20代女子「ゆるミニマリスト」に聞いた、私がモノを持たなくなった理由

SUUMOジャーナル

必要最低限のものだけで生活する「ミニマリスト」というライフスタイルが、数年前から注目を集めています。ところが最近、20代の間でかつてのストイックな印象とはちょっと違う「ゆるミニマリスト」が人気なのだとか。「ゆるミニマリスト」な暮らしを実践する、2人の女性に取材しました。

ミニマリスト界のニューカマー“ゆるミニマリスト”って?

時間が足りない、お金が足りない、家のスペースが足りない……など現代人には「足りない」ことにまつわる悩みが尽きません。だからこそ「足る」を知り、必要最低限の物だけで生活する「ミニマリスト」と呼ばれるライフスタイルが注目を集め続けているのです。ただし「ミニマリスト」というと、ストイックなイメージがあり「一般の人には真似ができない」と思いがち。かつて断捨離を実践したことがある人でも、ミニマリストになることはハードルが高いと感じた人も多いのでは?

一方で20代の若い世代には、かつてのストイックなミニマリストとは一線を画した“ゆるミニマリスト”が人気です。どんなライフスタイルなのでしょうか? ゆるミニマリストとして多くの人にライフスタイルを発信する、2人の女性に話を聞きました。

左・あすかさん(写真提供/あすかさん)、右・ゆねさん(写真提供/ゆねさん)

左・あすかさん(写真提供/あすかさん)、右・ゆねさん(写真提供/ゆねさん)

ゆるミニマリストのキーワードは、「お気に入りを、少しだけ」

Instagramで発信を続ける“ゆるミニマリスト”のあすかさんは、東京で一人暮らしをする20代の女性です。Instagramには、ホワイト系のインテリアの写真のほか、ファッションやビューティーのTipsが並び、一見するとファッション系のインスタグラマーのようです。しかし実は掃除機やテレビも持たず、洋服は本当にお気に入りの10着前後。食費は1週間3000円程度という、ミニマルな暮らしをしています。彼女のライフスタイルは多くの支持を集め、Instagramのフォロワーは約10万人に迫る勢いです。そんなあすかさんの考える、ゆるミニマリストの定義とは?

「『自分の生活から不要なものを取り除き、好きに囲まれて生活する』という意味では、目指すところは従来のミニマリストと変わらないと思います。ただ、ものの削ぎ落とし方が、少し緩やかかもしれませんね。わたしは、減らすこと自体に価値を置いているわけではないですし、正直に言って、減らしすぎると不便だと思います。だからベッドもあるし、机も椅子もある。電化製品もひと通りそろっています。その代わり、『本当に気に入っているかどうか?』という基準は、厳しく持っていますね」(あすかさん)

あすかさんの家を見ると、持ち物は少ないながら、それぞれのアイテムには個性があります。必要不可欠なものだけでなく、お気に入りの置き物などもレイアウトして、自分らしいインテリア選びをしています。

あすかさんの部屋の白い壁はプロジェクターを投影するスクリーン代りにも(写真提供/あすかさん)

あすかさんの部屋の白い壁はプロジェクターを投影するスクリーン代りにも(写真提供/あすかさん)

床置きのものが少ないミニマリストの部屋は、掃除用具はコロコロとワイパーで十分(写真提供/あすかさん)

床置きのものが少ないミニマリストの部屋は、掃除用具はコロコロとワイパーで十分(写真提供/あすかさん)

同じようにInstagramで発信をしている北海道在住のゆねさんがゆるミニマリストとして目指すのは、豊かな生活をすることだそう。

「必要最低限の暮らしをするために物を減らしているわけではないんです。私は豊かな暮らしをするために、好きなものだけを持つ主義なんです」(ゆねさん)

ゆねさんはアイドルのファンで、グッズもたくさん持っているそうです。

ゆねさんの部屋は、アンティークなペンダントランプやぬいぐるみがかわいらしい雰囲気(写真提供/ゆねさん)

ゆねさんの部屋は、アンティークなペンダントランプやぬいぐるみがかわいらしい雰囲気(写真提供/ゆねさん)

「好きなものを断捨離する必要はないと思っています。私の場合は、アイドルのコンサートに友達と行ったりする“推し活”がストレス発散になっているので、『これは削る必要のないもの』という考えです」(ゆねさん)

ゆるミニマリストにとって「気に入っている」や「好き」が、取捨選択の大きなポイントだと言えそうです。

ゆるミニマリストのインテリアはシンプルだけど個性的

スッキリと片付いたお家での時間を大切にする、ゆるミニマリスト。そのインテリアはどんなテイストなのでしょうか。お二人のお部屋を拝見しました。

ミニマリストの部屋というと、装飾を省きシンプルに徹した部屋がよくメディアには取り上げられていて、そのような印象を持っている人もいるかもしれません。一方でお二人のお部屋は少し装飾性のある家具や柔らかさや、かわいらしさといった、それぞれの人柄を表す小物の存在が目を惹きます。

