判決が初めて確定した。麻生太郎金融担当相は14日の閣議後会見で、高裁判決を受け止め、制度の適正な運用に努めると述べた。

(和田崇彦 編集:石田仁志)

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