世界の名建築を訪ねて。NY9.11跡地「フリーダム・タワー」構想などの建築家ダニエル・リベスキンドによる超高層集合住宅「Zlota44(ズロタ44)」/ポーランド・ワルシャワ

SUUMOジャーナル

世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載9回目。今回は、ポーランドの首都ワルシャワにある52階建ての超高層集合住宅タワー「Zlota44(ズロタ44)」(設計:ダニエル・リベスキンド(Daniel Libeskind))を紹介する。

ワルシャワの街に立つ弓形の超高層タワー

ニューヨークのグラウンド・ゼロのマスタープラン・コンペに優勝した建築家ダニエル・リベスキンドは、世界的に知られている現代世界建築の巨匠である。その彼が、祖国ポーランドの首都ワルシャワに、アイコニックな形態で屹立(きつりつ)する超高層タワー「ズロタ44」を設計して評判となっている。

 
建物はワルシャワ中心部にある歴史的建物である「スターリン文化パレス」の正面に立ち、52階建て高さ192mの超高層の偉容を見せている。長くカーブした形態は、鷲の翼からインスパイアーされ、ワルシャワのスカイラインに君臨している。建物は延床面積約30,000平米で、1ベッドルームから3ベッドルームのアパートメント287戸とペントハウスを含み、ビジネス&レジャーのコンシェルジュ・サービスやパーキング施設も完備しているデラックスな集合住宅タワーである。

写真右側が「スターリン文化パレス」、左から2番目の建物が「ズロタ44」(C)Kruba Jurskowski

写真右側が「スターリン文化パレス」、左から2番目の建物が「ズロタ44」(C)Kruba Jurskowski

建物のシンボリックな形態は、太陽の軌跡に従って全階の住戸に最大量の自然光を導入しようというコンセプトをベースにデザインされたものである。さらに高密度化された歴史的なアーバン・スケープのなかで、ストリートに落ちる建物の影を、最小にするよう細かく配慮されたデザインなのである。大きく湾曲したアーチ状のファサードは、頂上からこの都市のワイドなパノラミック・ビューを満喫できるペントハウスを擁している。ガラスとアルミニウムのカーテンウォールはセルフ・クリーニング・パネル(自己洗浄パネル)が採用されており、外壁を常にクリーンに保つ優れものである。またフルハイト(床から天井までの高さがあること)の大きな3重ガラス窓はイレギュラーなパターンで配置されているため、光と影の戯れを外壁上に引き起こしている。

「私にとって『ズロタ44』は非常に個人的なプロジェクトであります。私は若き日、共産主義の圧迫から逃れてポーランドを去りましたが、自分は故国の精神や文化を決して忘れることはありませんでした。今日故国に戻ってきましたが、このシンボリックな建物の竣工にあたり、感無量です」と、リベスキンドは語っている。

リベスキンドがデザインしたロビーは、温和な木材料、ガラス器具、幾何学的なセラミック・タイルのフロアリング等で構成され、外壁を覆うフルハイトの開口部からの自然光で非常に明るい。カスタム・メイドの受付デスクや壁面パネルはウォルナット合板が使用されている。高さ6mの天井からは繊細なガラス・シャンデリアが宙に浮いている。リベスキンドの手によるモローゾ(著名なイタリアのファニチャー・ブランド)の家具は、豪華なエントランス・ホールに、彫刻的かつウエルカム・ムードのアトモスフィアを放っている。

((C) Hufton+Crow)

((C) Hufton+Crow)

広さは60平米から300平米まで。多種にわたる住戸タイプを展開

リベスキンドのデザインが生み出したユニークな住戸は、多種にわたるフロア・プランとサイズが展開されている。標準的なアパートメントの広さは、小は60平米から大は300平米にわたり、ペントハウスやフルフロア・アパートメントは930平米もある豪華さとなっている。全てのアパートメントにはフルハイトの開口部付きの広いリビングがあり、明るい風通しの良い環境となっている。

キッチンやダイニング・ルームはオープン・プランでカスタム仕様となり、インテグレートされた器具類やブレックファースト・バーなども設えているリッチな仕様である。仕上げデザインも多様なオプションが用意されている。RC打ち放しの天井やコラム類(鉄骨柱に使用する筒型の鋼材)、シーザーストーン(汚れ・傷・ひび割れ・水に強いという特徴がある)のキッチントップ、ステンドオーク(硬いオーク材)またはアメリカン・ウォールナットのフロアリングなどがある。またガゲナウ(ドイツの高級ビルトイン・キッチン・メーカー)のキッチン設備や、スマホやタブレットでコントロール可能な最新のホーム・マネージメント・システムを装備している。

(C)Kruba Jurskowski

(C)Kruba Jurskowski

スポーツ&レクリエーション施設、ワインのテイスティング・ルームなども完備

約1,800平米のアメニティ・フロアにはワールド・クラスのスポーツ&レクリエーション施設やスパがあり、また25mの水泳プールを設えている。1階には住民用に10,000本のワイン・ボトルを収容できるワイン・ストーレッジがあり、テイスティング・ルームも装備している。タワー下部には9階分もあるパーキング・スペース があり、ストリートレベルからのアクセスが可能である。さらに大型のラグジュアリー・カーを収容するスペースも充分取られている。フルタイムのスタッフによるコンシェルジュ・サービスも万全で、住民のアメニティ向上に寄与している。 

(C)Kruba Jurskowski

(C)Kruba Jurskowski

●関連サイト
Zlota44

【住まいに関する関連記事】

世界の名建築を訪ねて。ザハ・ハディドによる62階建て超高層集合住宅タワー「ワン・サウザンド・ミュージアム(One Thousand Museum)」/アメリカ・マイアミ
世界の名建築を訪ねて。名建築家ビヤルケ・インゲルスが設計した低所得者用集合住宅「Dortheavej Housing(ドルテアベジ・ハウジング)/デンマーク・コペンハーゲン
世界の名建築を訪ねて。ウーブン・シティなど手掛けるビヤルケ・インゲルス設計の集合住宅「ザ・スマイル」/NY
世界の名建築を訪ねて。ザハ・ハディドによる“熔融した建築”「オウパスMEドバイ・ホテル(ME Dubai Hotel at the Opus)」/ドバイ
世界の名建築を訪ねて。マリーナ湾に浮かぶガラスの球体“アップルストア” 「アップル・マリーナ・ベイ・サンズ(Apple Marina Bay Sands)」/シンガポール
住まいに関するコラムをもっと読む
記事提供元:タビリス