残価設定型の住宅ローンってどんなもの?メリットや注意点などをわかりやすく解説

SUUMOジャーナル

パナソニックホームズが、一般社団法人移住・住みかえ支援機構が開発した長期優良住宅対象の残価設定型住宅ローンについて、楽天銀行との提携を経て、返済期間が最長40年の「楽天銀行オプション付加型残価設定住宅ローン」の取り扱いを開始すると公表した。残価設定の住宅ローンとは、一体どんなものなのだろう?

【今週の住活トピック】
楽天銀行と返済期間最長40年の残価設定型提携住宅ローン取り扱いを開始/パナソニック ホームズ

住宅ローンにおける残価設定のローンとは?

住宅ローンでは耳慣れないローンだが、カーローンではよく耳にする「残価設定型ローン」。車の購入の際に、あらかじめ将来の下取り価格を設定して、車両価格から下取り価格(残価)を差し引いた金額に対してローンを組む方法のことだ。

では、住宅版ではどうなるのか?
パナソニックホームズの残価設定型住宅ローンは、移住・住みかえ支援機構(以下「JTI」)が提供する「残価設定型住宅ローン」を利用するもので、通常の住宅ローンに、「返済額軽減オプション」と「買取オプション」という二つのオプションを付ける形になる。

大雑把に言うと、通常のローン返済をする途中で、あらかじめ決められたオプションが行使できる時点で、返済額は大幅に減るが終身でローン返済を続けるか、住宅ローンの残高と同額で買い取ってもらうかを選べる、といったものだ。残価設定時期などはJTIが決める。

したがって、JTIが大きな役割を果たすことになるので、JTIが残価設定型住宅ローンの仕組みを提供する背景について見ていこう。

JTIが残価設定型住宅ローンを提供する背景は?

JTIは国土交通省の支援を受けて設立した、持ち家を長く活用してもらうことを目的とした一般社団法人。シニア層が使わなくなった住宅を子育て世代に向けて転貸する「マイホーム借上げ制度」などを提供している。

2021年に住生活基本計画の見直しが行われた際に、「ライフスタイルに合わせた柔軟な住替えを可能とする既存住宅流通の活性化」のため、残価設定ローンを含む多様な金融商品を活用することが盛り込まれた。これを契機に、JTIが、維持管理体制の充実した事業者が施工する認定長期優良住宅について、将来の残価を保証する仕組みを開発した。これが、残価設定型住宅ローンだ。

したがって、残価設定型住宅ローン対象となるのは、国の認定を受けた「長期優良住宅」で、施行する事業者も指定されたハウスメーカーに限られるので、対象は一戸建てになる。また、取り扱いができる金融機関も、現時点で指定されているのは、日本住宅ローン、三菱UFJ銀行、楽天銀行だ。

※長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅。長期に使用するための構造及び設備を有していること、維持保全の期間や方法を定めていることなどが求められる。

残価設定型住宅ローンの仕組みをもっと詳しく

残価設定型住宅ローンについて、下の概念図でもう少し詳しく見ていこう。

例えばJTIが残価設定月を20年後に設定した場合、通常の住宅ローンの返済をしていくが、30歳で借りて50歳で残価設定月に達したら、リバースモーゲージ(死亡時に担保不動産を処分して残債を返済する住宅ローン)の仕組みを使った「返済額軽減オプション」を選ぶ(左側)か、その時点のローン残高の額で買い取ってもらう「買取オプション」を選ぶ。また、「返済額軽減オプション」を選んだ場合でも、途中で「買取オプション」を行使することもできる(右側)。

出典:パナソニック ホームズのリリースより

出典:パナソニック ホームズのリリースより

まず、「返済額軽減オプション」について見ていこう。「1」では通常の住宅ローンの返済となるが、残価設定月以降にオプションを行使すると、元金の返済額をJTIの保証する残価に合わせることで返済額を大幅に軽減する「新型リバースモーゲージ」に切り替わる。借り入れから50年経つと元金の返済がなくなり、51年目以降は利息のみの返済となる。そのため、「2」、「3」と段階的に返済額が減る形になる。

次に、「買取オプション」について。残価設定月に行使した場合は、その時点の住宅ローン残高と同額で、また返済額軽減オプション選択後に行使した場合は、新型リバースモーゲージの残高と同額で、JTIが買い取る形となる。

残価設定型住宅ローンのメリットやデメリットは?

残価設定型住宅ローンのメリットは、長期間返済する中でいくつかのリスクを回避できることにある。例えば定年後に想定したよりも収入が減ってしまった場合でも、「返済額軽減オプション」によって、返済額を抑えることができる。

また、一定期間住んでから売却しようとしたとき、住宅市況が悪化して売却額では住宅ローンの残債を返せないといったときでも、残債と同額で売却できるので、ローンから解放される。住宅市況が良好で高く売れるときは、自身で売却した額で住宅ローンを完済すればよい。

このように、住宅ローンによって自由な住替えを妨げられることがなくなるのだが、注意点もある。

「返済額軽減オプション」を行使した場合、当初の住宅ローンに付帯した団体信用生命保険は終了し、以降は団体信用生命保険に加入できない。また、終身で返済することになり、当初の住宅ローンよりも利息を多く払う場合もある。

なお、認定長期優良住宅は、長期使用ができるように認定計画に沿ったメンテナンスを継続的に行うことが求められる。そのため、一般的な住宅よりも点検や補修費用などがかかってしまうことも、理解しておきたい。

社会的に見ると、残価設定型住宅ローンを利用した住宅は、いずれのオプションでも、最終的にはJTIに帰属するので、良質な住宅が空き家になることはない。こうしたメリットもある残価設定型住宅ローンだが、利用できる住宅(事業者)や金融機関が限られるので、どの住宅でも利用できるわけではない。とはいえ、ローンを利用する側にとって、多様な選択肢の一つになるので、こうした住宅ローンがあることを知っておいてほしい。

●関連サイト
パナソニック ホームズ「楽天銀行と返済期間最長40年の残価設定型提携住宅ローン取り扱いを開始」
移住・住みかえ支援機構「残価設定型住宅ローン利用者フォーラム」

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記事提供元:タビリス