賃貸住宅の管理業者に初の立入検査、97社うち59社に是正指導。入居する時の注意点は?

SUUMOジャーナル

国土交通省は、2023年1月~2月に全国97社の賃貸住宅管理業者などに立入検査を実施した。「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の施行後、初めての立入検査となった。検査を実施した背景やその結果などについて見ていこう。

【今週の住活トピック】
賃貸管理業者などへの初の立入検査を実施/国土交通省

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」とは?

まず、この法律が制定された背景について説明しよう。

賃貸住宅はオーナー(大家)が管理する場合もあるが、近年は管理業者に委託するケースが大半だ。管理業者は、家賃や敷金などの受け取りや賃貸借契約の更新、退去時の立ち会い、敷金の返還などの一連の業務を行うほか、建物の点検や補修、清掃なども行っている。賃貸暮らしにおいては、きわめて重要な役割を担っているのだ。さらに、サブリースと呼ばれる、管理業者がオーナーから借りて、それを管理業者がエンドユーザーに又貸しする形式も増えている。

出典/国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」より転載

出典/国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」より転載

一方で、宅地建物取引業者やマンション管理業者の場合は法規制があり、国土交通省の監督下にあるが、賃貸住宅管理業者には法規制がなかった。そこで、オーナー・入居者と管理業者の間のトラブル防止を目的に、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が制定され、2021年6月に施行された。

その内容は、「賃貸住宅管理業者の登録制度の創設」(管理戸数200戸未満は任意)と、主に次のようなことを義務づけたもの。
・管理受託契約を締結する際に重要事項を説明する
・受託した業務の実施内容を定期的に報告する
・家賃などの財産を自身の財産と分別して管理する
・業務管理者を配置する

賃貸住宅管理業者などへの立入検査の結果は?

登録制度への賃貸住宅管理業者の登録数は、2023年3月末時点で8943社、管理戸数は合計で約790万戸となっている。今回、法律に則り適正に事業が営まれているかどうかについて、全国97社に対して立入検査を実施した。

国土交通省は検査を実施した結果、97社のうち59社に対して是正指導などを行った。かなりの割合だが、気になる指導内容を見てみよう。

指導の対象(重複あり)について、件数が多いものには次のようなものがあった。
・28件「管理受託契約締結時の書面交付義務違反」
→ 書面に記載すべき項目に不備があるなど
・18件「書類の備え置き及び閲覧義務違反」
→ 業務状況調書を作成しない、電子保存のみで書面化していないなど
・17件「管理受託契約締結前の重要事項説明義務違反」
→ 重要事項説明書に記載すべき項目に不備があるなど

国交省「【概要版】賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)」より転載

出典/国交省「【概要版】賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)」より転載

国土交通省では、一部の賃貸住宅管理業者などに法律の内容について理解不足が見られたが、指導した結果、59 社すべてで是正がなされたことを確認している、と公表した。

賃貸住宅に入居する場合の注意点

賃貸住宅に入居する場合は、賃貸住宅の管理は誰が行うのかを確認しよう。管理を管理業者が受託している場合は、管理業者が登録制度に登録しているかどうかも確認しておきたい。登録事業者かどうかは、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」の「賃貸住宅管理業者」タブで検索できる。

また、国土交通省では、「貸主が建物の所有者ではない場合」には、次の3点を確認するように入居者に注意を促している。

■「貸主が建物の所有者ではない場合」の注意点
(1)入居する部屋はサブリース住宅かどうか
(2)賃貸借契約書に、貸主が建物のオーナーに変わった場合に住み続けられる旨の記載があるか
(3)サブリース業者から維持保全の内容や連絡先の通知を受けているか
(出典:「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」のサブリース住宅の入居者への注意喚起リーフレットより)

サブリース住宅の場合、オーナー(所有者)はサブリース業者と賃貸借契約を結び、サブリース業者は入居者に又貸しして転貸借契約を結ぶ。この場合の転貸借契約には、オーナーが誰であるかも記載するように、国土交通省では指導している。また、オーナーとサブリース業者の間の賃貸借契約が終了した後も、入居者がそのまま住み続けられることが契約書に記載されていれば、万一のときも安心だ。

また、維持保全とは、賃貸住宅の建物や設備などの清掃や点検、補修などを行うことで、入居者の生活に支障がないように適切に管理されることが望まれる。サブリース住宅の場合はサブリース業者が行うので、具体的にどんなことをするのか、不具合があった場合などにどこに連絡すればいいかが通知されていることが必要だ。

スマホを耳に当て微笑む女性

(写真/PIXTA)

さて、いまの賃貸住宅は、その多くが管理業者によって管理されている。入居者にとっては、家賃の督促や故障・修繕の対応、他の入居者への苦情対応などについて、誰に相談してどう対処してくれるかは、日々の生活に大きく影響する。賃貸住宅に入居する際には、管理についてもしっかりと確認してほしい。

●関連サイト
国土交通省「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者59社に是正指導~全国一斉立入検査結果(令和4年度)~」
国土交通省の賃貸管理業者検索サイト
●参考サイト
国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイト
「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」のサブリース住宅の入居者への注意喚起リーフレット

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記事提供元:タビリス