鉄道よお前もか。運賃値上げラッシュ (下)

ジョルダンニュース編集部

 運賃と料金の違いを皆さんはご存じでしょうか。国土交通省によると、「運賃」とは、「人または物品の運送に対する対価」で、「料金」とは、「運送以外の設備の利用や付加サービス、役務の提供に対する対価」のことです。特急やグリーン料金、入場料ですね。前回の(上)で示したのは運賃値上げで、JR西日本が電車特定区間で実施する値上げ以外は国交省の認可が必要です。

バリアフリー化促進で料金加算


 一方、昨年12月28日、国交省は鉄道駅のバリアフリー化を促進するため、新たな料金制度を始めました。それが「鉄道駅バリアフリー料金制度」。国の資料によると、ホームからの転落件数は2019年度で2887件(自殺者を除く)もありました。原因の過半数は酔客で、携帯電話使用というのも45件。直近のピークだった2014年の3673件から徐々に減少していますが、まだまだ高い水準です。そこで幅広く利用者に料金を負担してもらい、ホームドアやエレベーター、エスカレーターなどの整備・維持に充当しようというわけです。使途を安全投資に限定し、料金は1回乗るたびに10円前後を運賃に加算。想定されているのは東京、大阪、名古屋のJR各社や大手私鉄です。


乗車1回10円、定期利用は通勤のみ、通学はなし


 すでにJR東日本が4月に届け出をしていて、乗車1回あたり大人は運賃に一律10円(IC運賃も)の料金が加算されます。通勤定期は1か月で280円、3か月790円、6か月1420円が運賃に加算されますが、通学定期には加算されません。東京の電車特定区間を利用する際に来年3月ごろから実施予定です。電車特定区間というのは大阪にも設定されていますが、私鉄と競合するため、運賃が割安になっている区間のことです。
 同社によると、これで年間230億円が徴収できる見通しで、徴収期間は当面2036年3月までの13年間。総徴収額は2990億円となります。膨大な金額ですが、徴収期間中の総整備費は5900億円。それで整備が終わるわけではなく、JR東日本は2036年3月以降も徴収を続けることになりそうです。

(JR東日本提供)


(JR東日本提供)

 JR東日本に続き、東京メトロや東武も来年春のバリアフリー料金を導入すると4月に発表。東武の内容は9月20日現在、まだ不明ですが、東京メトロはJR東日本と同じく一律10円を加算します。
 鉄道駅バリアフリー料金制度を使おうという流れは8月に入り、一気に加速します。関東では小田急、西武が2023年春から乗車1回あたり一律10円を徴収すると発表。関西でも8月に入って阪急、阪神が2023年4月から徴収を始めることを発表し、その後、京阪や大阪メトロも追随しました。割安だった特定電車区間の運賃値上げを3月に発表していたJR西日本は、バリアフリー料金制度も導入することを決め、8月19日に国に届け出ています。こちらも乗車1回あたり10円を来年4月から徴収する予定です。

(JR西日本提供)

 1872年(明治5)の10月に日本初の鉄道が新橋~横浜間に開業してから今年で150年。151年目に入る来年春は、運賃の値上げや新たな料金負担で厳しい春になりそうです。(了)

池永尚嗣(いけなが・たかし)
1957年生まれ。大手全国紙で経済部、支局長、紙面審査委員などを経て22年7月退社。17年から順天堂大学国際教養学部非常勤講師。20、21年度京都大学公共政策大学院非常勤講師。

鉄道よお前もか。運賃値上げラッシュ(上)
記事提供元:タビリス