10倍堪能! 海外旅行の超スキル① コロナ禍空白で鈍った勘 小柳淳

ジョルダンニュース編集部(ジョルダン)

パリ、マレ地区セヴィニェ通(Rue de Sévigné)

「やはりパリにしようかな」
 久しぶりに会った旅好きの友人が言う。彼女が特にフランスやパリが好きなのではない。前に会ったときに、私はコロナ禍が明けた最初はパリかヘルシンキにしたい、と話していた。そのとき彼女はアドリア海を挟んでイタリア対岸のアルバニアに行きたいと言っていたのだ。それが、彼女もパリなどと言う。
 なぜか。

「慣れ」こそ旅の上手なれ


 旅好きで、しかも個人旅行好きにとっては航空券やホテルの手配から始まって、チェックイン、トランジット(乗換え)、街なかでのバスやタクシー、食事もチップもなんでも自分で判断して行う。個人旅行だから当然といえば当然だ。添乗員はいない。しかし、これにはある程度の「慣れ」や「勘」が要るのだ。そこで、友人と前に会ったときの気楽な旅談義の中で、コロナ禍で2年以上海外への旅をしていないので、その勘が鈍っていると話した。だから、復活最初の海外は、海外空港での乗継ぎがなく、直行便で行けて一都市で楽しめるところにしたいと考えていると語ったのだ。弱気と言えば弱気な話ではある。
 彼女はその会話を覚えていて、いろいろ考えて「直行便説」に同意したらしい。もちろん、パリは素敵な街だし、見どころもたくさん、おいしいものもたくさん。決して次善の場所などと思ってはいない。

国際空港、多言語の表示を読み解きながら移動


小さな旅で気づく勘の低下


 海外の街を歩いているときに目は前を見ていても、微かに後方にも自然と意識を向けている。スリやひったくりの警戒である。治安のレベルが日本と異なるのだが、こういったことが自然にできるには慣れによるところが大きい。
 先日、国内線の飛行機に乗った。スマホなどの充電用リチウムバッテリーは預け荷物には入れてはならない。前日に大きいバックの充電器やケーブルのポーチからバッテリーだけ抜き出して、小さなカメラバックに入れておいた。それ自体は正しいのだが、もうひとつのバックだって預け荷物ではないのだ。国際線ではいつも預けるスーツケースと意識が混同していたのだ。そういえば、充電器と一緒に持つBFやCなどという外国コンセントに合わせたプラグも長く使っていない。

鹿のように悠然と旅をしるのも良いなあと感じる


復活後は初心に立ち返って安全に


 昨年秋の旅では、ある離島を考えていたのだが、何回も行ったことがある奈良にした。よく知っていて、交通の便も良いところなら、旅の「慣れ」が多少低下していても問題なしと考えたのだ。
 さあ、そろそろ旅が自由にできそうな日々が来そうだ。欧米ではもっと先行しているようだし、日本発着の旅行だってそれほど遠い先ではないだろう。新型コロナウイルスに限らず、いつも病気や事故のリスクはあるものだ。今回の疫病流行でそれに改めて気づいたのだから、慎重さと繊細さを備えた旅にしたい。特に、いつもテキパキと個人旅行をしている人にとって、旅のスキルが鈍っているかもしれない、と気づくことは大切だ。旅復活の最初のうちは初心者の謙虚さで安全な旅を心がけよう。
(写真:小柳淳)

小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏4県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。