鉄道よお前もか。運賃値上げラッシュ(上)

ジョルダンニュース編集部

 今年に入り、鉄道各社が次々と運賃改定(値上げ)に動いています。鉄道は公共性が強いので、値上げには国土交通省の認可が必要ですが、すでに東急は国の認可を受け、2023年3月から値上げをする予定です。前回の値上げは05年3月。消費税実施に伴う値上げを除くと18年ぶりになります。
 内容をみると、平均値上げ率は12.9%。大人の初乗り運賃はICカードで126円→140円、切符は130円→140円と、カード、切符が同額になります。東京・渋谷~横浜間は切符で280円から310円に。同区間の1か月の通勤定期は1万1510円と1400円のアップです。ただ、通学定期は家計の負担を考慮して運賃は据え置きにしています。

すでに国の認可を受け、来年3月に値上げをする予定の東急

安全対策費と利用者減で収益悪化


 値上げの理由ですが、安全性を高めるための設備投資と利用者需要の減少で収益が悪化したことが大きな原因です。安全関係の設備投資で東急は先駆的ともいえ、ホームドアは、ほぼ全駅(低速の世田谷線、こどもの国線を除く)に備えられていますが、一般的に1駅あたり数億円の費用がかかるといわれています。それに設置して終わりではなく、維持管理費がかかります。これは東急に限りませんが、1ホームで年間数百万円。また、ホームドアなどの耐用期間は長くて20年と言われ、設備の更新投資も計画しておかないといけません。
 ただ、その効果は著しいものがあります。東急の資料によると、14年度には131件あったホームからの転落事故は21年度には7件と激減しています。

転落事故の防止に効果があるホームドア

コロナが追い打ち、需要回復は期待薄


 そうして安全投資を重ねていたのですが、そこを襲ったのが新型コロナ。在宅勤務が増え、今後、コロナ禍前のような需要は期待できないと判断したようです。国が運賃値上げ申請を認可するのは、3年連続で赤字が見込まれるなど経営環境が厳しい場合だといわれています。一時的な需要の減少ではなく、社会構造が変化したというわけです。
 東急と同じように運賃の値上げに動いたのが近鉄。設備投資と需要の減少などのため、23年4月から平均17% の値上げをしたいと4月15日、国に申請し、9月2日認可されました。値上げは消費増税を除くと1995年以来、実に28年ぶり。5月に入ると、京王や京急が、6月には名鉄も値上げを検討していることを明らかにしました。8月26日にはJR四国が来年春から普通運賃、定期など平均12.82%の値上げを国に申請しています。
 これらの値上げは国土交通省に値上げの認可を求めるものです。JR西日本も23年4月に関西の電車特定区間(私鉄との競争上、割安な運賃が設定されている京阪神などの区間)で運賃を平均5.1%値上げしますが、こちらはもともと距離の割に安く運賃を設定していたので、国へ認可を申請する必要はなく、届け出のみで実施できます。
 ところで鉄道に関しては運賃以外に「料金」も存在します。実は料金の方も新しい動きが相次いでいるのです。(下)に続く。

池永尚嗣(いけなが・たかし)
1957年生まれ。大手全国紙で経済部、支局長、紙面審査委員などを経て22年7月退社。17年から順天堂大学国際教養学部非常勤講師。20、21年度京都大学公共政策大学院非常勤講師。
記事提供元:タビリス