人気が下火となったディーゼル車 欧州はEVにシフト、現地で人気のマツダは開発に奮闘続けるが

J-CASTニュース

   ガソリンではなく軽油を用いるディーゼルエンジンは、かつて欧州で人気だった。欧州メーカーが積極的に開発した新世代のディーゼルエンジンは「クリーンディーゼル」ともてはやされていた。 ところが2015年9月、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)がディーゼルエンジンの排ガス試験で不正を働いていたことが発覚し、ディーゼル車の開発と販売は一気に下火となった。

かつて欧州乗用車市場で54%を占めた

   かつてトラックやバスのディーゼルエンジンは黒鉛をまき散らし、騒音や振動が大きかった。これに対して、クリーンディーゼルは燃料噴射を最適化するなどの技術革新で、これらの欠点を克服。燃費と環境性能に優れた新世代エンジンと目され、欧州の乗用車市場ではディーゼル車のシェアが2014年に約54%を占めた。

   ところがディーゼルエンジンで環境規制に適合するには、VWが不正を働かなければいけないほど課題が多い現実が2015年に判明、ディーゼル人気は低下した。BMWやアウディなど多くの欧州メーカーもディーゼル投資を控えたことから、欧州市場のシェアは、わずか2年後の17年に約44%と10ポイントも低下。VWをはじめとする欧州メーカーがディーゼルから電気自動車(EV)に舵を切ったのは、周知の事実だ。

欧州でマツダ車の人気は高い

   2015年当時、VWのディーゼル不正は世界的に反響が大きく、米国のウォーターゲート事件になぞらえ「ディーゼルゲート事件」などと呼ばれた。このディーゼルゲートに最も影響を受けた日本の自動車メーカーはマツダだった。

    日本ではあまりイメージが湧かないかもしれないが、欧州でマツダ車の人気は高い。このためマツダは欧州向けにクリーンディーゼルの開発を進め、日本のどのメーカーよりも多くのディーゼル車を市場に投入した。

   技術力の高いマツダは、不正を働いたVWとは異なり、正規の試験で欧州や日本の環境規制に合格していた。

   ところが世界的なディーゼル車のイメージ悪化で、欧州メーカーはEVにシフト。ディーゼル車を積極的に開発・販売するのは、世界でもマツダくらいになってしまった。

   現在もマツダはディーゼル車のラインアップを揃えているが、MAZDA2の1.5リッターディーゼルは2024月9月に日本国内向けの生産を終了した。MAZDA3の1.8リッターディーゼルは現在も販売している。この他、マツダはCX-5など多くのSUVにディーゼルエンジンを搭載している。

   マツダ以外の日本メーカーでディーゼルエンジンを搭載しているのは、トヨタランドクルーザー、ハイラックス、日産キャラバン、三菱デリカD:5、トライトンなど少数派となっている。

ハイブリッドカーが作りにくい欠点

   ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べ、エンジン回転が低い状態で大きなトルクが出る。このため少しアクセルを踏んだだけで、クルマが力強く前に出る。交差点の信号待ちからの発進などは、ガソリン車よりも楽に感じる。

   坂道でも力強く、街中の加速もスムーズで、燃費もよい。ガソリンに比べて軽油は安く、普段の街乗りでクルマを使うなら、ディーゼル車はよいことづくめだ。

   ディーゼル車の欠点はエンジンが重く、ガラガラと振動や音がうるさいことだが、現在のクリーンディーゼルはかなり改良されている。ディーゼルエンジンは高回転まで一気には回らないため、高速道路の追い越しなどは多少不利かもしれない。

   エンジンの構造が複雑で重いことから、ガソリンエンジンのようにモーターと組み合わせたハイブリッドカーを作りにくいのも、ディーゼルエンジンのデメリットだ。モーターと組み合わせると、車両重量が重くなってしまうからだ。ガソリンエンジンに比べて高価な点も、ディーゼルベースのハイブリッドカーが少ない理由だ。

   そんなディーゼルエンジンは今後、どうなるのか。欧州メーカーにもディーゼル車は残っているが、紆余曲折を経ながらもEVシフトの流れは変わりそうもない。日本ではマツダが孤軍奮闘しているが、世界的にディーゼル車が復権することはないだろう。

(ジャーナリスト 岩城諒 )

記事提供元:タビリス