【人インタビュー】「遊び心」が世界を変える:クッキー生地で夢を叶える コロリド竹内ひとみ(下) 起業は「影響力」のため。愛と笑いの子育て哲学
2025/9/9 0:00 ジョルダンニュース編集部

挫折と経験を重ねたキャリアパス
Q: ここからは、竹内さんのパーソナルな部分に迫らせてください。起業に至るまでのキャリアを詳しく教えていただけますか?
A: 私のキャリアは、いくつかの挫折と経験の積み重ねでできています。高校時代にアメリカへの留学を夢見ていましたが、阪神・淡路大震災の影響で断念せざるを得ませんでした。当時、短大に在籍していましたが、ボランティア活動に明け暮れるうち、新卒の就職活動時期を逃してしまいました。当時は雑誌で求人を探す時代でした。私は英会話とコンピューターを教えるスクールの営業として社会人生活をスタートさせました。
営業成績はトントン拍子で昇進していきましたが、同じことの繰り返しに疑問を感じていた頃、ITブームが到来しました。1998年に知人の誘いでIT系のベンチャー企業に転職しました。当時、IT業界は女性が非常に少なく、接待も多かったため、結婚を機に退職しました。 その後は10年間、子育てをしながら料理の勉強を続け、料理教室を開いたり雑誌にレシピを提供したりしていました。料理は家族のためにもなり、誰にとってもプラスになるので、子育てと両立しやすい仕事でした。
延べ6000人の起業家を育てたシェアハウス
Q: シリコンバレーへ渡ったきっかけは?
A: 2014年、IT関連メディアの会社をアメリカで立ち上げたいという夫の強い思いがあり、家族で渡米しました。夫婦とも40歳を過ぎ、子供4人を連れて、英語が全く話せない状態での挑戦でした。そこで、家賃収入とネットワークを同時に得るために、起業家やエンジニアに特化したシェアハウス事業を始めました。現地に到着後、ガレージセールを回りながら生活に必要なものを入手し、手作りでシェアハウスを作り上げ、世界中からゲストを迎え入れました。

このシェアハウスには、延べ60カ国、6000人以上もの人々が滞在しました。 短い滞在の人から、Y Combinatorなどのプログラムに参加するために数カ月滞在する人もいました。毎晩、私が全員分の夕食を作り、みんなで食卓を囲んでいました。言語や文化が違っても、食を通じて自然と会話が生まれ、家族のような関係性が築けました。食には人々を繋ぐ力があることを、この経験を通じて確信しました。実は、このシェアハウスに滞在していた元ゲストの中には、現在GoogleでGeminiの開発マネージャーを務める人物もいます。彼は日本のアニメが好きで、精神的に疲れてしまった時に、日本の文化に癒やしを求めて来日した時に再会しました。
子育てを「キャリア」にする仕組みを
Q: 今後、コロリドを通じてどのような世界を目指したいですか?
A: 私はコロリドを、レゴやイケアのようなグローバル企業に買収してもらう「エグジット」を最終的なゴールとしています。私のアイデアを世界に広げるには、これらの企業が持つ展開力が不可欠だと考えているからです。私は、「買収する価値がある」と思えるところまで、責任を持って会社を成長させたいと思っています。
その後の人生をどう生きたいかというと、「子育てをキャリアとして評価する仕組み」を作りたいです。私自身、子育てに専念していた10年間、世間から「キャリアブランク」と見なされ、履歴書に書けるものがなく、社会から切り離されたようなショックを受けました。しかし、子育てを通じて得られた力や視野の広がり、ネットワークは、何にも代えがたい成長でした。子育ての経験は、企業のチームビルディングや組織作りにも応用できます。例えば、命令口調ではなく「どうしたらできるか?」を問いかける「ペアレンティング」は、組織マネジメントにも通じるものがあります。子育ては単なる義務ではなく、個人を成長させる「チャンス」だと捉えられるような、ポジティブな社会にしたいと考えています。
そのための第一歩が、コロリドでの成功です。 社会的な結果を残し、発言力を持つことで、このメッセージをより多くの人に届けたいと思っています。
起業家女子にスナックのママを勧める理由
Q: ビジネス以外の活動は何かされていますか?
A: 趣味というか、週に2日ほど世田谷区深沢にあるスナックでアルバイトをしています。これもまた、私の貴重なネットワーキングの場になっています。
お店に来られるお客様は、企業の役員や経営者が多く、非常に濃い人脈を築くことができます。一般的な交流会とは違い、お互いがリラックスした状態で深い話ができるんです。また、安全な場所でオープンに交流できるため、女性起業家にもおすすめです。男性と二人で食事に行くのはハードルが高いという方も、スナックなら気軽に深い話ができます。

Q: ご長男も起業されたそうですね。
A: はい、彼は現在、AIを搭載したウェアラブルマスクを開発する「ベルヌテクノロジーズ」という会社を経営しています。彼は、SF作家ジュール・ベルヌの「人間が想像したものは実現する」という言葉を大切にしています。

ミネルバ大学を1年で中退して起業したのですが、ノイズキャンセリング技術については、高速道路の防音壁を開発した引退後の教授が、無償で技術協力を申し出てくれました。その他多くの方々にサポートいただきながら、開発と会社経営に奮闘しています。
私自身も、息子も、これまでの人生で点と点が線につながっていくような経験を何度もしてきました。「愛と笑い」を大切に、これからも面白いと思うことに挑戦し続けたいです。