あすかさんのお部屋は白で統一。大理石調の床はフローリングの上にDIYでシートを貼ったそうです。家具も白やクリアな素材で統一しています。大きなベッドはInstagramでも問い合わせが多いアイテム。ベッドはIKEAのデイベッドでソファにもなり、収納も兼ねているのだそう。白い壁はプロジェクターを投影するのにもぴったり。プロジェクターは、持ち運び可能で場所を取らず大画面で映像を観られる優れもの。ベッドサイドにある白で統一した小物がフェミニンです。

特大サイズのデイベッドはウッディなホワイト。デイベッドはベッドを主としつつ、ソファにもなるものを指すことが多い(写真提供/あすかさん)

特大サイズのデイベッドはウッディなホワイト。デイベッドはベッドを主としつつ、ソファにもなるものを指すことが多い(写真提供/あすかさん)

あすかさんのベッドサイド。小物は色やテイストを統一すると洗練された印象に。プロジェクターは壁の色にマッチするシルバーの「MoGo Pro」(写真提供/あすかさん)

あすかさんのベッドサイド。小物は色やテイストを統一すると洗練された印象に。プロジェクターは壁の色にマッチするシルバーの「MoGo Pro」(写真提供/あすかさん)

ゆねさんのお部屋は、明るい木目がポイントのナチュラルテイスト。ドライフラワーがそこかしこに飾られていてかわいらしい印象です。ブロックのテクスチャーがあしらわれた白の収納戸棚はDIYしたもの。そこに鏡を置けば、ドレッサーを兼ねることができます。そして戸棚のなかには“推しグッズ”スペースも。テイストの異なるアイテムを戸棚のなかに収納することで部屋がスッキリと見えます。

ゆねさんのインテリアのポイントはDIYでデコレーションしたチェスト。カラーボックスに100均の壁紙を貼って個性的に(写真提供/ゆねさん)

ゆねさんのインテリアのポイントはDIYでデコレーションしたチェスト。カラーボックスに100均の壁紙を貼って個性的に(写真提供/ゆねさん)

カラーボックの扉を開けると、推しグッズがぎっしり(写真提供/ゆねさん)

カラーボックの扉を開けると、推しグッズがぎっしり(写真提供/ゆねさん)

あすかさんのお住まいは約19畳(30平米)、ゆねさんの自室は5畳と、決して広いわけではありませんが、スッキリと片付いていながら、個性もあります。収納を兼ねたベッドなど多目的に使える家具を利用する、意外と場所をとるテレビをやめてプロジェクターを利用するなどの引き算と、個性を感じさせる家具や小物を取り入れる足し算のバランスが、ゆるミニマリストらしいインテリアのポイントのようです。

自信やお金……「足りない」を補うために「不要なもの」を捨てる

二人はなぜミニマリストになったのでしょうか? ミニマリストというライフスタイルを日本で広めたのは、2015年に出版された編集者・佐々木典士さんによる著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(※)です。そのなかに佐々木さんの考えるミニマリストの定義があります。

1.自分が本当に「必要」なモノがわかっている人
2.大事なものが何かわかっていて、それ以外を「減らす」人
(著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(ワニブックス)より)

定義は、あすかさんやゆねさんが実践していることと重なりますが、「必要なモノ」が何か、また「大事なもの」が何なのかに個性が表れます。

ゆるミニマリストは、現代に定着したミニマリストというライフスタイルの、「好き」や「お気に入り」にフォーカスしたひとつの形であるといえそうです。では20代のあすかさんやゆねさんがミニマリストになったきっかけは、何だったのでしょうか。

「お洒落になって自信を持ちたい」という気持ちが、あすかさんがミニマリストになるきっかけだった(写真提供/あすかさん)

「お洒落になって自信を持ちたい」という気持ちが、あすかさんがミニマリストになるきっかけだった(写真提供/あすかさん)

あすかさんの場合は、「大学の教授に貸していただいた『フランス人は10着しか服を持たない』※という書籍」がきっかけだったそうです。

「その本に影響を受けて、クローゼットの服を減らしたのです。

実は昔の私は浪費家で、学生にもかかわらずネットで毎月何万円も洋服を買うような生活でした。交友関係もわりと広く、誘われれば断れずに飲み会にも参加していました。一方でそういった生活に、どこか焦燥感を感じてもいたのです。

あの満たされない感覚を何と表現したらいいのか難しいのですが、ひと言でいうと自分に自信がなかったのかもしれません。服を買って、ヘアメイクにお金をかけて……ということをしても、どこか垢抜けず満たされない。本を読んで、たくさん服やコスメを持っていても、自分自身のマインドを変えなければ自信は生まれないと気づきました。」(あすかさん)

