10倍堪能!海外旅行の超スキル⑥ ピンポイントで現地ツアーを 小柳淳

ジョルダンニュース編集部

 海外旅行をするとき、団体パッケージツアーにするか、個人旅行にするか、悩むところ。パックなら添乗員と現地ガイドがいて、知らない街も観光地も心配なし。食事だって付いている。このメリットはそのままデメリットにもなり、個人旅行なら初めての街をワクワクドキドキしながら歩き、観光地では自分の好きな時間配分ができる。食事はお腹の空き具合や好みに合わせてメニューを選べる。便利で手軽さと自由気ままのどっちを採るか。私は多少(かなり?)効率が悪くとも自由さの方を優先しているけれど、ツアーもいいなあと感じるときがある。

団体扱いで美味しいとこどり


 ローマへ航空便とホテルだけ手配する個人旅行で出かけた。ホテルは地の利を考え中央駅であるテルミニ駅そばに。ここなら、駅前バスターミナルもあって、市内縦横に走る路線バスも便利。ローマの下町トラステヴェレで夕食。自由気ままだった。

ローマの下町、川向こうのトラステヴェレ

 ひとつだけ違ったのはバチカン(ローマ市内にあるが、イタリアとは別の国)に行く方法で、駅前から出るバスツアーを予約したことだ。東京のはとバスのようなツアーで、幸い日本人向けがあってガイドも日本語。これが大成功で、自由さと団体のメリット双方を得た。最大のポイントはバチカン美術館・システィーナ礼拝堂入場。世界中から観光客が集まるここは、入口が個人用と団体用に分かれていて、個人用には毎日非常に長い行列ができる。このツアーバスは団体扱なので、長蛇の行列を数百人抜きであっさり入場できた。作品と館内の解説を聞くと解散。あとはじっくり1日いても、駆け抜けても自由。後半は完全に自由旅行者になった。

日本人向けツアーに参加し、ラクラク闘牛場見学


 スペインマドリード。闘牛のシーズンだったので見てみたかったが勝手が分からない。闘牛場の席はカテゴリーがいくつもあって良し悪しが決められない。これはバチカン経験が生きて、日本人向けツアーを見つけた。指定ホテルに集合し、闘牛観戦マナーの説明を受け、闘牛のプログラム(スペイン語だが)をもらう。バスでラス・ベンタス闘牛場へ連れて行ってもらい、陽射しを避けられる、程良い席に着くことができた。こちらも観覧席で「解散」である。帰路は闘牛場の前から地下鉄もバスもあったので、困らなかった。

闘牛は午後の陽射しが難しい

多少分からなくても英語ツアーを楽しむ


 日本人向けや日本語のツアーは意外とたくさん設定されているが、もちろんないときもある。その場合は、英語か自分の分かる言語のツアーとなる。ツアー会社もビジネスなので、英語が得意でない人でもお客として扱ってくれるから過度な心配は不要。外国語ツアー参加時の要点はガイドのそばにいること、見失わないことだ。一時解散のときは集合場所・時間を納得いくまで確認する。「13:45、this point(here)」などメモにして見てもらうのも一つの手段。きちんと自己主張をして納得する、そういう姿勢は必須。英語の説明があまり理解できなくても、ガイドの方を見るようにする。適度に相槌をうって「聞いているよ」というサインを送るのも相手に良い印象を与える。言葉での難しい理解は無理と割り切れば、それなりに楽しめる。

ガイドツアー参加必須のノーベル賞受賞会場ストックホルム市庁舎に日本語はなし

 スペインやドイツなどではガイドにとっても英語は外国語で、意外に聞きやすい。ただ、母語に引っ張られて発音やアクセントが変わっていることがある。トレドでのこと。エル・グレコの絵の前で「マントルピース」と言われて、「暖炉!?」と不思議に思っていたら、何回か聞いて「masterpiece(傑作)」のことだと分かりホッとした。

個人旅行で周遊も


フィヨルドの深い峡谷

 個人旅行は自由な反面、周遊旅行には向かない。バックパッカーのような旅なら別だが、スーツケースを持ってあちこち巡るのは辛い。そのため、私は1週間程度の旅でも宿泊都市は2箇所くらいまでにしている。ノルウェー旅行を計画したときのこと。首都オスロと北海に面したベルゲンに行きたい。この2地点間には急行の走る鉄道があるので移動は問題なし。しかし、その間にある山岳地帯や内陸奥深く入り込んだフィヨルドも見たい。こうなると周遊旅行のパックツアーが便利。しかし、両端の都市は自由に歩き回りたい。このとき知ったのは、1泊2日の現地ツアーがあること。オスロからバスで出発し、途中でベルゲン急行にも区間乗車し荒涼たる高山風景を楽しみ、山岳ホテルに泊まり、切れ落ちる峡谷のフィヨルドを船で進む。食事は参加者全員同じメニュー。大きな荷物はバスで一緒に運んでくれる、パックツアーの良さを享受した。終点ベルゲン解散後は、市内を散策し、夕食のレストランを探す。個人旅行に復帰した。
(写真:小柳淳)

小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏3県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。

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記事提供元:タビリス