勤務先への出社頻度は増加しても、郊外・地方への移住ニーズは減少しない?

SUUMOジャーナル

野村総合研究所(以下NRI)は、2023年7月、東京都内の従業員300人以上の企業に勤務する20代~60代の男女3090人を対象に、働き方と郊外・地方移住に関するインターネット調査を実施した。2022年の調査に続き2回目。新型コロナウイルス感染症が2023年5月に5類に移行してからの調査になるので、前回より勤務先への出社頻度は増加しているが、移住ニーズはどう変化したのだろう。

【今週の住活トピック】
「働き方と移住」のテーマで2回目の調査を実施/野村総合研究所

勤務先に「毎日出社」する割合が53.1%まで回帰

まず、2023年7月時点の出社頻度を尋ねたところ、「毎日出社」が53.1%を占めた。前回調査時の2022年2月は、まだ東京都でまん延防止等重点措置の期間中だったため、「毎日出社」が38.3%だったのに対してかなり増えたことになる。出社回帰の傾向は強まっているものの、コロナ前ほどには戻っていないようだ。

■各時点での出社頻度(コロナ前・今回調査時:N(回答数)=3,090、前回調査時:N=3,207)

各時点での出社頻度

注)コロナ前の出社頻度は、今回の調査対象者に2020年1月以前の出社頻度を聴取した。
前回、今回調査時の出社頻度は、各回の調査対象者に調査時点の出社頻度を聴取した。
出所:NRI「働き方と生活に関するアンケート」(2023年7月)

出社頻度が増加した理由はなんだろう? 出社頻度が増加した人にその理由を聞いたところ、「勤務先の方針やルールが変わり、出社を求められるから」(39.0%)など企業側の要請という理由もあったが、「出社したほうがコミュニケーションを円滑に取れるため、自主的に出社を増やしたから」(28.2%)や「出社したほうが業務に集中できるため、自主的に出社を増やしたから」(23.7%)など、自らの意志によるものもあった。

出社頻度が増加しても、郊外・地方への移住意向は下がらない

次に、郊外・地方※への移住意向を聞いたところ、直近1年間に移住意向がある人は全体の15.3%、5年以内に意向がある人は全体の28.4%と、それぞれ前回調査から微増した。出社頻度が増加したとはいえ、郊外や地方への移住ニーズは下がっていないことが分かった。
※都心から公共交通機関で1時間程度の場所を「郊外」、2時間以上の場所を「地方」として調査

■郊外・地方への移住意向がある人の割合(前回調査N=3,207、今回調査N=3,090)

郊外・地方への移住意向がある人の割合

出所:NRI「働き方と生活に関するアンケート」(2023年7月)

NRIは、この理由として、「「都心よりも住宅費が抑えられる郊外・地方への関心が高まっている」、「テレワークの浸透によって、より広い居住面積を有する郊外の住宅ニーズが高まっている」などが推察される」としている。また、移住意向を年代別や現在の居住形態別に分析した結果、「郊外・地方への移住意向がある層は、現在は賃貸住宅に居住している若年層(25~34歳)で、かつ将来的には持家に居住したいと考えている層だと考えられる」と指摘している。

「理想の出社頻度」を聞いたうえで、出社頻度を現在の出社頻度よりも減らしたいと考えている人を分析したところ、「郊外・地方移住意向なしの人よりも、郊外・地方移住意向ありの人の方が多い結果となった」という。最も差が開いたのは、「週3日出社」の場合。「週3日出社」している人で理想の出社頻度を減らしたい回答だったのは、「郊外・地方移住意向なし」では49.3%なのに対して、「郊外・地方移住意向あり」では63.9%で、週3日以上の出社が移住のハードルとなっているようだ。

また、「転職の意向」と重ねて分析すると、「郊外・地方移住意向あり」のうち、「今後1年の間に転職を考えている」人は47.6%で、「郊外・地方移住意向なし」の23.9%に比べてかなり高い結果となった。さらに、転職の検討理由について分析すると、「郊外・地方移住意向あり」のうち、「テレワークの制限によって理想の働き方が実現できないこと」が理由だと回答した人は23.6%で、「郊外・地方移住意向なし」の14.8%に比べて高い結果になっていた。これらのことから、NRIは、「郊外・地方移住意向ありの人の中には、出社頻度を転職の判断軸のひとつとする人が一定数いると推察される」と分析している。

郊外・地方移住をする場合の注意点とは?

では、郊外・地方に移住する際に注意すべきことはなんだろう?

現役世代が勤務しながら「郊外・地方移住」をする場合、都心部から遠くても2~3時間程度までだろう。となると、都心部と気候が全く異なるとか、自然に囲まれた田舎暮らしになるとか、そこまでの注意点は不要だろう。

そうはいっても、都心部の暮らしとは違う点も多々あるはずだ。その場所に住むことのメリットとデメリットをしっかりと把握しておきたい。

たとえば、
・広い家を手に入れやすい
・都心から離れた分だけ自然が豊かになる
・生活するための物価が安い
などのメリットがあるかもしれないし、

・近隣との関係が都心部とは異なる
・車移動が増える。そのため、ガソリン代も増える
・都心より、商業施設や娯楽施設が少ない
などのデメリットがあるかもしれない。

なぜそこに移住したいかの「理由」を明確にしておくことも大切だ。メリットの優先度が高くなったりデメリットを許容できるようになったりと、検討したメリットとデメリットの優劣も変わってくる。家族で移住するなら、よく話し合って互いに共有できるようにしておきたい。

NRIでは、「賃貸住宅に居住している若年層(25~34歳)で、かつ将来的には持家に居住したい層で、郊外・地方移住意向が高いことから「家族が増える・住宅を購入するといったタイミングでの転居において、その安さや広さから郊外・地方への関心がより高まっている」と考えられる」と見ている。利便性一辺倒ではない住まいの選び方が、今後は広がっていくのかもしれない。

●関連サイト
「野村総合研究所、都内の会社員を対象に「働き方と移住」のテーマで2回目の調査」

【住まいに関する関連記事】

育休中の夫婦、0歳双子と北海道プチ移住! 手厚い子育て施策、自動運転バスなどデジタル活用も最先端。上士幌町の実力とは?
テレワークの個室整備、オンライン内見など…コロナ禍から更に変化した住宅市場動向とは
更地だらけの温泉街が再生! 移住者や二拠点生活者が集まる理由とは【旅と関係人口1/長門湯本温泉(山口県長門市)】
おしゃれ別荘に月額5.5万円で家族や友人と泊まり放題! サブスク「SANU 2nd Home」八ヶ岳、山中湖など
多様化するトレーラーハウス。災害支援、公共施設、宿泊、店舗など様々な可能性に注目
住まいに関するコラムをもっと読む
記事提供元:タビリス