あすかさんはおしゃれになりたい、自信が欲しいという気持ちが、ミニマリストに興味を持つきっかけだったといいます。今やあすかさんが発信するInstagramでは『フランス人は10着しか服を持たない』を実践するような彼女のワードローブやライフスタイルの投稿が、多くの支持を集めています。それはおしゃれになるためにたくさんの服や化粧品は要らないということの証明でもあります。

スッキリとしたクローゼットにはお気に入りだけ(撮影/蜂谷智子)

スッキリとしたクローゼットにはお気に入りだけ(撮影/蜂谷智子)

また、ゆねさんがミニマリストになったのはお金の問題がきっかけだったと言います。

「私が大学生のころ、両親が離婚したのです。それまで家の大黒柱は父だったので、母と暮らすことにした私には、お金が足りなくなる心配があり、貯蓄に興味を持ったのです。それからミニマリストというライフスタイルにも興味を持ちました。

ミニマルな生活を実践してみると『物を買わなくても、今あるもので生活はできるんだな』という自信につながりましたね。当時の母は私に不自由な思いをさせたくないからか、一緒に街を歩くときに目に入ってくるものを『買ってあげようか』と聞くことが多かったのですが『そんなに物を買わなくても、あるもので十分じゃない』というのは、よく言っていました」(ゆねさん)

今はゆねさんも大学を卒業して金銭的に自立し、お母様との二人暮らしは大人同士の同居という雰囲気だそう。ミニマルな暮らしを身につけたことでお金の心配もクリアし、お気に入りに囲まれた充実した生活を送っています。

お母様と二人暮らししているゆねさん宅のリビング(写真提供/ゆねさん)

お母様と二人暮らししているゆねさん宅のリビング(写真提供/ゆねさん)

ゆねさんはオタク生活を楽しむためにも、他をミニマルにし節約を心がけているそう(写真提供/ゆねさん)

ゆねさんはオタク生活を楽しむためにも、他をミニマルにし節約を心がけているそう(写真提供/ゆねさん)

コロナ禍でも毎日が楽しい! ゆるミニマリストの生活

ゆるミニマリストとしてライフスタイルを確立した二人は、毎日が楽しく充実しているそうです。

「Instagramで発信するようになったのは、コロナ禍で在宅勤務になり、時間ができたからです。ミニマリストのライフスタイルを発信するようになってから、交友関係が一気に広がりましたね。私のライフスタイルに共感してくれる方が増えて、それが自分の自信になっている面もあります。

コロナウイルスの影響がなくなっても、オフィスに通う生活はもうしたくないですね。将来の夢は、このまま時間と場所を選ばない仕事を続けて、いつか猫と一緒に海の見える場所で暮らすことです」(あすかさん)

「Instagramを始めたことで交友関係も広がった部分もあります。自分の趣味が合う人や考え方が合う人とSNSを通じて効率よく出会えるので、ミニマリストにしてもオタ活にしても距離を超えた出会いがあります。

現代はSNSが自分の名刺だといわれるくらいなので、ライフスタイルを確立できたことが自信につながっています。ゆるミニマリストになってから整えた部屋は、オンライン会議で見えても恥ずかしくないですし、友達を呼ぶのにも積極的になれるんです。

ミニマリストになることによって好きなものがはっきりし、かつそれをInstagramに投稿することで、自分の雰囲気を客観的に見られるようになり、さらに自分らしいミニマルライフを追求できるという好循環もあります」(ゆねさん)

コロナ禍において在宅時間が増え、オンライン会議やSNSを通じて生活空間を見せる機会が増えた今、インテリアはパーソナリティを示す大切な要素。2人ともゆるミニマリストになってから整えてきた部屋が、社交的な面でも自信になっているといいます。

左・あすかさん(写真提供/あすかさん)、右・ゆねさん(写真提供/ゆねさん)

左・あすかさん(写真提供/あすかさん)、右・ゆねさん(写真提供/ゆねさん)

ミニマリストになり暮らしを研ぎ澄ますことで、新たな自分を見つけられる

コロナ禍でより日々の暮らしを意識するようになった人も多いでしょう。もしもライフスタイル迷子になってしまう自分を感じたら、一度生活をそぎ落としてみることも手です。

ストイックに自分を切り詰めず、「好き」を基準に生活を研ぎ澄ます、ゆるミニマリストの暮らしが参考になるかもしれません。
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※『ぼくたちに、もうモノは必要ない。 – 断捨離からミニマリストへ -』佐々木 典士 (著) ワニブックス
※『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質”を高める秘訣』ジェニファー・L・スコット (著), 神崎 朗子 (翻訳) 大和書房

●取材協力
あすかさん
ゆねさん

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記事提供元:タビリス