10倍堪能!海外旅行の超スキル③ トランジットは小さな空港で 小柳淳

ジョルダンニュース編集部

巨大ハブ空港では接続便もたくさん!

 国際線の航空路はハブ&スポークといって大きな拠点空港(ハブ)に長距離路線を集めて、そこから放射状に周辺各地に飛ぶ中短距離線(スポーク)に接続・乗換する方式が多い。自転車車輪の軸(ハブ)とタイヤをつなぐワイヤー(スポーク)の形からの命名だ。

乗換便は所要時間が長い、荷物紛失の恐れも


 利用者の立場からはそんな乗換(トランジット)があるより目的地へ直行できる方がよい。トランジットがあると、所要時間が長くなり、預けた荷物がどこかに行ってしまう、ロストバゲージが発生する(意外に多いのだ)確率も上がる。
 しかし、ハブ&スポークは多い。航空会社の立場からは就航空港が多いと、それぞれの空港に地上設備・要員を配置する必要があってコスト負担になる。毎日3便でも、週3便でも必要なのだ。そこで、拠点空港まで飛ばして、そこから先はコードシェアや共同事業の相手先航空会社の便に乗ってもらう方が費用面で有利になる。そういった場合でも目的地までは通し運賃になる。

巨大空港を移動するのは辛い


 ハブ空港はたいてい巨大空港だ。アメリカ西海岸のロスアンゼルス国際空港などターミナルが9つもある。そのうえ日や時間によって特定のターミナルが閉じられることもある。私の経験でも、到着したターミナルに入管職員が配置されていない時間だったらしく、バスで他ターミナルに移って入国審査を受け、今度はターミナル内連絡通路を延々と歩いて元のターミナルに戻ったことがあった。

パリ・シャルルドゴール空港 ターミナルとゲートが複雑多岐

 ヨーロッパでは、ロンドンやパリ乗換のケースが多いだろう。ロンドン・ヒースロー空港では大きなターミナルが4つ、パリ・シャルルドゴール空港は3つもあり、第2はA~Gに分かれ、2EはさらにK、L、Mに分かれた建物なので、実質11と思った方がいい。そのうえ、ヨーロッパにはシェンゲン協定というルールがあって、加盟国間は国内線と同じようにパスポートコントロールがない。そのため、日本からの便は非シェンゲン協定のターミナルに発着するので、パリから先の協定国へは必ずターミナルが変わる。

欧州各国へはヘルシンキ乗換がおすすめ


 ヨーロッパへ行くときのトランジットにお勧めはヘルシンキだ。フィンエアー(フィンランド航空)と日本航空が就航していて、特にフィンエアーは成田のほか関西、名古屋、札幌、羽田などからの路線がありその点でも便利。そしてヘルシンキのメリットは、空港がそれほど大きくないことだ。ターミナルは第1、2があるが実質的に一体の建物で、搭乗口(ゲート)は通し番号が振られている。乗換時間も短く、迷う可能性はかなり低い。そのうえ、多数のヨーロッパ域内路線が就航しているので、ハブ空港として充分な機能を持っている。特に北欧やイタリア、スイス以東へ行くならヘルシンキ乗換の価値は高い。

北欧らしい空気感のあるヘルシンキ空港

とにもかくにも乗換便搭乗口へ


 とはいえ、団体ツアーや格安パックなどでは航空会社や乗換空港を選べないこともある。巨大空港乗換になってしまった場合の対策第一は、乗継便搭乗口に向かうことを優先することだ。搭乗口の近くまで行ってしまえば何とかなる。複数あるターミナル間移動は意外に時間がかかるうえに、徒歩、動く歩道、バス、小型電車など多種多様だ。幸い空港内では図案表示のピクトグラムとABCなどの記号や番号が多用されていて、外国語ができなくても掲示をよく見れば場所は分かる。その際、Aとaのように大文字と小文字は違うことや、ターミナルごとに同じ搭乗口番号もあり得ることは記憶しておこう。

まずは乗換便の搭乗口を目指す

 また、急に搭乗口が変更になることもままあるので、移動中は出発便のティスプレイがあったら必ず見る。とにかく接続便の搭乗口に近づけば安心。ショッピングはその後の余り時間にする。空港によっては国際ブランドショップだけでなく、地元の名品の店もありウィンドウショッピングとしても楽しい。ヘルシンキ空港内にあるムーミンショップへの立寄りが私の楽しみにひとつだ。

※コロナ禍およびロシアのウクライナ侵攻により、出入国管理や航空路・航空便に変化が生じています。本稿はそれら要素を加味していませんのでご注意ください。
(写真:小柳淳)

小柳淳(こやなぎ・じゅん):1958年東京都生まれ。東京都立大学法学部卒。海外渡航122回、国内未踏3県。交通、旅行、ホテル業などを経て、旅行作家。VISIT JAPAN大使、日本旅行作家協会会員、日本香港協会理事。著書に『旅のことばを読む』、『香港ストリート物語』など。

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記事提供元:タビリス